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2010年2月 3日

第3回日本・黒海地域対話にて

以前に述べたように、私は国際文化会館で開催された第3回日本・黒海地域対話に参加した。このイベントはグローバル・フォーラム・ジャパンが日本外務省、駐日トルコ大使館、駐日ブルガリア大使館、静岡県立大学広域ヨーロッパ研究センターの後援で開催したものである。

イベントの開催に当たってグローバル・フォーラム・ジャパンの伊藤憲一執行世話人が日本と黒海諸国の共通問題として世界金融危機と欧米対ロシアの抗争に言及した。黒海経済協力機構(BSEC)レオニダス・クリサンソポロス事務総長と日本外務省の谷崎泰明欧州局長が世界の安全保障と経済での黒海地域の重要性を総括した。黒海地域はヨーロッパ、中央アジア、中東が交差する十字路に位置している。ここはスキタイ、トラキア、アナトリア、そしてギリシア植民地という古代文明の揺籃の地である。

この地域での日本の役割に関しては経済開発協力が議論の中心になりがちである。トルコ外務省のミシャト・レンデ経済局長は1月3日から4日にかけて日本の岡田克也外相がトルコを訪問して「2010年トルコにおける日本年」への祝辞を述べたことは日土関係の発展に大いに寄与すると語った。

黒海地域はロシアと欧米の抗争の最前線であるとともにエネルギー資源の通り道でもあるので、この地域での日本外交を述べるには多国間のやりとりを見過ごすわけにはゆかない。BSEC諸国は石油と天然ガスの埋蔵量で中東に次いでいる。特にロシアとアゼルバイジャンの産出量が多い。石油と天然ガスの貿易と地政学的な競合では中国がアフリカの場合と同様に重要な影響力を及ぼすと思われているが。しかしエネルギー紛争と地政学的な駆け引きに中国がどのように関わるかはよくわかってはいない。

非常に興味深いことにEUとASEANの地域統合の比較が議論され、BSECの統合のあり方が模索された。EUは共通の政治理念に基づく統合を目指すのに対し、ASEANは域内の経済協力に重点を置いている。BSECの場合は旧ソ連諸国でのロシアと欧米の綱引きが事態を複雑にしている。

安全保障ではヨーロッパと日本は民主的なアメリカの同盟国として多くの課題を共有している。普天間基地をめぐる沖縄住民とアメリカ軍の間の対立に見られるような米軍基地問題もそうした問題の一つである。ルーマニアとブルガリアがNATOに加盟したために、アメリカはロシアの目と鼻の先に軍事施設を持つことになった。しかし現在は欧州議会で外交副委員長の職にあるユアン・パシュク元ルーマニア国防相は、それらの施設はルーマニアやブルガリアと共同使用され、米軍が独占的に使用しているわけではないと指摘した。よって日本の普天間とは事態が完全に異なると述べた。

この地域への多国間のアプローチを考えると、日本外務省の海部篤欧州局中・東欧課長の発言は印象的であった。海部氏は橋本龍太郎首相(当時)の「新シルクロード演説」麻生太郎外相(当時)の「自由と繁栄の弧演説」は日本が世界の安全保障と生活支援に積極的に関与するうえで画期的なものだと述べた。後者はジョージ・W・ブッシュ氏の外交政策と共鳴するもののように思われる。スウェーデンの中央アジア及びカフカス研究所とアゼルバイジャンのカフカス戦略研究所が共同で発行する専門誌では駐日アゼルバイジャン大使館のグルセル・イスマイルザダ参事官が麻生演説について綿密な分析を行なっている(“A New Pillar of Japanese Foreign Policy: The Arc of Freedom and Prosperity—Japanese Policy toward the GUAM Organization”; CENTRAL ASIA AND THE CAUCASUS Journal of Social and Political Studies; No. 3-4 (51-52), 2008)。

私は麻生氏の演説を鳩山由紀夫現首相が掲げる物騒な東アジア構想よりもはるかに高く評価しているのは、日本はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと共に欧米先進自由諸国同盟の中心であるべきだと固く信じているからである。日本は最先進民主主義国から成る世界の平和と繁栄の礎の一員たるべきである。この「最善の政治と知力を持った国々」のクラブを通じて、日本は国際舞台での政治的存在を強められるのである。

海部氏は近隣諸国を超えた日本の積極外交を主張したのだが、さらに強い国際関与を打ち出せなかったのかとも思わずにいられなかった。一般に日本と黒海地域は互いに遠い存在で、新しい関係が現在になって築かれている最中だと思われている。しかしそうした見方には私は強く異を唱える。私の目には政策形成者達が日本には「スカンジナビア型」の経済開発援助での役割を果たすべきという考えに囚われているように見える。私は日本も対テロ戦争やレジーム・チェンジといった「英米型」の自由帝国主義的な役割を追求すべきだと主張する。

私は日本には黒海・中東・カスピ海地域で歴史的な役割があると固く信じている。中でもケマル・アタチュルクのトルコとレザ・シャー1世のイランは日本の明治維新での近代化を規範としてきた。日本はトルコの脱イスラム化とEU加盟を支援できるのである。これは対テロ戦争でイスラム過激派を打倒するうえで多大な貢献となるであろう。さらに最先進民主義国の一員として、東ヨーロッパと旧ソ連諸国の統治状況の改革に積極関与して自由諸国の同盟の東方拡大を支援できる。

日本・黒海地域対話は日本外交と同地域での大国間の政治的攻防を理解するうえで非常に素晴らしい機会となった。グローバル・フォーラム・ジャパンには心底からの感謝の意を述べたい。パネリストの諸先生方から数多くの価値ある見解や洞察を当記事で全て記すことができないのは残念である。

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