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2010年2月13日

NATOは挑戦国と新興国とどのように向き合うべきか?

アナス・フォー・ラスムッセンNATO事務総長は2月7日のミュンヘン安全保障会議(ドイツ語はこちら)でロシア、中国、インドそしてアフガニスタン近隣諸国との戦略提携関係を発展させるべきだと述べた。ラスムッセン事務総長はアフガニスタンのテロリストの打倒には多国間の強調が必要だと強調した。しかしロシア議会下院のコンスタンティン・コサチェフ外交委員長は、欧米に対する疑念を訴えた(“Nato calls for more global partners”; Financial Times; February 8, 2010)。

ミュンヘン会議は世界の主要国の指導者達が国際安全保障に関して話し合う非公式の会合に過ぎないが、NATO事務総長が国家対立の枠組を超えて戦略提携を訴えたことは注目に値する。デンマークの首相であった時期のラスムッセン氏はジョージ・W・ブッシュ大統領とドナルド・ラムズフェルド国防長官と親しい関係にあった。ラスムッセン氏は有力なイラク戦争支持者の一人であった。それほどの保守派が政治体制や価値観の違いを乗り越えて、ロシアと中国に安全保障のうえで共通の取り組みを訴えているのである。

アフガニスタン以外にもラスムッセン氏は「NATOをこれまでの加盟国以外も参加できるグローバルな議論の場とし、テロ、サイバー攻撃、核拡散、海賊、気候変動、天然資源争奪戦までも含めた安全保障問題を取り上げるべきである」と述べている。しかしクレムリンは2008年のグルジア紛争を契機に西側への疑念を強めている(“NATO should be global security forum: Rasmussen”; Washington Post; February 7, 2010)。

バラク・オバマ大統領は昨年7月のモスクワ訪問の際にロシアに対して融和的な態度を示したが、ロシア側のドミトリー・ドベージェフ大統領は新軍事ドクトリンを承認し、NATOの拡大を脅威と見なして核兵器の一方的な利用の権利を肯定した(“Russia names NATO expansion as national threat”; Reuters; February 5, 2010)。クレムリンの指導者達はウクライナとグルジアを自分達の勢力範囲と見ているが、ラスムッセンNATO事務総長はそうした国家間の敵対関係はないとしている(“Russian doctrine does not reflect real world: NATO”; Reuters; February 6, 2010)。ロシアと欧米の立場の違いを埋めるのは難しい。ついったーではラスムッセン氏がNATOはロシアの敵ではないと言っているが(“AndersFoghR”; Twitter; February 6, 2010)、ロシアのドミトリー・ロゴジン駐NATO大使は「アメリカとその同盟国はロシア熊の巣を包囲する気だろうか?」“Rogozin”; Twitter; February 10, 2010)と問いただしている。

イランの核の脅威に対抗してルーマニアに配備されるアメリカの迎撃ミサイルをめぐる対立は、ロシアと欧米の関係に大きな影を投げかけている(“Russia condemns US move to put missiles in Romania”; Daily Telegraph; 7 February, 2010)。オバマ政権がポーランドとチェコへのミサイル配備計画を取りやめた際に、アメリカはイランのミサイル迎撃にはより近い南に代替地を求めていた。クレムリンは全世界の核不拡散よりも地政学上のゼロ・サム・ゲームの方に目が向いている。

急速にグローバル化が進む世界では、安全保障の概念も変わるであろうし、国家の枠組を超えた取り組みが必要となる。しかし西側民主主義とロシア・中国の権威主義の溝は深まる一方で、これこそロバート・ケーガン氏が“The Return of History”で国家間の対立の激化を述べる理由である。

アフガニスタンでの作戦に見られるように、NATOはグローバル化しており新しいパートナーを必要としている。NATOがインドとパキスタンをはじめとするアフガニスタン近隣諸国との戦略提携を模索することは正しい。当ブログの以前の記事で述べたように、NATOは日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国といったアジア太平洋の民主主義諸国との関係を発展させている。これらの国々とNATOが協力してテロ、サイバー攻撃、核拡散、海賊、気候変動、天然資源争奪戦までも含めた国家の枠組を超える脅威でヨーロッパ大西洋地域の異議外でも対処できることには疑いの余地はない。

問題は、NATOが過激ナショナリズムの勢いづくロシアと中国との間で信頼の置ける関係を築けるのだろうか?主権国家の対立競合は本当に終焉したのだろうか?ラスムッセンNATO事務総長が提唱し、マデレーン・オルブライト元国務長官とカナダのピーター・マケイ国防相が支持するこの案は、あまりにもカント的に思える。ミュンヘン会議は世界政治の現実が力の論理の支配するホッブス的なものであることを見せつけている。

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さらに理解を深めるための参照リンク:

NATO’s New Strategic Concept

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