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2010年2月26日

オバマ=カーター?:FP誌カバー記事のレビュー

フォーリン・ポリシー誌1月/2月号のカバー記事は外交問題評議会でヘンリー・キッシンジャー記念フェローのウォルター・ラッセル・ミード氏が寄稿した第44代バラク・オバマ大統領と第39代ジミー・カーター大統領の相似点についての論文である(“The Carter Syndrome”; Foreign Policy; January/February. 2010)。保守派の市民団体は就任以来のオバマ氏をカーターⅡと揶揄し続けている。しかし今回はフォーリン・ポリシーのように権威のある専門誌までがオバマ氏とカーター氏の類似性を語りだした。以下の画像を参照して欲しい。

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1月のオバマ大統領就任1周年を機に、アメリカのメディアとシンクタンクは政権の実績について賛否を交えた議論をしている。当ブログで1月の掲載した記事で述べたように、国内の保守派からオバマ氏に対する批判の動きが出始めた。グラスルーツの保守派はティー・パーティー運動を展開し、国家管理の健康保険制度に反対の声を挙げている。国家安全保障に関してはディック・チェイニー前副大統領がジョセフ・バイデン現副大統領との討論で、オバマ氏の対テロ措置が弱すぎると批判した(“Cheney criticizes Obama on national security policy, and Biden fires back”; Washington Post; February 15, 2010)。

国内支持率の急落にもかかわらず、国外でのオバマ大統領の人気は非常に高い。かなり多くの国際市民達は、オバマ氏がただアメリカ史上初の黒人大統領だというだけで感極まって礼賛している(おやおや、大統領をアファーマティブ・アクションで選ぼうとでも?)。しかし、プリンストン大学のクリスティナ・レンフォという学生は大統領は自分の人気の維持を究極の目的とすることはやめて、果断な決断を下すべきである。それで国際社会の中に失望する者が出るとしても」と述べている(“A Paradoxical Burden: Obama’s Popularity Abroad”; American Foreign Policy: Princeton Student Editorial on Global Politics; February 15, 2010)。

ミード氏はフォーリン・ポリシーへの寄稿でアメリカ歴代大統領の外交を四つのパターンに分類している(党派は単に一般的な傾向である。)。

ハミルトン型:共和党穏健派

強い政府と強い軍;財界の権益を後押し;リアリスト

ウィルソン型:中道派

強い政府と強い軍;民主主義と人権の普及

ジェファソン型:民主党左派

孤立主義;小さな軍事力

ジャクソン型:共和党右派

グラスルーツ保守派;ハミルトン型の財界志向、ウィルソン型の道義主義、ジェファソン型の弱腰を嫌悪

ジェファソン型のバラク・オバマ氏は前任者ジョージ・W・ブッシュ氏のジャクソン型ナショナリズムとウィルソン型介入主義へのアンチテーゼとして登場した。オバマ氏はアメリカが悪党体制とも共存が可能で、海外への関与を控えてその余力を国内改革に向けるべきだと考えている。しかしミード氏は以下のように述べている。

ジョファソン型の国際関与消極主義がまかり通るためには多くの国々の協力が必要になるが、アメリカの存在感が薄れてしまうとむしろ諸外国はアメリカに協力する動機が低下してしまう。

その通りである。どの挑戦国も敵対国もアメリカに対して融和的ではない。過去にジェファソン型外交政策が通用したのは、アメリカがイギリス覇権下の世界秩序でフリー・ライダーであることが許されたからである。またオバマ政権はアフガニスタンとパキスタンの政治改革の促進、ダライ・ラマへの支援などでウィルソン型のアプローチもとる必要に迫られる。カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのリリア・シェフツォワ上級研究員は、欧米がクレムリンに宥和姿勢をとるとロシアの改革派を落胆させてしまうと深刻な懸念を述べている(“The Kremlin Kowtow”; Foreign Policy; January5, 2009)。オバマ氏はメドベージェフ・プーチン政権への対応を再検討する必要がある。国内の反対派はオバマ氏の外交をあまりに臆病だと批判している。

ジェファソン型とウィルソン型の対応の組み合わせを間違ってしまうと、オバマ氏はカーター氏の轍を踏みかねない。ミード氏はオバマ氏が挑戦国や敵対国、対テロ戦争、アメリカの介入への反感に対処するうえで、微妙なバランスをとる必要があると結論づけている。ウォルター・ラッセル・ミード氏がフォーリン・ポリシーに投稿した論文は、バラク・オバマ氏の外交が歴史的にどのような意味を持つかを理解するためには是非とも推薦したいものである。

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