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2010年3月14日

イラン核保有の野望阻止に中国の壁

イギリスのデービッド・ミリバンド外相は3月14日日曜日より中国を訪問する。イランの核開発計画に対する制裁の強化が今回の訪中で最重要課題となる。ミリバンド外相は中国の楊潔篪外相そして温家宝首相と会談する。石油の輸入が死活的な国益と考える中国は、アメリカとEU3が主張する制裁強化には消極的である。そうした最中にアメリカのロバート・ゲーツ国防相は最近歴訪した湾岸諸国でイランへの制裁強化の支持を要請し、ロシアと中国の反対を乗り切ろうとしている(“Britain says China won't risk isolation over Iran”; Reuters; March 12, 2010)。

ミリバンド外相の訪中を前に、英国王立国際問題研究所のケリー・ブラウン上級フェローは、2月22日のインタビューで中国経済の中でイランの石油が果たす役割を語った。以下のビデオを参照して欲しい。ブラウン氏は、中国は石油の得意先としてイランを含めた中東諸国の全てと友好関係を保つという独特な地位にあると述べている。しかしイランをめぐってアメリカとヨーロッパの同盟諸国と対決することは中国の国益には適わないとも述べている。他方で中国は近年に入って自国の主張を声高に叫ぶようになり、欧米の国益と妥協をすることは難しくなってきている。

ブラウン氏は最近の論文で、エネルギー資源と核不拡散の間で揺れる中国の立場を論じている。現在の中国にとっては経済的繁栄が最重要課題で、継続的な高い経済成長を維持できなければ共産党の正当性は失われてしまう。ブラウン氏の論文でもこれは重要なポイントで、まさにそれこそ相手国がどれほど悪評であっても、中国がそれほど貪欲なまでに石油輸入協定を結びたがっている理由である。COPコペンハーゲン交渉でも見られた通り、中国は経済成長にとらわれて環境まで目を配る余裕がほとんどない。中国は欧米が自国のような新興経済国の成長の機会を否定していると非難している。ブラウン氏はアメリカ国務省のデータを引用し、カルフォルニアの大気汚染の4分の1は中国が発生源だと指摘する。

核不拡散の取り組みの障壁となるのは、これらの無責任な行動ばかりではない。中国とアメリカの関係は、台湾への武器輸出とダライ・ラマのワシントン訪問をめぐって対立している。現在の米中関係は冷え込んでいる。

石油需要の高まりと対米関係の冷却化をよそに、中国にとって核不拡散は死活的な国益である。消極的であろうとも、中国は制裁強化を支持するであろうとブラウン氏は言う。しかしケリー・ブラウン氏は「そして最も重大な懸念は、イランのような国がアメリカと対決に当たって、中国に経済的な支援だけでなく政治的な支援まで求めるようになるのはいつだろうか?」と文末で問いかけている(”China, Iran and the United States”; World Today; March 2010)。近年になって中国で自国至上のナショナリズムが高揚しているので、欧米に対して利害を度外視した対決姿勢をとりかねない。権威主義の中国と神権政治のイランの間で、自由主義世界秩序のアウトサイダーの枢軸が形成される可能性があり、そうなると自由諸国にとってかなりの脅威となる。

イランのケースは中国が世界運営の責任を持って参画できるかを試す死活的に重要なテストである。バラク・オバマ大統領はAPECシンガポール首脳会議で、中国の台頭を歓迎すると言い放った。これはあまりに性急である。中国が考えていることは、現在の共産党支配下での圧政体制の維持と自国の狭い国益の押し付けだけであって、国際公益など眼中にはない。

ロシアとともに国際社会に難題を突きつける中国は、冷戦後には国家間の衝突はなくなったと考えるクリントン時代の夢の産物である。今回訪中のミリバンド外相が対イラン制裁で有意義な合意に至らなければ、“The Return of History and the End of Dreams”という国家対決の再来について考えてゆかねばならない。中国とロシアでのナショナリズムの高まりは、両国をますます危険な存在にしている。

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