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2010年3月10日

オバマ政権下での「ほろ苦い」英米関係

バラク・オバマ大統領は就任してからというもの、ヨーロッパ諸国民からイラク戦争による大西洋関係の亀裂を癒すことを期待され、人気は高い。しかしイギリスは例外である。ブッシュ政権期から、イラク戦争とアフガン戦争でのイギリスの貢献は他の追随を許さない。さらに、エリザベス女王とゴードン・ブラウン首相に対する昨春のオバマ氏の不注意な振る舞いは、イギリス国民の怒りをかった(“Why Won't Obama Honor Our Queen?”; Politics Daily; April 4, 2009)。また商工相のピーター・マンデルソン卿はバイ・アメリカン条項を批判した。さらにボブ・エインスワース国防相はオバマ氏がアフガニスタンへの増派になかなか踏み切れないと不満を述べていた。

オバマ政権は英米特別関係を重要と考えていないかも知れない。しかしバラク・オバマ氏は大統領選挙から、アフガニスタンでの戦争は対テロ戦争とアメリカの国家安全保障の中できわめて優先度の高い案件だと主張し続けており、この戦争でのイギリスの貢献度はアメリカの同盟国の中でも群を抜いている。よって、イギリスのメディアや専門家の視点に言及することは非常に重要である。

まずイギリスの視点からオバマ氏がどのように評価されているかを述べたい。王立国際問題研究所のロビン・ニブレット所長は、タイムズ紙のブロンウェン・マドックス主任外交論説員が司会を行なったパネル・ディスカッションでオバマ政権下でのアメリカ政治を語った。ニブレット氏はオバマ氏に10点満点で8点の評価を与えたが、政策の実施は始まったばかりで何の成果も挙げていないとしている。現在のオバマ氏は健康保険法案の議会通過と失業率の抑制といった内政問題にかかりきりである。よってニブレット氏は中東和平のような国際問題に取り掛かれるのは中間選挙以後になると述べている。

参加者の一人から、オバマ氏はブッシュ政権下で傷ついたアメリカの評価をどのように修復するのかという質問があった。ニブレット氏はオバマ氏が就任以来、敵対勢力(イラン)、反対勢力(シリア)、競合勢力(ロシア、中国)、同盟国(ヨーロッパ、トルコなど)との関係再構築を行なってきたと答えた。イギリスのメディアはオバマ氏を激しく批判したが、ニブレット氏はアフガニスタンでの軍事作戦と昨年4月のG20ロンドン・サミットをめぐって英米関係は強まったと述べた(“Bronwen Maddox live: the Obama presidency one year on”; Times; January 19, 2010)。

全てのオピニオン・リーダーがロビン・ニブレット氏ほどバラク・オバマ氏に対して好意的なわけではない。英国エコノミスト誌は、オバマ氏は最高司令官の責任を真剣に全うしようとしておらず、テロ収容者、アフガニスタン、イラク、イランといった課題でアメリカが何をすべきか明確に方針を示していないと記している。さらにオバマ氏はアメリカと同盟国への充分な見返りもなしに、ロシアと中国に宥和姿勢をとっている(“Is Barack Obama tough enough?”; Economist; February 25, 2010)。

イギリスのメディアと専門家は二国間関係に関してはバラク・オバマに対してもっと厳しい。前任者のジョージ・W・ブッシュ氏とは違い、オバマ氏はアメリカの敵か味方かというアプローチはとらない。またジョン・マケイン上院議員が考えるような民主主義連盟による世界運営も信じていない。

ケニア人を父親に持つオバマ大統領は、イギリスの過去の植民地主義に批判的で、大統領執務室にあったチャーチルの胸像をイギリスに送り返した。さらに重要なことに、ミシェル・フローノイ政策担当国防次官とフィリップ・H・ゴードン欧州ユーラシア担当国務次官に代表されるオバマ氏の政策ブレーンはヨーロッパ統合を支持している。しかしEU加盟国はブリュッセルの官僚機構と利害が一致しない時には自国の国益を優先する。最も頼れる同盟国を軽視すれば代価は計り知れない(“Obama Gives Britain the Cold Shoulder”; Wall Street Journal; December 13, 2009)。

アメリカのルイス・サスマン駐英大使はそうした不安を宥めようとして、特別関係はかつてないほど強まっていると述べた。サスマン大使はオバマ大統領はゴードン・ブラウン首相の指導力を高く評価し、イギリスに倣って銀行経営陣の収入への課税を行なおうとしていると語ったSpecial relationship with UK stronger than ever, says US ambassador”; Guardian; 1 January, 2010)。

しかしバラク・オバマ氏はイギリスとアルゼンチンの間で2月に起きたフォークランド紛争で中立の立場をとり、またもイギリス国民の怒りをかった。サッチャー元首相の外交政策スタッフを歴任したヘリテージ財団マーガレット・サッチャー自由センターのナイル・ガーディナー所長は、オバマ氏はアフガン戦争でのイギリスの貢献に敬意を払っていないと非難した(“The Special Relationship is under fire: Barack Obama’s refusal to back Britain over the Falklands is a disgrace”; Daily Telegraph; February 25, 2010)。エストニアのバルト国防大学のジェームズ・コーラム学長は、オバマ氏がアルゼンチンのカルクナー政権のようなラテン・アメリカの左派政権に宥和姿勢を見せても、相手が地域の問題児とあっては全くの間違いだと指摘する。バラク・オバマ氏はアメリカにとって最も頼りになる同盟国との関係を悪化させているだけである(“American neutrality on the Falklands is a symptom of US foreign policy drift”; Daily Telegraph; February 26, 2010)。

アメリカ側からも批判が挙がっている。保守派の影響力あるブログは、オバマ外交では挑戦相手には宥和をすすめながら同盟国に敬意を払わないという懸念を述べている(“The British Aren’t So Special to Obama”; Big Government; February 28, 2010 および“The Special Relationship is under fire: Barack Obama’s refusal to back Britain over the Falklands is a disgrace”; Blogmocracy; February 25, 2010)。

オバマ大統領は挑戦相手国と敵対諸国との対話をすすめてブッシュ外交を覆して国際舞台でのアメリカの評価を回復しようとしている。しかしその見返りに同盟国との関係が悪化すれば世界の中でのアメリカの立場が悪くなるだけである。アフガン戦争は優先度の高い問題なので、現在の英米特別関係は再検討が必要ある。バラク・オバマ氏が世界各地の左翼の間で人気が高い現状は、カーター時代の再来以外の何物でもない。

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