オバマ大統領の新STARTを批判的に検証する
4月12日から13日にかけて40ヶ国以上を招いてワシントンで開催される核セキュリティー・サミット(“Nuclear Security Summit to Meet in Washington”; America.gov; 6 April 2010)を前に、バラク・オバマ大統領は4月8日にチェコのプラハでロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領と共に新STARTに調印した。メディアはこの条約を国際平和と核兵器のない世界に向けた歴史的な一歩であるかのように礼賛しまくっている。しかし私は新STARTを手短に批判したい。
プラハ会談よりかなり前に、ジョン・ボルトン元国連大使がオバマ政権は軍備管理交渉で致命的な誤りを犯したと指摘している。それは、削減のための削減を追い求め、アメリカの国益に真剣な考慮を払わなかったということである。ロシアとの核均衡を達成するためにアメリカは相手方以上に核弾頭を削減することになった。ボルトン氏は「アメリカとロシアの立場は同じではなく、核弾頭数の均衡にこだわればモスクワよりワシントンの方が国益を損ねてしまう」と述べている。アメリカは全世界の同盟国を守る必要があり、テロリスト、イラン、北朝鮮の脅威にも直面している(“Obama's Obsession with Reduction”; Washington Times; February 24, 2010)。私はオバマ氏が削減に固執し過ぎで、国際世論の喝采を求めすぎだというボルトン氏の意見に同意する。実際に現在、ロシアと中国は対イラン制裁を軟化させようとしている。
ヘリテージ財団のベーカー・スプリング、F・M・カービー研究員は新条約ではアメリカのミサイル防衛も弾頭と共に削減の対象になると指摘する。アメリカがミサイル防衛計画を進めれば、ロシアは条約を脱退することが認められている(“New START Would Render U.S. Vulnerable to Missile Attack”; Heritage――Foundry; April 8, 2010)。これは西側にとって大変な制約である。アメリカの同盟諸国はイランや北朝鮮から間近に迫った脅威を受けている。ミサイル防衛がなければ、アメリカの安全保障の傘が脆弱になるのはスプリング氏の言う通りである。
外交政策イニシアチブのジェイミー・フライ副所長とジョン・ヌーナン政策顧問は、広く考えられているように新STARTが全世界の核拡散防止を大きく前進させるという見方に反論している。それはアメリカとロシアの戦略兵器の条約に過ぎない。戦術核爆弾は含まれず、米露関係の「リセット」を保証するものでもない。きわめて重要なことに、フライ氏とヌーナン氏はならず者国家には条約など通用しないが、リビアにはアメリカとイスラエルの軍事的な威嚇が通用したと指摘する(“Debunking the Administration's Nuke Myths”; Weekly Standard; April 9, 2010)。
最新のSTARTはメディアと国際世論にとって魅力あふれるものかも知れないが、私はバラク・オバマ氏が核戦力でのアメリカの優位の維持をこれほど軽視する理由がわからない。同盟諸国にとって、アメリカの優位が安全保障の傘を保障するものだからである。この条約はジミー・カーター大統領とレオニード・ブレジネフ議長の間で調印されたSALTⅡの二の舞になるかも知れない。来る核セキュリティー・サミットを注視し、新STARTとサミットの相互関係をしっかり考えてみよう。核兵器削減は2010年の最重要問題になるであろう。
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