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2010年8月19日

ゲーツ長官による国防改革

ロバート・ゲーツ国防長官は不景気による軍事費抑制のために統合戦力軍(及びの参照)の閉鎖を表明した。さらにゲーツ氏は防衛契約企業への予算を抑制し、国防総省の文官及び武官の役職の削減も視野に入れている。こうした予算削減はイラク及びアフガニスタンの戦費と国内財政支出の増加と相殺を目的としている(“Gates announces major cuts in military spending”; Boston Globe; August 10, 2010)。

新しい国防予算計画によって防衛契約企業と投資家には損失がもたらされた。統合戦力軍はバージニア州ノーフォークで背広組と制服組で6,100人の雇用を生み出している。ゲーツ氏の計画によると、ペンタゴンは契約企業の数を向こう3年以上にわたって毎年10%減らす方針である。ロッキード・マーティン、ジェネラル・ダイナミックス、BAEといった大手防衛産業のコンサルタントを務めるローレン・トンプソン氏は、計画によって打撃を受けるのはハードウェアの製造企業ではなく、事務作業の外注企業だと述べている(“Defense secretary's planned cuts upset investors and defense contractors”; Washington Post; August 11, 2010)。

サンフランシスコの海兵隊記念クラブで講演したゲーツ氏は「予算を事務作業と余剰人員から現在から将来にかけてのアメリカ軍の戦闘能力の向上に振り向ける」と述べた。他方でゲーツ氏は議会に対して、財政赤字の増大だけを理由に冷戦末期のように軍事費を過度に削減するような過ちを繰り返さないように要求した(“Gates Urges Congress to Avoid `Mistake' of Harmful Cuts in Military Budget”; Bloomberg News; August 14, 2010)。ゲーツ長官は2011年の退任を表明したが、この計画を通じてオバマ大統領への影響力を維持してゆきたいと考えている(“Defense secretary Gates says he would like to leave next year”; Washington Post; August 17, 2010)。

しかしゲーツ氏の計画に疑問を唱える者もいる。議会調査局で国防政策と予算を担当するスティーブン・ダゲット氏は、統合戦力軍の閉鎖だけで国防予算の抑制はできないと言う。それは基本戦略の作成や訓練といった一部の業務は軍の他の部署が引き継ぐからである(“Will Gates' proposed Pentagon spending cuts really save money?”; Top Secret America ―― Washington Post Blog; August 10, 2010)。国防予算が抑制された状態で、アメリカが世界各地で国家及び非国家アクターの脅威に対処を議論することの方がさらに重要である。バック・マケオン下院議員とエリック・カンター下院議員は脅威の増大と相互関連の強化に対処するには統合戦力軍が必要だと主張し、この計画を批判している(”Lawmakers Question Gates Defense Cuts in Face of 'Growing Threats'”; FOX News; August 11, 2010)。

この問題は一般に思われているより根深い。9・11事件の前日に当時のドナルド・ラムズェルド国防長官は事務作業の外注依存を減らすなどペンタゴンの官僚機構の構造的改革を宣言した。しかしテロ攻撃によってラムズフェルド氏は改革よりもイラクとアフガニスタンの戦争に労力を振り向けざるを得なくなった。ロバート・ゲーツ氏は前任者が残した超党派の仕事に取り組んでいる(“Gates takes on the bureaucracy”; Shadow Government ―― Foreign Policy Blog; August 10, 2010)。ペンタゴンと軍の構造改革に加えて、ゲーツ氏はF22ステルス戦闘機やDDG1000駆逐艦などの「冷戦用」の兵器の生産を停止した。しかしゲーツ長官は従来の国家対国家の紛争向けの大型兵器と、対テロ作戦のような冷戦後の戦闘に向けた小型で迅速な兵器との微妙なバランスをとらねばならない(“The Transformer”; Foreign Policy; September/October 2010)。

アメリカン・エンタープライス研究所のトマス・ドネリー常任研究員は、統合戦力軍が軍部のセクショナリズムを超えた共通の国防目的の追求という役割を充分に果たさなかったとして、解散そのものには賛成している。しかし改革によってアメリカの安全が向上するのは、ごくわずかだとも述べている(“Gates is Wielding the Budget Axe”; AEI Center for Defense Studies; August 9, 2010)。テロの台頭と経済危機によって、軍とペンタゴンの官僚機構と指揮系統の改革が必要となった。しかし、冷戦後のロシアと中国が再台頭したことで、アメリカは従来からの脅威への対処も怠ってはならない。この改革は前任者から引き継がれた仕事である。ゲーツ氏は2011年の退任までにアメリカの国防政策の行く末の基礎固めを成し遂げるのだろうか? 

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コメント

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

投稿: 履歴書の添え状 | 2010年8月20日 03:44

どうもありはとうございます。リンク先の履歴書書式は参考になります。

投稿: Shah亜歴 | 2010年8月20日 11:15

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