ウクライナがロシアに屈従したように、日本も中国に同じことをするようになるのだろうか?この紛争に関する現在の議論では、ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員が「民主国家VS専制国家」(原題The Return of History and the End of Dreams)という著書で論じているようなグローバルな基本構造が全く念頭に置かれていない。日本がこれ以上の叩頭を続ければ、全世界の専制国家を勢いづかせてしまう。
しかし、事態は反イスラム感情を超えてオバマ政権への不信感に根ざしていると私は考える。ティー・パーティー運動に見られるように、グラスルーツの保守派はオバマ氏の経済および健康保険政策によって市民生活への政府の介入が「過剰」になると批判している。保守派の勢いは、ティー・パーティーがなくても強まっている。USAトゥデーとギャラップが最近行なった世論調査によれば、「民主党員の59%、共和党員の55%、無党派層の50%がオバマ政権の成立によって共和党が保守化したと答えた」ということである(Poll: GOP more conservative but not because of the 'tea party'; Los Angels Times; September 17, 2010)。人種やイデオロギーの壁を超えた国民の団結を訴えた有名な演説を行なったオバマ氏が大統領に就任したことで、アメリカの分裂が深まるとはなんとも皮肉である。コーラン焼き討ちとティー・パーティー運動は「オバマ・ディバイド」の氷山の一角に過ぎない。
上記の概観から、識者の中には増派の議論を行なう際に、アフガニスタンとイラクの根本的な違いを指摘する者もいる。イラクのヌーリ・アル・マリキ首相は反乱分子の掃討に断固とした態度で臨んだが、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はタリバンとある程度の妥協を模索している。また、イラク軍は緊急時には敵を撃破するために必要な行動をとるうえで、アフガニスタン軍より大きな自由裁量権が与えられていた。アフガニスタン国民が「タリバンの行為を必ずしも好むわけではないが、タリバンの支配も政府の支配も大差はないと考えているようだ」という状況なら由々しき事態である(“Realities, rules, relationships won't help surge succeed”; Iraq the Model; August 1, 2010)。
以下のビデオではペトレイアス大将がアフガニスタンでの任務への懐疑論に反論し、ヘルマンド州中央部をはじめとする主要地域でNATO軍がタリバンの優勢を覆したと述べている。また、この戦争が国境を超えた過激派の攻撃から自由諸国民を守るために必要だと強調した。さらに、これがタリバンによる中世さながらの圧政からアフガニスタン国民を救う戦争でもあると語っている(NATO Channel; August 31, 2010)。
アフガン戦争での勝利は可能で、この国も統治可能である。今年の11月19日から20日にかけてアフガニスタンへの権限委譲を議論するためにリスボンで開催されるNATO首脳会議を前に、ペトレイアス大将はアフガニスタン治安部隊の訓練の目的で2,000人の追加派兵を要請した(“Gen Petraeus requests 2,000 more troops for Afghanistan”; daily Telegraph; 6 September 2010)。アフガン戦争の勝利にはアメリカ政府と国際機関、現地政府と部族、その他の関係を調整するという高度な技能が求められる。ペトレイアス大将はイラクでこうした微妙な政治的駆け引きに対処する能力を示した。最も重要なポイントはバラク・オバマ大統領の指導力である。カイロ、プラハ、シンガポールでの演説に見られるように、大統領はアメリカの優位を思い切って押し通すことに及び腰である。これも、大統領自身が早期撤退と経済重視を示唆する理由の一つかも知れない。そのような考え方では危険な誘惑に陥ってしまう。
首相在任時のブレア氏はイラクとアフガニスタンは安全保障と軍事を超えた、価値観の観点から対テロ戦争に勝利するための出発点だと主張した。過激派は安定した民主主義を破滅させ、イスラム世界を半封建的な宗教的圧政支配に戻すことを求めている。またブレア氏は大量破壊兵器が見つからなかったとはいえ、イラクは国際安全保障に重大な脅威だったと明言した。イラクはクウェートとイランに侵攻し、化学兵器でクルド人を虐殺した。国際連合はバース党政権に14回もの決議案を出した(“A Battle for Global Values”; Foreign Affairs; January/February 2007)。
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