アフガニスタンでの戦争は、オバマ氏がアメリカの大統領なのか、ポスト・アメリカの大統領なのかを判断するうえでのリトマス紙試験となる。チャールズ・クローサマー氏はボブ・ウッドワード氏の著書「オバマの戦争」を参照し、「オバマ氏は心理的にアフガニスタンから撤退している」と語る。昨年の12月1日にオバマ氏がアフガニスタンの兵員増派を公表した際には、米軍を18ヶ月以内に撤退させるとも表明した。オバマ氏は出口戦略を模索しているが、対反乱戦略に必要不可欠で、スタンリー・マクリスタル大将もデービッド・ペトレイアス大将も推奨している制度構築には消極的である。オバマ氏は中間選挙を目前に控え、内政と民主党内の支持取り付けに手一杯である(“Why is Obama sending troops to Afghanistan?”; Washington Post; October 1, 2010)。オバマ大統領が対テロ戦争での重要な任務を信じていないことは、由々しき問題である。さらに、早期の撤退による力の真空により、中国が中東でもアフリカで行なっているような勢力拡大の野心を抱きかねない。
軍事的な関与を減らしたからといって、決して経済成長が保証されるわけではない。外交政策イニシアチブのウィリアム・クリストル所長は、世論に間で広まっている軍事支出がアメリカ経済の負担になっているという誤解に反論している。イラクとアフガニスタンの戦費を含めても、今年の国防支出はGDPの4.9%で、第二次大戦以降の年平均の6.5%を下回っている。他の予算と比較しても、9・11以降で国防支出が大幅に増額されたわけではない。きわめて重要なことに、クリストル氏はアメリカの軍事的関与がなくなって世界各地が不安定になれば、長期的な経済成長など望めない情勢になってしまうと指摘する。クリストル氏が主張するように「弱小で安価な軍事力によって財政改善を望むことはできない」のである(“Peace Doesn't Keep Itself”; Wall Street Journal; October 4, 2010)。
不充分な軍事関与の問題には、もっと根深いものがある。冷戦終結以来、アメリカは「歴史の終焉」を前提にして、充分な国防支出を行なわなかった。よって、今日の安全保障に突きつけられた課題は、オバマ政権だけの責任ではない。最近、保守派の主要シンクタンクが共同発行したレポートでは、国防費の過剰支出という誤った見方に反論している。購買力平価で見れば、中国の軍事支出はアメリカに近づいている。国防費の持続性については、ヘリテージ研究所のマッケンジー・イーグレン研究員が1976年以降の動向を基に、社会保障費ほど伸びていない国防費は財政赤字の原因にはならないと指摘している。この共同レポートは世界の警察官としてのアメリカ役割を支持し、世界を不安定に導くような潜在的な攻撃を防ぐためにもアメリカ軍はあらゆる事態に対処する準備ができていなければならないと説いている(“Defending Defense”; Joint Paper of AEI, Heritage Foundation, and Foreign Policy Initiative; October, 2010)。
最近のコメント