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2010年11月23日

北朝鮮の暴挙は東アジアの航空交通を考え直す好機か

本日、北朝鮮は韓国北西の延坪島(ヨンピョンド)100発以上の砲弾を撃ち込んだ。韓国のメディアによると、この交戦で韓国兵2人と非戦闘員の住民21人の死者が出ている(“North Korea shells southern island, two fatalities reported”; Korea Joong Ang Daily; November 23, 2010)。現時点では、北朝鮮が攻撃におよんだ理由は明らかになっていない。ともかく、下記の地図を参照して欲しい。

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ヨンピョン島が北朝鮮の攻撃を受けたのは、これが初めてではない。キム・ジョンイルは1999年と2002年にもこの島付近で韓国と小競り合いにおよんでいる。地図を見ると、東アジアのハブ空港の地位を誇るインチョン空港(地図上A)が、これほど危険なヨンピョン島(地図上3)に近いことがわかる。

今や東アジアの航空網は考え直されるべきである。インチョンに代わるハブ空港として、成田・羽田空港の整備が急がれる。現在、日本の政界は取るに足らぬスキャンダルと党利党略で混迷の真っ只中である。短命に終わった鳩山政権で国土交通相の地位にあった前原誠司氏は、日本経済再生のためにこの野心的な計画を打ち上げた。

しかし、今や事態はもっと切迫してきた。これは日本の経済と国際的な地位だけのためでなく、世界の公益のためなのである。世界は東アジアのハブ空港に成田・羽田を必要としている!永田町のちっぽけな政争などにとらわれてはならない!

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2010年11月21日

米印首脳会談からオバマ政権後半の外交をどう見るか?

中間選挙での敗北からほどなくして、オバマ大統領は10日間のアジア歴訪に旅立った。ソウルでのG20と横浜でのAPECもさることならが、インドとの二国間会談は際立って重要であった。G20やAPECのように明確な合意形成もままならない多国間交渉ショーとは異なり、インドとの二国間会談では実のある具体的な戦略課題が議論されたからである。

インドは新興市場であるだけでなく、アフガニスタン・パキスタン問題や核不拡散といった課題でも重要な国である。また、米中印という域内三大国の力のバランスも見逃せない問題である。11月6日から8日にかけての二国間会談を前にした11月5日に、ジョン・マケイン上院議員はカーネギー国際平和財団で米印関係に関する講演を行なった。以下のビデオを参照して欲しい。

マケイン氏は演説を通してアメリカとインドは民主主義という共通の価値観によって結ばれ、これが両国の戦略的提携関係のさらなる発展に重要な役割を担っていると強調した。インドはアメリカにとって有望な新興市場以上に重要な国である。アフガニスタン・パキスタン問題は両国にとって死活的な課題である。マケイン上院議員は、アメリカがアフガニスタンから性急に撤退すれば、インドにはそれが対テロ戦争に消極的だと映るであろうと述べた。ボブ・ウッドワード氏が自らの著書「オバマの戦争」で、バラク・オバマ大統領は心理的にアフガニスタンから撤退していると語っているので、これは重要な点である。実際に、オバマ氏はリスボンでのNATO首脳会議で、2014年までにアフガン戦線から撤退するという期限を切った(“Lisbon: NATO leaders endorse Afghanistan 2014 withdrawal date”; Daily Telegraph; 20 November, 2010)。

非常に興味深いことに、マケイン氏は米印民主枢軸によってミャンマーとイランの民主化を促進すべきだと訴えた。地理的な観点からすれば、インドは東アジアと中東の間にある。戦略的提携関係がアフガニスタン・パキスタン問題を超えても不思議はない。インドはアメリカ、オーストラリア、その他アジア太平洋地域の民主主義諸国とも海軍での協調関係を深めている。ユーラシア大陸の東西を結ぶインドは、アメリカの大西洋戦略と太平洋戦略に整合性を持たせる重要な位置にある。問題は、オバマ政権が世界の民主化でアメリカが指導的役割を強く主張することには、やや消極的なことである。よって、イランとミャンマーの民主化を目指す米印提携は、将来への青写真にとどまりそうである。

中国の平和的台頭に関して、マケイン氏の発言にはインドを対中防壁とする考えを示唆すると思われるところはあったが、中国批判には慎重であった。マケイン氏は財界の権益にも考慮を払ったのであろう。しかし、米印の戦略的提携関係が中国を「責任ある大国」にするために一定の役割を果たすだろうとも述べた。

他方でカーネギー国際平和財団のジョージ・パーコビッチ副所長は、米印関係は持続的に発展するべきで、ブッシュ政権による米印原子力協定のような「アンフェタミン」に頼るべきではないと述べている。下記にある、11月4日に行なわれた内部インタビューのビデオを参照して欲しい。

特に、リベラル派はNPT非加盟国との原子力協定は、核不拡散というアメリカの国益に矛盾するとして反発している。また、インド国内での原子力施設の査察がアメリカ製のものに限られ、他の原子力施設には及ばないことに、リベラル派は懸念を抱いている。よって、リベラル派はこの協定によってインド亜大陸と全世界での核軍拡競争に拍車をかけるのではないかと考えている。しかし対テロ戦争と輸出市場のことを考えれば、インドとの戦略的提携関係がアメリカの重要な国益に適うことはリベラル派も認めている。中道派のパーコビッチ氏は、アメリカとインドが民主主義と言う共通の価値観で結ばれているという、マケイン氏の見解には同意している。

インドと中国の地政学的な競合に関して、パーコビッチ氏はアメリカがそれを利用しないようにすべきだと主張する。インドの安全保障にとって、アフガニスタン・パキスタンの混乱、パキスタンの核の脅威、 イスラム・テロと比べれば、中国はそれほど差し迫った課題ではないということである。歴史的には、インドへの脅威はヒマラヤ山脈ではなくカイバル峠を越えてやって来た。パーコビッチ氏が述べるように、インドに中国への抑えとして過大な期待を抱かない方が良いのであろう。

ニューデリーでの首脳会談に臨んだバラク・オバマ大統領とマンモハン・シン首相は、広い範囲の事項で重要な合意に至った。上院議員時代には最も左翼の議員であったオバマ氏は、ブッシュ政権による二国間協定に批判的であった。しかし、大統領になったオバマ氏は、インドでのアメリカ企業の市場開拓と投資の拡大に積極的なっている。安全保障では、アフガニスタン・パキスタン情勢、海賊、大量破壊兵器不拡散、テロリストの掃討、そして二国間の国防強力が議題にのぼった。両首脳は、エバーグリーン革命やインターネット・セキュリティといった新しい課題についても意見を交わした。前者はオバマ政権らしい論点である。これはオバマ氏が掲げながら任期前半には充分な進展が見られなかった、グリーン・ニューディールの一環のように思われる(“White House issues fact sheets on Obama's India visit”; Hindustan Times; November 9, 2010)。

インド側からすれば、先のアメリカとの共同声明は多国間の輸出規制体制への参加に弾みをつけるものである。ニューデリーの国防問題分析研究所のS・サムエル・C・ラジブ準研究員は、11月8日の米印共同声明のよってインドの原子力供給国グループ加入への道が開け、最終的にはインドがNPTへの参加し、ドイツや日本と共に国連常任理事国入りもできるようになると述べている。オバマ氏はインドとの原子力事業を推し進めながら、アメリカ主導の核不拡散体勢に組み入れるという、前政権の方針を追求している(“India’s Accommodation in Multi-lateral Export Control Regimes”; ISDA Comments; November 10, 2010)。

インドとの戦略的提携関係は、アメリカにとって超党派の国益である。インドにとって、この提携関係はグローバルな戦略的なかけひきで自国の立場を有利にできるものである。ブッシュ政権が結んだ二国間協定は賛否両論を呼んだが、こうした「アンフェタミン」がなければ現政権がインドとのパートナーシップを発展させることはできなかったであろう。インドは中間選挙後にオバマ氏が最初に訪問した国である。今回のインド訪問は、ロバート・ケーガン氏が述べたように、アメリカ外交を任期前半2年の謝罪姿勢から本来の姿に戻すための第一歩なのだろうか?

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2010年11月11日

日米欧と新興経済諸国の衝突

最近のメディアと財界は、新興経済諸国を成長著しい魅力ある新市場として語ることが多い。しかし本当に新興諸国に将来の希望を見出してよいのだろうか?近視眼的な商業主義とは裏腹に、新興諸国は国際政治経済の自由主義秩序に大きな挑戦を突きつけている。先進国は低賃金の新興諸国と熾烈な競争にさらされている。新興経済諸国の中には西側の自由体制を否定し、自分達の専制体制を擁護する国もある。

新興経済諸国はBRICs、ASEAN、韓国、メキシコ、南アフリカなどが挙げられる。それらの国々の事情は、国ごとに異なる。民主的で親欧米の国もあれば、中国のように「平和的台頭」を口にして全く新しい世界秩序を主張する国もある。

新興経済の中で最も重要なグループはBRICs諸国で、これらの国々は経済的な繁栄を背景に政治でも影響力の拡大を主張するようになってきている。ロシアと中国は西側に挑戦を突きつけて指導的地位を目指しているのに対し、インドはアメリカとの戦略的パートナーシップによって台頭してゆこうとしている。ブラジルはトルコと共にイランと国際社会の仲介を試みたが、アメリカの覇権に挑戦する気はない。よって、中国とロシアに特別な注目をする必要がある。

10月15日に日本国際フォーラム主催のAPECに関する円卓会議で、私は中国の政治環境について3点の問題に言及した。中国では外国企業の経済活動の自由が充分に保証されていないのに、なぜ財界人がこの国の市場に期待するのか理解しがたい。第一に、中国は為替相場に介入して国際市場競争を不公正に勝ち抜こうとしている。第二に、人権問題は深刻なリスクとなっている。尖閣紛争の際に、中国当局は何の躊躇もなくフジタの社員を報復逮捕した。第三に、共産党の情報管理によってグーグルは中国から撤退してしまった。

19世紀に日本の明治政府が西洋列強に「不平等条約」の改正を要請した際に、日本の法制度が未整備なために自国民の人権が侵害されかねないとの懸念から、列強は日本の要請を拒否した。明治政府が日本は充分に「文明化」されたと西洋列強を説得して初めて、日本は条約改正できた。外国企業にとって、現在の中国の政治環境は、徳川時代と明治初期の日本より酷いものである。

相互依存を主張する者達は、中国とロシアの体制がどうあろうと対話によって良好な関係を築けると主張するが、両国とも我々の自由主義世界秩序を自国に有利なように利用している。中国の資本家達は共産党と緊密に連携して、アメリカ、ヨーロッパ、日本の戦略産業を買い取って知識を海賊利用し、世界経済の支配を目論んでいる。ロシアの新興財閥資本家がサウス・ケンジントンの高級マンションを買い漁ったので、FSBの工作員がロンドンに身を潜めてアレクサンドル・リトビネンコ氏を暗殺することも容易になった。権威主義的な政府と特権的な企業との緊密な協調関係を通じて、両国とも利益を軍拡につぎ込んで自由諸国に脅威となっている。バブル期に日本企業がニューヨークのロックフェラー・センターを買い取ってアメリカ人の不興をかった。確かにこうしたシャイロックさながらの行為への嫌悪感は理解できるが、「誰もロックフェラー・センターをどこにも持ってゆくことはできない」ので日本企業のやったことは何の脅威にもならない。しかし中国とロシアの資本家達は西側の自由な資本主義に公然と異議を唱えている。

体制のあり方と大国間の競合の他にもナショナリズムも問題となる。1990年代には東南アジア諸国が「アジアの価値観」を訴えて、自国民への家父長的な権威主義を正当化した。当時の経済好況を背景に自信を強めていた東南アジア諸国は、欧米の優位に反旗を翻すようになった。アジア通貨危機によって初めて、東南アジア諸国は欧米の自由主義に対する「アジアの価値観」を高らかに主張することはなくなった。

経済的側面に関しては、新興経済諸国を語る際には低賃金労働による競争力の優位だけが問題ではない。HSBC銀行のスティーブン・キング主任エコノミストは、西側諸国と新興諸国の間で希少資源の争奪が激化すると警告している。生活水準の向上と需要の増大を背景に、天然資源の価格設定で新興諸国の影響力は増大するであろう。グローバル化によって世界経済全体は成長するものの、新興諸国の低賃金下請業務によって西側の消費者は将来への展望が持てなくなっている。自由市場経済には第二次世界大戦のような資源争奪戦を回避するための自動的安定装置の役割が期待されているが、ロシアと中国の専制政治家達は経済成長を高めるだけのために資本主義を利用し、自分達の政治的な立場を強化しようとしている(“Stephen King on scarce resources”; The Economist Online; October 13, 2010)。実際に、中国は10月に日本との間で尖閣紛争が勃発すると、レアアース資源の輸出削減を表明した。

新興経済諸国の台頭で最も深刻な問題は、自由主義世界秩序の脆弱化である。ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長とニューヨーク大学スターン・ビジネス・スクールのヌーリエル・ルービニ教授は、世界が一極覇権による安定から無極で無責任な不安定に変貌しつつあると述べている(“Paradise Lost: Why Fallen Markets Will Never Be the Same”; Institutional Investor; September 2010)。覇権安定理論では、自由主義の国でなければ自由世界秩序という国際公共財を提供することはできない。戦間期のイギリスがアメリカとの両頭体制を模索したように、覇権国家が他の大国と責任を分担することはあり得る。しかし責任を分担する国は単に国力があればよいというものではなく、自由主義国家でなければならない。イギリスがナチス・ドイツやソ連と責任を分担しようとしたことはない。現在の新興経済諸国には日米欧と責任分担するだけの充分な資格を備えていないので、G20による政策調整がうまく機能しないのは当然である。

もちろん、日米欧と対等な関係を築きたいという新興諸国の希望は尊重すべきである。真の問題は、これらの国々の体制の性質である。特に、どのような基本理念で国家建設を行なってきたかに注目すべきである。毛沢東主義の中国による「平和的台頭」は危険であるが、民主主義のインドによる競争力の向上は平和的である。独立以来、インドはイギリス労働党の基本理念であるフェビアン主義による経済開発を追求してきた。だからこそ、インドの台頭は歓迎できても中国の台頭は歓迎できないのである。

近視眼的な財界人は世界を「カントリー・ファースト」の視点から見直す必要がある。新興経済諸国について、相手が何者かを見極める必要がある。危険な体制の国々と取引を行なう多国籍企業は、短期的には利潤を挙げられるかも知れないが、長期的には損失を被るであろう。かつて日本の大平政権は、在テヘラン米大使館占拠事件の際にアメリカとヨーロッパの同盟諸国がイランに経済制裁を科したにもかかわらず、IJPC石油化学プロジェクトの建設を継続した。ならず者国家との商取引は、結局のところイラン・イラク戦争によって頓挫してしまった。

新興経済諸国をただ新たな市場としてしか考えない者達は、あまりに単純な朴念仁かシャイロック的な金儲け主義者かである。新興国は経済的な競合相手にも安全保障上の脅威にもその他の何にでもなり、我々の自由主義世界秩序を破壊するかも知れないのである。日米欧の指導者達は、新興経済諸国にどう向き合うかを見つめ直すべきである

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