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2010年12月 6日

核不拡散と東アジア安全保障に関する日米シンポジウム

駐日アメリカ大使館の主催で「日米同盟の将来―東アジアの安全保障と核政策」と題された政策フォーラムが、東京アメリカン・センターで11月29日に開催された。このフォーラムでの主要テーマは、日米両国が核の安全保障の傘に依存しながら、「核なき世界」という共通の政策目標をどのように達成知るかであった。中国の平和的台頭と北朝鮮のならず者的な行動は、日米両国共同の安全保障イニシアチブに深刻な挑戦を突きつけている。

日米双方からは、ベテランと若手の世代を代表するパネリストが招かれた。このイベントには、政治家、官僚、学者、ジャーナリスト、学生が参加した。講演したのは以下の専門家達である。

司会:

ラルフ・コッサ(アメリカ) 戦略国際問題研究センター太平洋フォーラム理事長

ゲスト・スピーカー:

ブラッド・グロッサーマン(アメリカ) 戦略国際問題研究センター太平洋フォーラム上級部長

秋山信将(日本) 一橋大学準教授

ダニエル・クリマン(アメリカ) 新アメリカ安全保障センター訪問研究員

向井和歌奈(日本) 海洋政策研究財団研究員

ブラッド・グロッサーマン氏は両国の同盟の性質に関し、日米の提携は双務的だと強調した。日本でのアメリカの軍事的プレゼンスが地域の平和と安定をもたらす一方で、日本は米軍に多大な支援を与えていると言う。グロッサーマン氏は、アメリカ側には日本とより対等な同盟を受け入れる準備があるものの、日本が世界の中での自ら立場を明確に規定する必要があると述べた。

中国と北朝鮮の脅威は急激に増大している。中国の平和的台頭が長期的な不確定要因となっているのは、どのような意図で軍拡に走っているのか不明確だからである。秋山信将氏は現在の米中関係が冷戦期の米ソ関係より複雑なのは、中国の戦略的な国益と軍の構造がアメリカとは非対称的だからである。中国の指導者達は核兵器の「先行不使用」を宣言しながら、日本と台湾をミサイルの標的としている。冷戦期のソ連と違い、中国にMADは適要しにくい。問題は、中国が急激な経済と歩調を合わせるように軍備を増強していることである。

北朝鮮に関して、秋山氏は今回のヨンピョン島の一件のような小規模攻撃には核抑止は効かないと述べた。キム・ジョンイルが敵視している韓国、アメリカ、日本のいずれも戦闘のエスカレートを望んでいないからである。他の手段も考慮されるべきだが、中国は北朝鮮に圧力をかけることに消極的である。そうした情勢に鑑みて、私は最後の手段であるレジーム・チェンジへの準備が重要と考えている。

質疑応答の時間には講演者と参加者の間で活発な意見の交換がなされ、オピニオン・リーダーと学生達から数多くの有意義な質問があがった。その中の一部を記載したい。

核不拡散とレジーム・チェンジに関しては、民主党の橋本勉衆議院議員がアメリカはイラクを攻撃しながら北朝鮮は攻撃しないのはなぜかと質問した。パネリスト達が核兵器と通常兵器による両国の報復軍事力に関する返答に終始したことは残念であった。サダム・フセインの拡張主義的な野心にも言及しなかった。サダムはクウェートとイランに侵攻し、少数民族のクルド人には毒ガスで大量虐殺を行なった。バース党体制はアラブ世界での支配的な地位を目指しており、1991年のクウェート侵攻は、サダムがスエズ運河を国有化したエジプトのガマル・アブデル・ナセルに自らをなぞらえて行なった。バース党はイスラエルを否定している。ゲスト・スピーカー達にはバース党のイデオロギーの危険性に言及して欲しかった。

テレビ朝日の記者からは、バラク・オバマ大統領が横浜でのAPEC首脳会議のために訪日した際に、広島と長崎を訪問しなかったことは日本国民を落胆させたとの意見が寄せられた。しかし、私は尖閣諸島をめぐる中国との紛争、朝鮮半島の緊張、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領による突然の国後島訪問といった事態を考慮すれば、同記者の見解には同意できない。東アジアの安全保障が致命的に脆弱な現状では、アメリカの大統領が弱腰な謝罪姿勢をとっているように思われてしまうと、特に親米保守派が懸念を抱くようになる。ベルリンの壁の崩壊から世界金融危機にかけての時期の「勝ち誇った」アメリカに批判的な者達は、オバマ氏の広島ないし長崎への訪問を歓迎するであろう。しかし注意すべきことがある。そうした意見の持ち主の殆どは左翼で、本質的に反米である。優先すべきは現在の脅威への対処であって、優しく人道的な態度を示すことではない。

新STARTも議論の的になった質問である。全てのゲスト・スピーカーが、ロシアとの間で結ばれたこの条約の批准を拒否するジョン・カイル上院議員を批判した。しかしジョン・ボルトン元国連大使が指摘するように、新条約の査察はジョージ・ブッシュ・シニア大統領とボリス・エリツィン大統領の間で結ばれたSTARTⅡより緩やかなものである。帝政時代さながらのナショナリズムが高まる現在のロシアが、親欧米で自由な国だった当時のロシアよりも信頼できるとでもいうのだろうか?これは、シンポジウムで議論されるべき重要な論点であった。

私が投げかけた質問についても言及したい。一つは、西側民主主義諸国と専制諸国が衝突する現在の世界で、ロシアと中国を責任ある当事者とするにはどのようにすべきか、というものである。ゲスト・スピーカー達は、各国にはそれぞれ国家安全保障での優先事項がるので、核不拡散が必ずしも重要だと考えない国もある。典型的なものを挙げると、中国とロシアはイランと北朝鮮に関して西側と共通の懸念を抱いていない。そうした場合に我々がなすべきことは、ならず者の核拡散国家と経済関係を深めるようとする国には、それが自らの国益に反するのだと理解させるように導くことだとパネリスト達は語った。ダニエル・クリマン氏は危険な体制の国々への核不拡散を議論する際には、関係諸国それぞれの国益も重要だと付け加えた。クリマン氏は民主的なブラジルとトルコがイランと国際社会の間に立とうとした一例に言及した。

二つ目は日印原子力協定に関してであった。国民に広がる反核感情を考慮すれば、これは日本の外交政策の大転換である。向井和歌奈氏は、日本は外交政策を刷新したと言うよりも、インド亜大陸での核不拡散に対する態度を明確にしなかったのだと答えた。日本はアメリカのインド政策に追従し、核不拡散よりも財界の利益を優先したと述べた。しかし私はフランス、ドイツ、イギリス、カナダ、韓国も同じような観点から協定を結んだことに言及したい。ロシアさえも欧米諸国を手本にインドとの原子力協定に調印した。そうした「多国間の圧力」の下で日本に選択の余地があったのだろうか?

結論としてパネリスト達は軍縮こそが核なき世界への第一歩であり、圧倒的な通常兵力を持つアメリカにとってその実現こそ国益にかなうと主張する。パネリスト達は核不拡散と東アジアの安全保障に関して多くの貴重な問題を語った。参加者達は重要な問題提起をした。ここでシンポジウムの全てを書きつくせないことは残念である。最後に、保守派のスピーカーもこのイベントに招かれていればよかったと思っている。というのもフォーラムでの議論がややリベラルに感じられたからである。そうであれば、このシンポジウムは日米同盟と核兵器の理解により役立つものとなったであろう。

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