« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

2011年8月29日

フェイスブックでのアンケート:イスラム過激派と極右のどちらが危険か?

9・11同時多発テロ事件から10周年になる今年は、ノルウェーで凄惨な虐殺事件もありました。そこで私はフェイスブックで「イスラム過激派と極右のどちらが危険か?」というアンケートをとっています。このアンケートへの回答を歓迎します。

リンク先のページではコメントもできます。母集団が充分ではないので、ギャラップ世論調査のように統計をとることは重視していません。むしろ意見の交換の場となればと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月24日

日本の国防のためにも原子力エネルギーは必要である

福島原発事故によって菅直人首相が脱原発路線を宣言することになったが、日本の国防のためにも原子力技術の維持は必要である。私は日本の核兵器保有を主張しているわけではない。その代わりに通常弾頭を装着したトマホーク・ミサイル配備の攻撃型原子力潜水艦を保有すべきだと考えている。実際に日本政府2004年の防衛大綱の作成に際して、中国海軍拡張の圧力に鑑みて原子力潜水艦の保有を検討したことがある。菅氏のエネルギー政策は国防政策の選択肢を狭めてしまう。

トマホーク配備攻撃型原潜の利点を評価するために、日本周辺の安全保障について述べたい。現在の東アジアでは、中国と北朝鮮という二大脅威の台頭が日本の国防でますます重要課題となっている。中国は海軍力を急激に増強しているばかりか、接近拒否能力を向上させるための対空母ミサイルの他にJ20ステルス戦闘機の配備も進めている。北朝鮮はノドン、テポドンといった核弾道ミサイルの存在を誇示している。こうした地上に基地を置く脅威は、発射および離陸の前にトマホーク・ミサイルで叩いてしまえば無力化できる。日本の自衛隊はイージス艦による弾道ミサイル迎撃システムによる北朝鮮ミサイルの撃墜を模索している。しかし地上に留まっている標的を攻撃する方が、空中を高速で飛行する標的を攻撃するよりもはるかに容易である。また攻撃型原潜は空母と原潜を含めた中国海軍を封じ込めることができる。

日本がトマホーク原潜を保有するには、アメリカあるいはイギリスから輸入することになるだろう。その方が原子力潜水艦の自主開発よりもはるかに費用と時間をかけずに済む。対地攻撃に関しては、米英両国の海軍がコソボ、湾岸、イラク、アフガニスタン、リビアで多くの実戦を経験している。日本の防衛当局者達は両国から戦術上の教訓を学び、中国の対空母ミサイルと北朝鮮の弾道ミサイルを破壊するための最善の方策を研究することができる。原子力潜水艦の海戦の経験はフォークランド戦争だけである。英国海軍の原子力潜水艦『コンカラー』によるアルゼンチンの巡洋艦『ヘネラル・ベルグラノ』の撃沈が大変な成功を収めたので、この戦争でアルゼンチン海軍は動くに動けなくなった。これは日本の海上戦略に役立つ。石原慎太郎東京都知事や田母神俊雄退役空将に代表されるナショナリストの間では、日本の核武装を主張する声もある。しかし核兵器は広島と長崎から66年もの間、実戦で使われていない。日本にとっては通常弾頭を装着したトマホーク原潜を保有する方が、はるかに現実的で合理的である。

メディアと論客達の間では、日本はヨーロッパでのドイツとイタリアの脱原発エネルギー政策を見習うべきだとの声もある。しかし忘れてはならない!ドイツもイタリアも近隣に差し迫った脅威を抱えていない。ウラジーミル・プーチン氏の下のロシアでナショナリズムが再台頭しているとはいえ、東ヨーロッパのNATO新規加盟諸国が西ヨーロッパへの緩衝の役割を果たしている。また。ドイツもイタリアもイギリスとフランスのようなグローバルな軍事大国になろうという野心はない。よって原子力潜水艦も核兵器も独伊両国には不要である。日本では福島事故後のドイツとイタリアのエネルギー政策の転換を語る際に、両国がフランスから電力を輸入していることが議論にのぼるが、国防の側面も無視できない。

菅首相が福島後にクリーン・エネルギー政策を打ち出したことは間違いではない。しかし、オマバ政権が自らの選挙マニフェストの目玉でもあったグリーン・ニュー・ディールには、ほとんど何も手を着けていないことを見逃してはならない。環境産業には小規模で進取の気質に富む企業が多いので、労働集約的ないし資本集約的なあやり方には馴染まない。よってTVAのような大規模公共事業には向かない。再生可能エネルギーが原子力と火力に完全に取って代わるという考え方は、現時点ではSFである。何よりも太陽光、地熱、潮力、風力といったクリーンで再生可能なエネルギーで、どのようにしてトマホーク配備の潜水艦が作戦行動をとれるのだろうか?

現在のところ、原子力エネルギーとその代替に関する議論は経済にばかり目が向けられているが、国防の観点も忘れてはならない。一度でも原子力発電を廃止してしまえば、その技術と技能を再び利用しようにも膨大な時間を要してしまう。これは我々の国防政策の選択肢を狭めてしまうのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月14日

パネッタ国防長官が国防支出に関して初の記者会見

上記のビデオでは7月にロバート・ゲーツ氏から職務を引き継いだレオン・パネッタ国防長官が8月4日に初の記者会見を行ない、国防支出のさらなる削減を行なわぬように警告した。パネッタ氏はクリントン政権で行政予算局局長を歴任した経緯もあり、国防予算削減を後押しするものと思われていた。しかし、アフガニスタン、イラク、リビアでの戦争によってパネッタ氏も軍事予算の削減には慎重になっている(“Leon Panetta warns against Pentagon budget cuts”; San Francisco Chronicle; August 5, 2011)。

バラク・オバマ大統領が共和党と国債の上限について合意したので、次はどれだけの予算をどの分野で削減するかが問題となる。国防費も例外ではなく、ジョン・カイル上院議員を中心とした共和党議員たちは、2013年以降の10年間で5千億ドルを自動的に削減するという民主党の提案は、無責任で国防を本気で考えていないと非難している。来る大統領選挙を視野に入れた共和党は、国防費削減に対する批判を強めている。そうした中でパネッタ長官は就任後初の記者会見で自らの与党の方針に反対の意を示した(“Threatened Defense Cuts in Debt Deal Could Loom Over 2012 Race”; Bloomberg News; August 5, 2011)。またパネッタ氏は必要な財源の調達のため、増税と医療・社会保険を含めた他分野の歳出削減も求めた。きわめて注目すべきことに、2001年以降の国防費はイラクとアフガニスタンの戦費を除いても増加の一途をたどっている。パネッタ長官は国防費の急激な削減によって「我が国の安全保障、軍人達と彼らの家族、そして我が国を守るべき軍事力に甚大な被害をもたらすであろう」と述べた。軍人への福利厚生と兵器体系の高度化が国防費を押し上げていると見られている(“Defense Secretary Leon Panetta warns against more cuts in Pentagon budget”; Washington Post; August 5, 2011)。

しかし議会での論争は単なる民主・共和両党の鍔迫り合いではない。国防予算は共和党内でも論争を呼んでいる。ティー・パーティーに代表されるリバータリアンは減税を中心に議論を進めるのに対して、ネオコンは軍事力の強化を支持している。与野党間および党内での論争に鑑みて、ジョン・マケイン上院議員は租税優遇措置の削減を提案して国防費の削減の動きに先制攻撃を加えた(“Defense spending in Washington spotlight”; San Francisco Chronicle; August 7, 2011)。ともかく2012年の大統領選挙では経済が最重要課題になると見られ、それが国防予算の議論にも大きな影響を及ぼすであろう(“Will Obama be reelected? The economy could hold the answer”; Washington Post; August 6, 2011)。

パネッタ長官就任後初の記者会見の概要を述べたうえで、安全保障の専門家達の見解にも言及したい。両党が国債の上限に関して合意に達したので、アメリカン・エンタープライズ研究所のトマス・ドネリー常任フェローとゲーリー・シュミット常任研究員は、今や国防予算を議論すべき時だと主張する。国防に関して押しが弱いと軍部が疎外されてしまい、結局は次期選挙で保守の基盤を壊しかねない。また両者はティー・パーティーに代表されるリバータリアンに小さな政府と強力な国防のバランスをとるように訴え、「背後から主導する」ことを好むような大統領に国を委ねてはならないと説いている(“The (Raw) Deal on Defense”; Weekly Standard; August 3, 2011)。

さらに極左リベラルへの反論のために、私は外交問題評議会のマックス・ブート上級フェローの論文を強く推薦したい。ブート氏はこの論文でパネッタ氏への支持を明言し、小アメリカ主義の代表的な論客であるタイム誌のファリード・ザカリア総合監修に対して明解で力強い反論をしている(“Cutting Defense Spending Could Hasten America’s Decline as a World Power”; Commentary; August 4, 2011)。ザカリア氏が最近のコラムで国防費の大幅な削減を求めた(“Why defense spending should be cut”; Washington Post; August 4, 2011)のに対し、ブート氏は以下の観点からアメリカの軍事力の維持を訴えている。

アフガニスタンとイラクでの戦費を含めても国防費はGDPの5.1%に過ぎず、医療・社会保障費の8.1%および冷戦期の国防費の約7%よりも低い。さらに重要なことに、ブート氏はザカリア氏が軍人への福利厚生とハイテク兵器体系を無視して朝鮮戦争とアイゼンハワー政権期の国防支出との比較を行なっていることを批判している。すなわち、現在の国防費が上昇することは当然なのである。この論文で非常に重要な論点は、国防費の削減によって非軍事面での外交と開発援助が進展するわけではないということである。ブート氏は対外援助も歳出削減の圧力から逃れられないとザカリア氏を批判している。最後にブート氏は国防費の大幅な削減は「非常に難しくきわめて危険であろう」というレオン・パネッタ氏の発言を引用している。ファリード・ザカリア氏のような敗北的平和主義リベラルへの反論のためにも、上記のような議論を展開するこの論文を強く推薦したい。

この他にも注目すべき分析としては、ヘリテージ財団が作成した予算に関する図表がある。広く信じられている見方とは裏腹に、その図表によると国防費を除外しても総予算は大幅な上昇が見込まれている。すなわち、国防費を財政赤字増大の元凶だとする見方は全くの間違いだということである(“The Military Isn't the Problem”; Weekly Standard Blog; August 3, 2011)。以下の図を参照して欲しい。

Defensespendingentitlementspendingp

レオン・パネッタ国防長官が記者会見で述べたように、財政規律が求められる現状でのアメリカの国防は二つの重要な点を考慮すべきである。一つは安全保障に対する世界各地での挑戦に対処する能力を持つことで、そうした難題にはテロ、ならず者国家、新興の大国がある。もう一つは世界最強の軍事力という地位を守ることである。パネッタ長官は前任者のロバート・ゲーツ氏からの政策の一貫性を打ち出した。国防予算に関しては議会の合同委員会でさらに議論される。ここで何が行なわれるかが注目される。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月 2日

それでもイスラム過激派は極右より大きな脅威である

アンネシュ・ベーリング・ブレイビクがノルウェーで起した7・22殺戮事件は、あまりにも痛ましい。テロ対策というと世界の政策形成者達はイスラム過激派ばかりに気をとられているが、キリスト教徒やユダヤ教徒の極右も視野に入れよという主張はもっともである。しかし、私は安全保障の観点から見ると、キリスト教とユダヤ教の過激派や白人至上主義者といった極右よりもイスラム過激派の方がはるかに危険だと考えている。よってテロ対策がイスラム過激派を中心として練り上げられることは当然と思われる。もちろん、イスラム教徒への差別と偏見には断固として抗議しなければならない。

なぜイスラム過激派の脅威が極右より大きいのか?以下の点に言及したい。第一には組織の規模と国際性が挙げられる。アル・カイダ、ハッカーニ・ネットワーク、ラシュカレ・トイバなど、イスラム過激派の場合は組織が国際的で、しかもグラスルーツでの膨大な支持層の拡大を積極的に行なっている。欧米在住のイスラム教徒の若者へのリクルート活動は、その顕著な例である。また、イスラム過激派同士の相互のつながりもある。それに対して極右の場合は「我が国を守る」という視点から過激な愛国主義をマニフェストに掲げているために、国際的な連携はあまり見られない。アメリカのKKKやWAR、イギリスのナショナル・フロント、ドイツのネオ・ナチといった極右が国境を超えて連携することはほとんど見られない。組織の規模という問題で見逃せないのは、国家による支援である。イランがレバノンでヒズボラを支援していることは、非常によく知られている。その他にもイラク南部やアフガニスタンのテロリスト達もイランの支援を受けている。これに対して極右で国家の支援を受けているテロリストはほとんど皆無である。

第二にその国にとって敵か味方か、すなわちジョージ・W・ブッシュ前米大統領がイラク戦争前の演説で述べた”with us, or against us”という観点を忘れてはならない。イスラム過激派になら先進国の大都市での大規模破壊を躊躇しない。彼らにとって敵であれば一般市民の殺戮は当然で、さらに敵が誇る象徴的建造物は重要な破壊目標となる。9・11事件は、その最たるケースである。これに対し極右は自国至上主義なので、自分の国の大都市が他国に誇るような象徴的建造物を含めた大規模破壊を行なうことは考えにくい。ブレイビクの殺戮は痛ましいものだが、この事件でノルウェーの誇りとなるような建造物は何も破壊されていない。彼が殺したのは、彼自身が「自国の伝統を汚す」と見なした者だけである。すなわち、自国至上主義者達による味方への破壊行為には抑制がかかる。

第三には大量破壊兵器、特に核兵器の使用の脅威を挙げたい。これは第一および第二の問題点と相互に深く関わってくる。テロリストへの核不拡散は現在の安全保障では重要課題の一つである。かつてカーン・ネットワークは、イラン、北朝鮮、リビアの他にアル・カイダともつながりがあったと見られている。イスラム過激派はこうした国際ネットワークとの関係を持ちやすいが、極右勢力は自国至上主義の性質から「悪の枢軸」への仲間入りは困難である。万一、テロリストが核兵器を入手するとどうなるだろうか?イスラム過激派なら、その核兵器で都市そのものを破壊しても不思議ではない。これは9・11事件での大規模破壊から、充分に考えられることである。これに対し、極右の核兵器入手も危険ではあるが、イデオロギー的な観点からすれば彼らが自国の都市そのものを破壊する可能性は低い。

ここまで欧米の極右とイスラム過激派のどちらがより大きな脅威かを述べてきたが、日本の極右と極左についても同様な関係が当てはまる。皇国主義を掲げる極右が皇居や靖国神社と一緒に東京の街を破壊する可能性は低いが、極左が核兵器など大量破壊兵器を入手すればこれら象徴的建造物と一緒に街全体を破壊することも考えられる。実際に極左には北朝鮮による日本人拉致を幇助したという実績がある。やはり同じテロリストでもどちらがより大きな脅威かは、上記の三点から判定できる。

ここで欧米の極右とイスラム過激派の関係に立ち返ってみよう。上記三点に基づいて考えれば、前者は警察の対処で済む。これに対して後者に対する「テロとの戦い」では、世界最強の軍事力やギネス・ブック級の腕前を持つ狙撃兵が投入されている。やはりイスラム過激派の方が極右よりはるかに大きな脅威なのである。ブレイビク事件はあまりに痛ましく、イスラム教徒をはじめとしたマイノリティーへの偏見はなくされねばならない。この意見には強く同意する。しかし政策当局者が対テロ対策で極右よりイスラム過激派への対策を重視することは、何ら間違っていない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »