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2011年9月 3日

リビアの戦争が大西洋同盟に与える教訓

リビアでの戦争は成功を収め、死傷者も少なくて済んだ。以下の図表にある通り、この戦争はコソボ、イラク、アフガニスタンよりもはるかに小さく早く終わっている。しかしフィナンシャル・タイムズのジェームズ・ブリッツ編集員は、ヨーロッパとアメリカの政策形成者達が学ぶべき教訓を指摘している(“Defence: Lessons from Libya”; Financial Times; August 30, 2011)。

Libya_stat

まずNATOの結束の乱れがこの戦争の進展を遅らせ、旧体制がもはや崩壊したにもかかわらずカダフィ大佐の身柄は依然として発見されていない。イギリスとフランスがNATOの作戦を主導した一方で、スペインとトルコは地上戦への参加を拒否し、ドイツとポーランドは全ての作戦任務への参加を拒否した。アメリカのロバート・ゲーツ国防長官(当時)は今年6月のブリュッセル会議で、ヨーロッパ同盟諸国により積極的な国防への関与を要求した。きわめて皮肉なことに、アメリカはこの戦争を「背後から主導する」と決定し、英仏主導の多国籍軍を支援はしても戦闘への直接参加はしなかった。その結果、NATO軍にはムアマル・カダフィ打倒のための強固で一貫性のあるリーダーシップが存在しなかった。共和党の政治家と保守派の論客達が、そのようにアメリカを自己否定するかのようなオバマ政権の態度を批判していることは広く知られている。

介入の意志だけが問題ではない。ヨーロッパ諸国には、カダフィ体制のリビア程度の小さく弱い敵を破るために充分な規模の軍備がない。経済の悪化もあり、ヨーロッパの各国政府は小さく効率的な軍事力という考え方にとらわれている。しかしイギリスは戦略的防衛見直し(SDSR)で空軍が大幅に削減されたので、航空攻撃能力の深刻な不足に直面することになった。NATOによるカダフィ軍への空襲が行なわれていた時期に、サー・スティーブン・ダルトン空軍大将はキャメロン政権の国防計画では国際舞台でのイギリスの軍事的能力を持続できないと警告した(RAF chief Sir Stephen Dalton makes case for Britain's air power”; Guardian; 3 April 2011)。フランスはどうにかして、この戦争で空母シャルル・ド・ゴールが作戦行動できる状態を維持した。ヨーロッパの軍事力の規模は明らかに不充分なのである。

見逃してはならないことに、ブリッツ氏は地上戦の重要性を強調している。空襲だけでは最終的な勝利は保証されないのである。イギリス国防省のある高官は「この紛争で最も高く評価されるべきはカタールとアラブ首長国連邦である。両国は反乱軍に必要な訓練と兵器を提供し、武装蜂起を指導する役割まで担った」とさえ述べている。

リビアでの戦争は大西洋の両側の政策形成者達に教訓を与えている。ジェームズ・ブリッツ氏が述べるように、NATO内に軍事行動に消極的な加盟国があることで同盟の結束が損なわれている。最重要問題は軍備の規模と質である。現在、アメリカもヨーロッパも財政予算をどうするかで手一杯の状態である。しかし忘れてはならない。ロバート・ゲーツ前国防長官は、「私は長年にわたり、そして今でも国防予算がどれほど巨額でも一国の財政の懸念材料となることはないと信じている」そして「小規模な軍隊がどれほど優れていても、行動範囲は狭まり実行できることも少なくなる」と述べた。グローバル化が進んだ世界では、自由諸国の安全を守るためにも従来以上に対外介入が求められるようになる。アメリカとヨーロッパの指導者達と市民はリビアから数多くの重要な教訓を学ばねばならない。

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