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2011年12月31日

オバマ政権の混乱したF35戦闘機開発政策は同盟国にも悪影響を与えるか

統合打撃戦闘機(JSF)F35の開発は、研究費の高騰と国防予算の縮小で大幅に遅れている。また、これが多国籍プロジェクトのために、国際パートナーの多様な要求にも応えねばならない。F35はしかるべき時期に配備されるのだろうか?『ワシントン・ポスト』紙のウォルター・ピンカス記者はF35開発計画を進めるうえで直面するいくつかの困難について論じている(“F-35 production a troubling example of Pentagon spending”; Washington Post, December 27, 2011)。ピンカス氏が最近投稿した論説をふり返りたい。

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現時点では、この多目的戦闘機のテストは20%までしか進んでいない。この戦闘機には最先端のステルス技術が使われているが、機体を制御するソフトウェアの開発が開発チームにとって最も厄介な課題である。それによって研究費は初期の予測よりはるかに高くなった。その結果、ロバート・ゲーツ前国防長官は、F35戦闘機の生産を減らした。12月15日にはジョン・マケイン上院議員が、国防総省は技術的な問題への理解もなしにF35は費用対効果の高い第5世代戦闘機だと宣伝したと批判した。マケイン氏はそのような杜撰な計画は「災難の元凶」だとまで言った。

開発費の予期せぬ高騰とともに、国防費の削減が統合打撃戦闘機の開発計画に大きな障害となっている。計画当初は3,000機のF35戦闘機が生産され、アメリカの三軍と同盟国の軍の戦闘爆撃機と世代交代することになっていた。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は各軍や国ごとのそうした多様な要求を満たすよりも、統合打撃戦闘機の総数を削減して空軍版のF35Aに集中するとともに、海兵隊用のV/STOL版F35Bと海軍版のF35Cは計画破棄せよと提言している。シンプソン・バウエルズ債務削減委員会も同様な提言をしている。オハンロン氏はF35戦闘機の経過右派機および削減分は無人機を発注するようにと提案している。

問題は、中国の急速な軍拡とロシアの依然として侮りがたい空軍力を前にアメリカが空軍軍力の優位を持続できるかである。両国とも現在、ステルス戦闘機を開発中で、やがては反欧米の専制国家にそれらの戦闘機を輸出するだろう。ウォルター・ピンカス氏が、ソ連はかなり前に崩壊したというだけで、これらの脅威を軽く見るのはあまりに楽観的である。さらに多国間プロジェクトの性質上、上記のような計画破棄が実施されれば同盟国に自国の子君傍系核の変更を強要することにもなりかねない。V/STOL版が破棄されれば、イタリアとスペインは現在のハリアーに代わる空母艦載機を失ってしまう。この計画で第二位の出資国であるイギリスも、F35Cが入手できないとなるとCVF(次期空母)計画を練り直さねばならなくなる。日本は次期戦闘機にF35を選定したが、甚だしい遅延によってイギリスの政策形成者達が現行案を再検討する可能性もあるので、クイーン・エリザベス級空母の計画から目を離すべきではない。F35をめぐる現在の不首尾によって、大西洋と太平洋でのアメリカの最重要同盟国の国防に支障をきたすことになる。

確かに、ぺンタゴンの計画は杜撰で、それが新型ステルス戦闘機の価格を予想外に押し上げたと言える。しかしオバマ政権がアメリカと同盟国の防衛に確固たる関与をするのかも問わねばならない。アメリカの国益に適うのは、アジア回帰よりも世界秩序を維持するだけの充分な軍事力の維持である。中国への備えを強化することは正しいが、この国の拡張主義は東アジアだけでなく西方にも向いている。中国は中央アジアと中東でも影響力の拡大を望んでいる。アジア回帰などは、イランが好戦性を強めアラブ諸国がかつてない政治変動の最中にある地域に力の真空を作り出すだけである。アメリカは多様な事態に対処できるだけの装備を備えねばならない。この問題はアメリカの主力兵器に関わるので、共和党の大統領候補達は来る選挙でバラク・オバマ大統領に挑戦するうえでも、この重要政策課題を多いに語って欲しい。

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2011年12月22日

ウイグル活動家の忘年会に参加

去る12月17日、ウイグル独立活動家のトゥール・ムハメット氏が主催する忘年会に呼ばれました。ムハメット氏は中国共産党が新疆すなわち東トルキスタンで少数民族を弾圧したために、日本で亡命生活を送っています。同氏は日本でもトップ・レベルに入る九州大学で農業技術の博士号を取得しています。現在は、中央アジア研究所の代表を務め、『中国民族問題研究』をはじめとした日本のジャーナルの他、プラウド・ジャパン・ネットワークにも投稿しています。ムハメット氏はしばしば、中国の脅威の増大に多いに危機感を抱く日本の保守派とともに街頭活動にも参加しています。

私がムハメット氏と知り合ったのは、ツイッターフェイスブックを通じてです。特に、当ブログで中国の程永華駐日大使の講演に関する記事を掲載してから、ムハメット氏と私の間柄は近くなってゆきました。その記事ではムハメット氏のウイグル解放活動に言及し、その内容を日本国際フォーラム『百花斉放』およびプラウド・ジャパン・ネットワークにも寄稿しました。そうした投稿が、我ら日本国民の間で東トルキスタンでの中国の抑圧に関する意識を高めるうえで、幾分でも役立てばと願っています。

忘年会そのものは政治色など全くありませんでした。会が開かれたのは、パムッカレ新宿というトルコ料理店です。参加者はトルコ料理、ベリー・ダンス・ショー、そして会話を楽しみました。出された料理とショーは素晴らしく、何かのイベントを行なうには、このレストランはお薦めです。

参加者はウイグル人、日本人、トルコ人でした。参加者の中には、はじめは私をウイグル人だと思った人もいたようです。ウイグル語とトルコ語は厳密には別の言語なので、私はウイグル人とトルコ人が何の不自由もなくお互いの母国語で会話をする様子には驚きました。私がこれまで何度も述べてきたように、中国の脅威はアジア太平洋地域にとどまらず、西方への拡張主義にも注意が必要です。ユーラシアの東西の安全保障は相互に深く関わり合っているものだと実感しました。

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2011年12月20日

キム・ジョンイル後の北朝鮮

北朝鮮の最高指導者キム・ジョンイルは12月17日に突然死去し、三男のキム・ジョンウンが後継者となる見通しである。世界の専門家の殆どが、ジョンウンでは国家の統治にはあまりにも若く経験不足なので、権力基盤の確立に時間がかかると見ている。 

しかしブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ北東アジア政策研究センター所長は、「可能性が低いとは言え、ジョンウンを支える集団指導体制がキム・ジョンイル政権の失敗を見直し、真の改革に乗り出すことを頭から否定してはならない」と論評している(“Kim Jong-un’s Shaky Hold on Power in North Korea”; Daily Beast; December 19, 2011)。 さらにアメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・マッツァ上級研究員は、オバマ政権は北朝鮮の非核化で大きな進展を遂げるためにも、この機を逃してはならないと主張する(“President Obama’s ‘wait-and-see approach’ to North Korea?”; Enterprise Blog; December 19, 2011)。

現在、ピョンヤンのウラン濃縮計画の凍結が急務である。北朝鮮は4から8個の核爆弾を製造できるだけのプルトニウムを保有している。北朝鮮核開発の第二段階は、今週の核交渉で止めねばならない(“Exploiting Kim's death”; Chicago Tribune; December 20, 2011)。

アメリカが「背後から主導する」など言語道断で、北朝鮮の予測不能な変化に対処するためにも日本と韓国との緊密な関係の必要性はこれまでになく高まるであろう。さらに、中国がピョンヤンに決定的な影響力を行使できるという考えは改めねばならない。北朝鮮の政治過程は国際社会から見て非常に不透明で孤立しているからである。

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2011年12月16日

接近拒否ミサイルのグローバルな拡散に対処せよ!

中国の海軍力と接近拒否能力の急激な拡大は、近年になって西側の政策形成者達の間で多いに注目されている。接近拒否能力は一見すると防衛的だが、一般に思われているよりも攻撃的である。それは西側の艦隊を破壊するミサイルを配備するという無言のモンロー・ドクトリンである。専門家達は中国にばかり目を向けているが、ディプロマット・マガジンは最近の記事で「接近拒否能力を強化する専制国家が次々に現れ、自国近海での西側海軍の優位に挑戦するともに自分達が勢力範囲と見なす海域での支配権の確立を目指している」と述べている。よって西側の政策形成者達は対艦巡航ミサイルの拡散を阻止し、こうした国々の接近拒否能力を無力化する戦略を模索しなければならない(“Anti-Access Goes Global”; Diplomat Magazine; December 2, 2011)。

中国の接近拒否能力に関しては、アメリカ海軍大学のアンドリュー・エリクソン準教授が2011年9月8日に海軍大学博物館で「中国の航空宇宙戦力:海洋での役割の進化」と題する講演を行なった際に「それらのミサイルによってアメリカ軍は物理的に不利な立場になってしまう」と論じている。以下のビデオを参照して欲しい。

中国の他には、イラン、シリア、北朝鮮といった専制国家が接近拒否ミサイルの配備に熱心である。その中では、北朝鮮のミサイルは旧ソ連製のものを転用したものなので、さほどの脅威にはならない。イランとシリアの脅威はより重大である。両国ともロシアと中国から接近拒否ミサイルを輸入している。イランは核開発とテロ支援で国際社会に致命的な脅威を突きつけているにもかかわらず、中国は先端技術の対艦巡航ミサイルをイランに輸出し、そうしたミサイルを製造する工場を現地に建設までしている(“Inside the Ring --- China-Iran Missile Sales”; Washington Times; November 2, 2011)。今年の夏に、イランは戦略要衝のホルムズ海峡付近でトンダー地対艦ミサイルの実験を行なった。イスラム革命防衛隊は、このミサイルの速度はマッハ3、射程距離は300kmになると宣伝している(“Iran Fires Anti-Ship Missiles near Key Gulf Strait”; Defense News; 6 July, 2011)。こうしたミサイルの製造には、中国がイランに先端技術を供与した可能性が高い。だからこそ中国の脅威がアジア太平洋地域にとどまらないと、これまでに何度も述べてきた。さらにロバート・ゲーツ前国防長官は退任を目前にした5月24日のアメリカン・エンタープライズ研究所での講演で、非国家アクターの中にはヒズボラのように主権国家より高性能の対艦ミサイルを保有する組織もあると述べた。

ミサイル技術に関して、ディプロマット・マガジンのハリー・カジアニス編集助手は「そのように技術は目新しいものではないが、それらの兵器の有効射程距離は飛躍的に伸び、命中度、飛行速度、運用性も向上している。そうした兵器からいかにして艦船を守るかが軍事戦略家にとって大きな課題となっている」と論評している。中国は現在、射程距離射程距離が1,500から2,700kmになる対艦ミサイルを保有していると見られており、それは西側の空母艦載戦闘機の作戦行動半径を上回っている。技術的に言えば、西側海軍はフォークランド戦争から実戦の教訓を学べるかも知れない。イギリス海軍はアルゼンチンが発射するフランス製のエグゾセ対艦ミサイルの射程内で戦った。問題は戦争遂行の能力だけでなく心理的な側面もある。海軍艦艇がよりハイテク装備になるにおよんで、戦闘による艦艇損失のコストは跳ね上がった。そのために西側海軍はより慎重にならざるを得ない。よって専制国家による無言のモンロー・ドクトリンの脅威はきわめて大きい。

ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は、自らの著書”Dangerous Nation”でモンロー・ドクトリンは防御より攻勢の性質が強いと何度も述べ、西半球におけるアメリカの拡張を正当化するものだとしている。京都大学の中西輝政教授は自らの著書「大英帝国衰亡史」でさらに辛辣に論評している。19世紀末まで、イギリスの指導者層にとってモンロー・ドクトリンはあまりにヤンキー的でとても受け入れようがないほど珍奇なものであったと中西氏は記す。ドイツの台頭がイギリスの覇権を脅かすようになって初めて、ソールズベリ侯爵はそれを受け入れるにいたった。ソールズベリ卿はあの有名な日英同盟を成立させた首相であり、ビクトリア朝時代以後の国際的な力のバランスの変化に対応していった。歴史は専制諸国家が好き放題に無言のモンロー・ドクトリンを振りかざすようになることがどれほど危険かを示唆している。よって、こうした国々の接近拒否能力を無力化する戦略を模索することが差し迫った重要性を持つようになり、そうして世界中の我々のシーレーンを守らねばならない。原子力潜水艦から対艦ミサイル基地へのトマホーク・ミサイル攻撃も、そうした戦略の一つである。中国とその他の専制諸国が「海洋を占拠する」ような事態を許してはならない。

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2011年12月10日

アクト・フォー・イスラエルよりのメール:反ユダヤ主義に抗議を

アクト・フォー・イスラエルというアメリカのユダヤ系市民団体が、12月7日にメーリング・リストよりアメリカのハワード・ガットマン駐ベルギー大使の問題発言を伝えてきました。ガットマン大使はイスラム教徒の間で反ユダヤ主義が広まるのはイスラエルの過剰防衛によるものだと述べ、ヨーロッパには「古い」反ユダヤ主義はもはや存在しないと主張しました。

こうした侮辱と人種差別に満ちた発言への抗議として、以下のメッセージをこちらのリンク先に添付し、ヒラリー・クリントン国務長官に送信して下さい。皆様のご協力を宜しくお願いいたします。

Dear Secretary Clinton,

I am writing to you today to express my dismay at Ambassador Gutman’s recent remarks legitimizing Muslim anti-Semitism and minimizing all other forms of anti-Semitism. It is wholly unbefitting of a representative of the US government to express such ill-conceived and erroneous views in an official setting.

Racism, including anti-Semitism, is never the fault of the person being discriminated against and always an indication of the immorality of those who are discriminating. It is troubling that Amb. Gutman, as an official representative of the US Government and your prestigious and good intentioned State Department, fails to understand this basic truth and uses his position to promote his misguided views.

In order to maintain the prestige of the State Department which you have successfully lead and to maintain American principles of tolerance and goodwill it is essential that you work to ensure that Amb. Gutman’s can no longer make use of the State Department’s good name to espouse hurtful messages. It is not in America’s interests to have an ambassador with such premature notions of racism and demand that you immediately remove Amb. Gutman from his post.

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