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2012年8月31日

オバマ政権のアジア・シフト政策は日本の国益に反する

オバマ政権が外交政策の重点をイラクとアフガニスタンからアジア太平洋地域に移すと表明した際に、日本国民は急速に軍事力を増大する中国への懸念からそれを大歓迎した。しかしそれはあまりにナイーブなように思える。政治家やオピニオン・リーダをも含めた日本国民に広く行き渡っている見方とは逆に、私はオバマ政権によるアジア重点化政策は以下の三点から日本の国益に反すると信じている。アジア重点化政策は軍事的プレゼンスの移動ではなく、米軍自体の大幅な縮小を誤魔化すものである。また、この政策は単にアメリカ外交の地理的な重点にとどまらず、成熟した自由民主主義国から体制の如何を問わず新興経済諸国の優先度が高まることをも意味する。最後にアジア化したアメリカがもたらす予測不能なストレスは、日本の政策形成者達にとってアングロ・サクソンを基盤としたアメリカよりもはるかに難しい相手となるであろう。

まず軍事力の縮小について述べたい。当ブログの以前の記事ではアメリカン・エンタープライズ研究所のマッケンジー・イーグレン常任フェローの論文を引用し、アジア重点化政策が軍事戦略的には中身がないと論じた。アジアへの関与の強化を唱えてはいるものの、国防費の大幅な削減によって海軍と空軍を中心に米軍自体は急激縮小されることとなった。オバマ政権はソフトウェアの向上を強調しているが、中国の急速な軍拡に対抗するには充分な量のハードウェアがなければ意味がない。オバマ政権の戦略は、アジア重点化政策がASBC(エア・シー・バトル・コンセプト)の重視も意味するという国際戦略研究所の分析とは全く矛盾するものとなっている(“New US military concept marks pivot to sea and air”; IISS Strategic Comment; May 2012)。

確かに中国の海空軍力強化によって米軍の人員装備はアジアに移転することになった。しかし国防予算削減が中国のA2ADに対するアメリカの対抗能力の強化には大きな制約となっている。外交政策イニシアチブのロバート・ザラテ部長はレオン・パネッタ国防長官がテレビ・インタビューで国防予算の差し押さえがアメリカの国防に致命的な制約となっていると認めた(“Secretary of Defense Leon E. Panetta and ABC News Jake Tapper”; Defense Department News; May 27, 2012)ことに対し、それによってアジアでの軍事バランスを保とうというアメリカの戦略が空洞化しかねないという深刻な懸念を述べている。さらに民主党のハリー・リード上院議員による「差し押さえは苦い薬ではあるが、赤字削減のために痛みと責任を分かち合うためにはバランスのとれた方策である」という発言を批判している。それにも増して問題なのは、同盟国も敵対国もアメリカにはアジアで大国にとどまり続ける能力と意志があるのかを疑い始めた時期に中国の台頭が認識されるようになったことである(“An Off-Balance Pivot to Asia?”; FPI Bulletin; June 4, 2012)。

ザラテ氏が最後に言及した点はオバマ政権の外交政策の根本的な問題と深く関わっている。共和党の単独行動主義とアメリカ例外主義へのアンチテーゼとして登場したバラク・オバマ氏は、就任直後にプラハとカイロでこれまでのアメリカ外交に謝罪姿勢で宥和的な演説を行なった。それはまるでオバマ氏が超大国としてのアメリカの地位には必ずしも固執していないかのように思われた。こうした観点から、軍事戦略としては意味をなさないアジア重点化政策の真の意味を考え直すことが必要である。

アジア太平洋地域の諸国民は、あまりにもナイーブにアメリカの戦略上の重点の地理的な移転に目を奪われがちである。しかしイギリス労働党の外交戦略家であるマーク・レナード氏が最近の論文(“The End of Affair”; Foreign Policy; July 24, 2012)で述べたように、自由民主主義国よりも新興経済諸国とのパートナーシップを重視するようになっているという側面も見落としてはならない。アジア重視の基本的な考え方を理解するうえで、その先駆けとなったヒラリー・クリントン国務長官の論文を読み返す必要がある(“America’s Pacific Century”; Foreign Policy; October-November 2011)。確かにクリントン長官はアメリカの外交政策の重点をイラクとアフガニスタンからアジアに移すべきだと述べている。しかしイラクとアフガニスタンでの、戦争は市場のためではなくテロリストと核の脅威を振りかざそうという非道な国家を打倒するためのものである。私がこのことを強調するのはクリントン長官がアジア重視を掲げた論文があまりにも「市場志向」だからである。

クリントン長官の論文の前提は「アジアの成長と活力を取り込むことがアメリカの経済的かつ戦略的な利益であり、オバマ大統領にとっての重要な優先案件である」ということである。他方で長官の論文では「我が国はヨーロッパとのパートナーシップと彼らの貢献を誇りに思っている。我が国が現在なすべきは、大西洋地域と同様に太平洋地域でも持続的でアメリカの国益とも合致するパートナーシップと制度を構築することである。」と記されている。クリントン長官の論文ではアメリカは太平洋国家であるとともに大西洋国家であると述べられているが、全体的な語調は太平洋、より率直に言えば新興経済諸国に傾いている。さらに憂慮すべきは超大国としてのアメリカの役割に「餞別状」とも思えるような記載が見られ、「2000年代のアメリカ外交は冷戦終結による平和から一転してイラクとアフガニスタンでの戦争に明け暮れた。両戦争が縮小される中で、我が国は新しい世界の現状に合わせて重点地域を移転する取り組みを加速する必要がある。」と述べられている。世界の現状はそれほど変わったのだろうか?ロシアと中国を相手にした新冷戦が起こり、イラクとアフガニスタンは依然として西側の関与によってテロリストや過激派と戦い続けねばならない。

クリントン長官はアジアでの経済的な機会について紙面の多くを割いているが、安全保障での最重要課題は中国の軍事的台頭にどのように対処するかである。長官は地域レベルあるいは世界レベルでの中国の野心を封じ込めるよりも、北京政府の抑圧性の強い体制が抱える政治的なリスクを承知で対話と市場機会を重視している。日米同盟を地域の平和と安定の中軸だとしながら、中国と北朝鮮の脅威を抑える戦略については殆ど言及がない。これは韓国、オーストラリア、フィリピン、タイなどアジア太平洋地域の他の同盟国についても同様である。

これまで述べてきた論点が、地域への関与を強化すると言いながらそのために必要な軍事力は縮小するというオバマ政権のアジア戦略の矛盾を理解する鍵となるであろう。オバマ政権は中国やその他の戦略的敵対国との地政学的な競合に考慮を払っているかも知れないが、場合によってはこうした勢力との妥協どころか宥和さえいとわないであろう。尖閣諸島をめぐる衝突は典型的な事例である。事件発生当初の国務省は、中国による圧力は日米安全保障条約に基づいて日本への攻撃と見なすと表明した(“U.S. says Senkaku Islands fall within scope of Japan-U.S. security treaty”; Kyodo News; July 10, 2012)。しかしフィリップ・クローリー次席報道官は尖閣諸島が日本の実効支配下にある限り安保条約が適用されるが、領土の主権に関してアメリカは中立の立場を保つと述べた(“Daily Press Briefings”; Department of State; August 16, 2012)。さらにビクトリア・ヌーランド国務省報道官は尖閣諸島の主権については日中両国が二国間交渉を行うようにと促した(“U.S. asks Japan, China to solve island dispute”; Daily Yomiuri; August 22, 2012)。2010年の衝突の際にリチャード・アーミテージ元国務副長官がアジアのシーレーンに対する中国の野望を挫くために日米合同の軍事演習さえ提案したことに鑑みれば、これは大きな後退である。

アジア重視の背景としては、マーク・レナード氏が先の論文で述べたアメリカのアジア化も見逃せない。広く行き渡っている味方とは真っ向から対立するが、これは日本の国益を損なうものである。私はいかなる人種差別も自民族中心主義も支持はしないが、この問題をポリティカリー・インコレクトで冷徹なリアリストの視点から議論する必要がある。アメリカ政治でアジア系の声が高まれば「反日」的な運動の影響力が強まる。その典型的な事例はマイク・ホンダ下院議員による慰安婦問題の決議案である。よく知られているように、日本にとって先の大戦をめぐる歴史認識は中国および韓国との関係で一歩間違うと厄介な問題である。アジア化したアメリカでは中国系および韓国系のロビー活動が一層活発になるであろう。


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最近の研究によるとアメリカの人口に占めるアジア系の割合は増加している。上記の図表に見られるように、中国系およびその他のアジア系の人口は日系アメリカ人の人口を大きく上回っている(“The Rise of Asian Americans”; Pew Social & Demographic Trends; June 19, 2012)。さらに重要なことに日系アメリカ人は戦中の強制収容の経験から日本との連携には消極的なのに対し、中国系と他のアジア系は祖国のためのロビー活動に熱心である。実際にホンダ下院議員は日系よりもアジア系の利益のために活動している。ホンダ氏が選出されたカリフォルニア第15選挙区は全米でもトップ10に入る所得水準の高い選挙区だが、その中ではマイノリティーの有権者数が多数を占める唯一の選挙区である。アジア系の有権者は全体の29.2%を占める。ウィキペディア日本語版によると、産経新聞の古森義久氏をはじめとするメディアがホンダ氏のファンドレイジングは中国系と韓国系に多いに依存していると報じている。最近の中国および韓国との領土保有をめぐる衝突、そして慰安婦問題をめぐる韓国との対立(“In New Jersey, Memorial for ‘Comfort Women’ Deepens Old Animosity”; New York Times; May 18, 2012)を見れば、アメリカでアジア系ロビーの影響力が増大すればするほど日本の国益が損なわれるであろう。

日本人の中には中国恐怖症にとらわれるあまりにアジア・シフト戦略の深い内幕を何も考えることもなく、純朴にそれを歓迎する向きもある。しかしながら我々日本人はマーク・レナード氏が述べたようなヨーロッパ人の懸念を共有すべき立場にある。新興経済諸国へのシフトとアメリカ社会のアジア化は日本にとって深刻な問題である。また、新たに台頭する挑戦国や敵対国の危険な野望を阻止できるのは地域別の優先順位を示す文言ではなく、アメリカの真の強さと超大国の役割を貫徹する意志である。アメリ力の世界戦略がケネディー・マクミランおよびレーガン・サッチャーというコンビに代表されるアングロ・サクソン同盟に基づいていた時期は、日本にとってどれほど素晴らしかっただろうか。そうした観点からすれば日本に対する不適切な発言があったものの、ミット・ロムニー氏の方がバラク・オバマ氏よりも日本の国益にとって好ましいと考えている。ヨーロッパ人の不安に強く同意する日本人として、私は間違っても軍事力の裏づけもなく中味もないオバマ政権のアジア・シフト戦略を平伏礼賛しようとは思わない。

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2012年8月19日

パワー・シフト時代におけるアメリカとヨーロッパの同盟再強化の課題

オバマ政権の登場によって、イラク戦争以来のアメリカとヨーロッパの埋めがたい分裂は癒されると期待された。ブッシュ政権のカウボーイ外交に嫌悪感を抱いたヨーロッパ人にとって、バラク・オバマ氏は待ち焦がれた救世主であった。ノルウェーのノーベル平和賞委員会はオバマ氏が大統領に選出される以前に授賞を決定していた。しかしオバマ氏の下でアメリカとヨーロッパの関係が改善し、大西洋同盟は強化されたのだろうか?皮肉にもオバマ氏は大西洋同盟の深化にそれほど熱心ではない。オバマ氏は従来からの同盟国よりも新興諸国の方を重視している。オバマ氏にとって、パワー・シフトの時代の国際問題に対処するうえで米欧同盟こそが世界の平和と自由民主主義の礎であるというわけでもないようだ。

オバマ外交がヨーロッパ人をどれほど幻滅させたのだろうか?ブレア政権の政策顧問であったマーク・レナード氏はオバマ氏の大西洋外交が抱えるパラドックスを論じている(“The End of Affair”; Foreign Policy; July 24, 2012)。2008年の大統領選挙の際にオバマ氏がベルリンを訪れた時には、アメリカに多国間外交重視、平和志向、福祉重視、しかも雄弁な指導者が登場したことにヨーロッパ人の圧倒的大多数が喜び勇んだ。ジョージ・W・ブッシュ氏のカウボーイ外交とアメリカ特別主義は、ヨーロッパの指導者と市民に嫌悪感を抱かせた。一見するとアメリカとヨーロッパはイランとシリアをめぐって良好な協力関係にある。イラク戦争をめぐっての分裂は収まったかのように見える。しかし表面的な印象とは裏腹に、オバマ政権の下ではパワー・シフトへの認識が高まっているうえに大統領自身のパーソナリティーもあって、大西洋同盟の結束は弱まっている。

アメリカ側から見ると、オバマ政権は西側同盟の強化よりも中国、インド、ブラジルといった新興諸国とのパートナーシップ構築を重視している。オバマ氏は国際機関においてヨーロッパ諸国が実態以上に決定権を持ち過ぎていると見なし、これが多国間外交でアメリカの国益を損ねていると考えている。これはレナード氏が引用したウォルター・ラッセル・ミード氏の「かつてのヨーロッパ列強からアジアの新興諸国に力を再分配するというやり方でアジア諸国を支援し、世界の力の構造を是正する方がアメリカの国益にかなうと思われる」という発言に顕著に示されている。オバマ政権の視点からすれば価値観の共有などアメリカにとってこれまでほどの重要性はないので、ヨーロッパが中国、ロシア、アジア新興諸国よりも圧倒的に優位な地位にあるとは言えなくなっている。

政治的な側面以外にも問題はある。レナード氏は、オバマ氏は出自からいってヨーロッパよりもアジアおよびアフリカ志向であると述べている。確かにオバマ氏はケニア人を父親に持ち、少年時代をインドネシアで過ごしている。しかし一国の指導者にとって自らの政策が、人種、民族、階級、その他の出自に影響を受けているとの印象を抱かれることは大失態であると私は考えている。またオバマ氏のビジネスライクな態度もこれまでのアメリカ大統領のようにヨーロッパ諸国の指導者達との個人的な友好を深めることを阻んでいる。レナード氏以外からもこうした指摘は挙がっている。リチャード・アーミテージ元国務副長官は、バラク・オバマ氏はジョージ・W・ブッシュ氏のような人間味に欠けるために外国の指導者達との人間関係を築きにくいと語っている。

ヨーロッパ側にも問題はある。ヨーロッパは世界運営の責任をアメリカと分け合うことに消極的であり続けた。これは防衛において顕著である。ヨーロッパの軍事支出は世界の21%を占め、中国、ロシア、その他新興諸国よりもはるかに多い。しかしヨーロッパは自らの政治、経済、軍事での力をグローバルな部隊で積極的に活用しようとしない。ヨーロッパ諸国にはアメリカという保安官に安全保障の責任を丸投げしている。非常に重要なことに、イギリス労働党の論客マーク・レナード氏が主張する問題点は、アメリカのネオコンサーバティブの論客ロバート・ケーガン氏が主張するものとほとんど同じである。現在のヨーロッパは指導者のほとんどがユーロ危機に気をとられている状況で、内向きの傾向を強めている。今年の夏に開催されたNATOシカゴ首脳会議では、上記のように低調な大西洋同盟が印象づけられた。

これはヨーロッパ大西洋圏だけの問題ではない。例えば日本の指導者達は中国への恐怖心からあまりにナイーブにオバマ政権のアジア重視を歓迎している。西洋から東洋へのパワー・シフトという地理的な側面を超えて、アジア重視政策の真の意味を考えようとする気配はほとんど見られない。オバマ政権がアジアへのシフトを強めるということは、パートナーシップの優先順位が従来からの民主的な同盟国から、体制の如何を問わず新興諸国にシフトすることをも意味している。よって米欧関係の停滞は日本の国益を害しかねないのである。

その根底にある問題はオバマ政権の外交政策の前提がアメリカの衰退を不可避としていることで、そのために中国との「G2」パートナーシップなるものを受け入れる、ロシアとのリセットでプーチン氏でなくメドベージェフ氏を窓口とする、イランのグリーン運動への支援を控えるなどの戦略上の誤りを犯すことになった(“The 'Obamians' and the truth about American decline”; Shadow Government; July 24, 2012)。アジア回帰も深刻な問題である。オバマ政権の計画では、アメリカは特に海軍と空軍を縮小した状態の削減された軍事力でアジアにシフトをすることになる(“Obama’s defense ‘pivot’ masks shrinkage”; Politico; July 22, 2012)。

これまで述べた観点から、ミット・ロムニー氏がイギリス、イスラエル、ポーランドを訪問したことは注目に値する。それはオバマ政権がこれら主要同盟国との戦略的関係を弱体化させたからである。この海外歴訪を前に、保守派のメディアはロムニー氏が外交に力を入れていることを示す絶好の機会だと訴えた。イギリスではデービッド・キャメロン首相とトニー・ブレア氏とは中東および世界の安全保障に関して議論し、またイスラエルではパレスチナ問題について、ポーランドではミサイル防衛についてオバマ政権の姿勢に反論するなど予定が目白押しであった(“Romney uses trip to stress foreign policy”; Washington Times; July 25, 2012)。これら3国への歴訪が成功裡に終われば、オバマ政権が弱体化させた西側民主国家同盟の礎が再強化されたはずである。訪英直前のロムニー氏は、英米特別関係には左翼的な冷淡さで臨みながらアメリカの敵国や競合相手国に宥和姿勢をとるオバマ政権を批判した(“Mitt Romney would restore 'Anglo-Saxon' relations between Britain and America”; Daily Telegraph; 24 July, 2012)。

しかしロムニー氏はほどなくして外交政策には経験も知識も不足しているという馬脚を現してしまった。イギリスではロンドン・オリンピックの準備の進み具合への疑念を口にして滞在先の国民から反感をかった。さらにエド・ミリバンド労働党党首の名前を思い出せないという失態も演じた(“Romney in Britain: Diplomatic Offensive”; Economist blog --- Blighty; July 27, 2012)。またロムニー氏が「我が国は日本ではない」といった問題発言をした際には、日本国民と日米同盟の強化を訴えるジャパン・ウォッチャーから懸念の声が挙がった(“Romney's Japan remark raises eyebrows”; Cable; August 10, 2012)。

そのような失態がありながら、ミット・ロムニー氏はコンドリーザ・ライス元国務長官やデービッド・ペトレイアス陸軍大将のような重鎮を差し置いてポール・ライアン下院議員を副大統領候補に選んだ。予算問題に通じるライアン氏はサラ・ペイリン氏よりはるかに優秀ではあろうが、ロムニー氏と同様にライアン氏も外交政策でのバックグラウンドは充分ではない。歴史的に見て、外交政策に強いバックグラウンドがない大統領候補は自らの弱点を補完できる副大統領候補を選んだ。ロムニー氏がライアン氏を選出したことは、外交政策を選挙の主要争点とは見ていないのだと解釈されかねない(“With Ryan pick, Romney would send a message: This is not a foreign-policy election”; Passport; August 11, 2012)。

オバマ氏は自由民主主義諸国との関係の深化よりもむしろ、体制の如何を問わず新興諸国とのパートナーシップ強化に政策をシフトしつつある。大西洋同盟の弱体化は世界の安全保障のためにならない。ロムニー氏は世界の平和と自由民主主義の礎の再強化への意欲を示したが、自らの失言によって外交でのバックグラウンドの不充分さを露呈させてしまった。アメリカとヨーロッパの同盟は世界の自由、繁栄、文明の推進に最も重要な役割を担ってきた。専制諸国家の台頭に鑑みてアメリカとヨーロッパは再び結束を強める必要がある。現時点では政権与党の民主党も野党の共和党もこの問題に関する認識が不充分である。シカゴの停滞から大西洋同盟を再強化できる人物はいるのだろうか?

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