フリーダム・ハウスの情勢分析:民主主義の前進と後退
今回は前回の補足で、フリーダム・ハウスのレポートについて手短に述べたい。アラブの春によってチュニジア、エジプト、リビアの民主化は前進した。また、アジアでも最もおぞましき圧政国家のミャンマーで、政治に関する公開討論やメディア報道への規制が緩和されたことは注目に値する。タイも昨年7月の自由で公正な選挙によって民主化が進展した。
しかし中東では多くの国でアラブの春への反動も見られた。バーレーン、レバノン、シリア、UAE、イエメンでは市民運動に暴力的な弾圧がなされた。サウジアラビアでは公共の場での演説とメディア報道への規制が強まった。アジアでは中国がインターネットへの検閲を強め、自由を求める数多くの活動家が逮捕された。
我々の思いもよらぬ事例にももっと注目すべきである。アフリカではエチオピア政府がテロ対策立法措置を濫用し、政府に批判的な精力を弾圧している。シリアのアサド政権がこうした論理を利用して自由を求めて立ち上がる人々を殺戮しているので、この事例は見過ごせない。ラテン・アメリカではアメリカの主権下にあるプエルトリコが警察の暴力的な姿勢によって評価を下げている。驚くべきことに、共産主義体制崩壊後のヨーロッパではハンガリーで市民の自由が後退している。この国が民主主義と市場系税への移行で模範と見なされたことに鑑みれば由々しき事態である。
フリーダム・ハウスの報告書に記された情勢は、日米欧をはじめとした主要先進民主主義国の外交政策の指針となるであろう。民主化の進展ではどの国が評価を高めどの国が強化を低めたか、こちらのリンクを参照されたい。
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