アメリカの国防と予算をめぐる抗争の序論
来る財政の崖に鑑みて、アメリカが世界の警察官の役割を果たすうえで予算と国防の問題がきわめてきびしいものになっている。世界各地の多くの国がアメリカの覇権下の自由主義世界秩序の中に存在している。国防と予算の問題については後の投稿で議論するとして、有益な参考論文に言及したい。
アメリカの軍事支出は過剰なのだろうか?アメリカン・エンタープライズ研究所、外向政策イニシアチブ、ヘリテージ財団が共同で運営する「国防を防衛するプロジェクト」は『国防支出入門』(Defense Spending 101)と題するガイドブックを刊行した。アメリカの国防費がGDPに占める割合は冷戦期より縮小しているので、オーバー・ストレッチとは言えない。さらにアメリカが直面する安全保障上の課題は多岐にわたり、自国の経済的繁栄にも安定した自由主義世界秩序が必要である。よってアメリカの国防力は維持されねばならない。非常に重要なことに、後方基地が前進基地を補完できないのは、地域の抑止力弱体化と同盟国からの信頼低下という問題があるからである。
財政の崖に関しては、アメリカン・エンタープライズ研究所のマッケンジー・イーグレン常任研究員は「現在考えられる全てのシナリオで共通して言えることは、財政の崖を乗り越えたからと言って事態が自動的に改善するわけではない。唯一の解決策は包括的な債務削減合意である」と論評している(“The fiscal cliff's threat to national security”; US News and World Report; November 1, 2012)。
国防費削減の理由は予算抗争だけではない。AEIのダニエル・プレトカ所長は「財政問題の影に隠れて孤立主義の台頭も見逃せない。多くのリベラルでそうした傾向が見られる。保守でもロン・ポール氏の一派でもそうした傾向が見られる」と総括している(“Beef jerky and the nation’s defense”; American Enterprise Institute; November 15; 2012)。
国防と予算については、今後の投稿でさらに深く議論したい。
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