« アジア回帰戦略は中東への関与軽減の言い訳にならない | トップページ | 忘れ去られたイラクでの戦い »

2012年11月11日

日本の保守政治家は戦後のレジーム・チェンジを肯定せよ

野田政権がレイムダックの様相を増している現在、自民党の安倍晋三総裁が日本の次期首相になる公算が高い。安倍氏と他の自民党政治家だけでなく、ナショナリスト最右翼の石原慎太郎氏とポピュリストの橋下徹氏に率いられる「第三極」においても保守派の声は高まっている。そうした保守派の間ではかなり多くの政治家が「戦後レジームの見直し」を主張し、その多くがアメリカによる「押し付け」の民主化を公然と批判している。そうした発言によって、日本は戦前のナショナリズムに逆戻りしているかのような誤ったメッセージを国際社会に送っているのではないかと懸念される。

むしろ日本は戦後のレジーム・チェンジを肯定し、西側同盟の中での役割をより積極的にすべきだと思われる。ここで強調したいことは、小泉政権以降の自民党政権はアメリカ主導で行われたイラクとアフガニスタンのレジーム・チェンジを支持したが、それらはいずれも日本とドイツに倣ったものである。中東の民主化を支持しながらアメリカ主導の占領軍による戦後の「押し付け」改革を非難するというのでは、論理的に成り立たない。小泉純一郎氏以降の自民党の首相達はテロとの戦いへの勝利、そして特にアル・カイダに代表されるテロ組織への核拡散の阻止のために、そうしたレジーム・チェンジを支持した。私は小泉政権以降の自民党首相達が米軍によるサダム・フセインとタリバン打倒を本気で支持したものと固く信じている。小泉氏の後継首相達は両戦争の開戦時に閣僚の座にあった。麻生太郎氏に至ってはブッシュ政権の方針と呼応するかのように「自由と繁栄の弧」の構想を打ち出した。オバマ政権はテロ攻撃が依然として続く両国からの撤退を決定したが、イラク戦争に反対したフランスもドイツも含めた国際社会は両国の復興と治安部隊の訓練への支援を模索している。日本はアフガニスタン復興支援国際会議を主催した実績もある。

よってアメリカによる占領統治に不満を述べるよりも、日本はチベットや東トルキスタンをも含めた中東から中国に至る地域のレジーム・チェンジのロール・モデルとして行動すべきである。すなわち、日本は民主化の成功への道程を示し、この地域の諸国民にも自らと同様の道を歩むように呼びかけ説得してゆくのである。これによって国際舞台での日本の存在感は増すであろう。日本がイラクとアフガニスタンのレジーム・チェンジを支持したことに何も間違いはない。政治家達はこのことにもっと自信を持つべきである。

イデオロギー的な立場を超えて、時代遅れで機能しなくなったシステムを変えてゆくことには何の異存もない。民主党リベラル派の鳩山由紀夫氏、菅直人氏、岡田克也氏らも日米同盟や霞ヶ関の官僚支配に代表される日本の戦後政治の見直しを主張したが、それによって内政が麻痺状態に陥り、日米関係も悪化しただけであった。誰が次期首相になろうとも、そうしたおぞましき誤りは繰り返してはならない。「戦後レジームの見直し」というスローガンを掲げれば、国際社会から日本とドイツにおけるレジーム・チェンジと民主化を否定するものと誤解されかねないと懸念される。さらに、そうした誤解が広まれば日本は欧米からもアジアからも孤立しかねない。

そこで日米関係について述べたい。ワシントン政界内部に通じたジャパン・ハンドラーなら、中国や北朝鮮といった東アジアの脅威およびアル・カイダやイランなど世界規模での脅威に対して日本が真摯に取り組む限り、保守派が望んでやまない「自主独立」にも寛大かも知れない。しかしアメリカ人の全てがそうした考え方をするわけではない。メディアの中には、専制国家への対処のために日米同盟の緊密化と集団安全保障を追及しながらダグラス・マッカーサーによるレジーム・チェンジを「押し付け」と非難する一貫性のなさに疑念を呈するかも知れない。言い換えれば、「戦後レジームの見直し」が何を意味するのかが明確でないと未熟な反米史観とも受け取られかねない。そうなると日本はアジアと欧米の民主国家から孤立してしまう恐れがある。戦後レジーム・チェンジの中核は平和憲法である。その憲法は国際社会に日本のレジーム・チェンジを印象づけるという歴史的役割をすでに達成し、国際安全保障環境も変わった今となってはそうした役割は終わっている。そうした事情から、私は憲法の改正を支持している。

戦後占領統治が良いことづくめではなかったということは理解できる。また戦前の日本も悪いことづくめではなかった。明治維新の改革はエリートが持ち込んだ西洋の思想に多いに依存していたが、大正デモクラシーの運動は日本のグラスルーツから立ち上がった。それは普通選挙の実施にとどまらない。女性や被差別部落民は自分達の社会的地位の向上を求めて立ち上がった。自由と平等への希求は全国的な広がりを見せた。大正デモクラシーが成功を収めていれば、日本は外国の介入なしにプロシア式の明治憲法を民主的なものに改正できたかも知れない。遺憾ながら大正デモクラシーはドイツのワイマール民主主義と同様に自ら崩れ去ってしまい、軍国主義の台頭を許した。我々が戦前の政治文化を批判的に見つめねばいけないのは、まさにそうした理由からである。

現在、安倍晋三氏が野田佳彦首相に代わって政権をとる公算が最も高い。「失われた20年」に鑑みれば、時代遅れで機能しないシステムは一掃されねばならない。しかし誰が首相になろうとも、そして思想的立場がどのようなものであろうとも、国内外で不要な誤解を生じないためにも「戦後レジームの見直し」が何を意味するのか明確にする必要がある。日本はドイツとともに民主主義を世界に広めるうえでのロール・モデルである。日米同盟の深化、欧米とアジアの民主国家との戦略提携の発展、そして国際舞台での自らの存在感の向上には、これが重要な点である。イラクとアフガニスタンでの日本の貢献を忘れてはならない!歴史修正主義は日本が国際舞台で成し遂げてきたことを台無しにするだけである。

|

« アジア回帰戦略は中東への関与軽減の言い訳にならない | トップページ | 忘れ去られたイラクでの戦い »

日米同盟と国際的リーダーシップ」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。通りすがりの者です。憲法改正を支持する理由を詳しくお聞かせ願いませんか?

投稿: 通りすがり | 2012年12月25日 00:02

この記事に書いてある通りです。

投稿: Σ・亜歴 | 2013年2月10日 19:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/109615/56094325

この記事へのトラックバック一覧です: 日本の保守政治家は戦後のレジーム・チェンジを肯定せよ:

» 菅直人の画像が中国でも話題 「これこそ真の民主国家だ。中国では想像もできない」 [【2ch】ニュース速報嫌儲版]
1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2012/12/10(月) 13:02:22.37 ID:oS5daov60 ?PLT(12002) ポイント特典中国大手検索サイト百度の掲示板に「菅直人前首相が1人寂しく選挙戦を戦っているぞ...... [続きを読む]

受信: 2012年12月10日 18:01

« アジア回帰戦略は中東への関与軽減の言い訳にならない | トップページ | 忘れ去られたイラクでの戦い »