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2013年1月11日

新年への問いかけ:中国への疑問

中国の軍事的台頭に対して世界から懸念の声が挙がるたびに、中国側からは「国力に見合った軍事力を持つのは当然だ。そうして世界規模に広がった中国の国益を守るのだ」という反論がなされる。しかしアジア太平洋諸国も欧米諸国も、本当に脅威を感じているのは中国の意図である。その典型例はアメリカに持ちかけたという「太平洋分割案」である(“Division Rejected”;Washington Times; August 17, 2007)。これでは国際社会から、中国は他国の意思や国際公益を無視して自国の利益を世界に押し付けようとしているのではないかという疑念を抱かれても仕方がない。

強大な軍事力があるからと言って、それが必ずしも外国から脅威と見なされるわけではない。最も典型的な例はカナダとアメリカの関係である。カナダは南の超大国と長い国境線を接しており、しかも自国の人口のほとんどがその国境線沿いに集中している。通常ならば、これは隣国の脅威に非常に脆弱な状態であるが、アメリカを安全保障上の脅威だと見なすカナダ人はまずいない。それはアメリカがカナダを侵略する意図を持つとは考えにくいからである。

軍事力の強さと脅威の認識に関する歴史的考察には、帝国主義が最高潮であった19世紀末から20世紀初頭の英米独の競合が最適である。米独両国とも国力の向上に見合って軍事力を強化したが、カイゼルのドイツは大英帝国の覇権に真っ向から勝負を挑んだ。そのため、イギリスはより友好的なアメリカと同盟してドイツと対決したのである。

また、忘れてはならないのは国際公共財の提供という視点である。パックス・ブリタニカの維持には二国標準主義が採られ、イギリスは独仏露のうち2ヶ国が連合しても優位に立てるだけの軍事力を持った。こうした安全保障の傘によって、ベネルクスや北欧諸国のような小国も平和を享受したのである。同様に、現代はパックス・アメリカーナによってアジア太平洋地域の国々は平和を享受している。中国の指導達が「国力に見合った軍事力」を主張する際には、こうした「歴史認識」が欠けているように思われる。

中国の安全保障政策で疑問を呈すべきは、東シナ海および南シナ海における領有権主張である。両海域で中国の主張を支持する国家も非国家アクターもほとんどない。欧米に対抗するために中国に接近し、日本とは北方領土問題を抱えるロシアすら、これらの件では中立なのである。それでも自国の領有権主張を押し通す中国の態度は、かつての大東亜共栄圏を主張した日帝よりも強引である。この問題に関して中国の「歴史認識」はどうなっているのだろうか?

中国の対外政策への不安感を一層高めるのは、チベット、ウイグルなど国内の少数民族に対する抑圧である。少数民族の権利を主張する活動家達は、中国に一度譲歩をすると自分達の国の独立を失ってしまうと訴えかける。そうした声が真実味をもって受け止められるのも、東シナ海および南シナ海での強引な領有権主張と中国国内での少数民族への非人道的な抑圧の相乗効果があるからである。

中国の政府関係者および論客達は国際メディアに対して「国力に見合った軍事力の増強」という呪文さえ唱えれば説得力があると思い込んでいるようだ。しかしアジアにおいても欧米においても、彼らのこうした主張がほとんど受け入れられていないという事実をしっかりと認識して欲しいと思う。

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