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2013年11月30日

イラン核開発の時系列年表

ジュネーブ交渉によってイランとの核協定を結ぶべきかどうか論争を呼んでいる。イランの原子力開発はシャーの時代に逆上る。ニューヨーク・タイムズ紙は現在進行中の交渉を理解するために核開発の時系列年表を作成している。

モハメド・レザ・パーレビ国王が石油後のイラン経済を見据えていたことはよく知られ、原子力発電所建設計画はパーレビ王政時代の高度経済成長を持続させるための中核となる政策であった。イランは1950年代よりアメリカから大々的な技術支援を受け、1968年には核不拡散条約に加盟した。


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事態が急変したのは1979年のイラン革命からである。原子力計画は1984年のブシェール核施設の再建により再出発となった。また1995年にはロシアがイランと原子力事業契約を結んだ。当時のボリス・エリツィン露大統領は冷戦後の西側との共存を模索したが、イランンに原子力技術を輸出せぬようにというアメリカの要請は受け入れなかった。2002年にはイランの反体制派ムジャヘディン・ハルクが核兵器開発の秘密計画を暴露した。以下の地図には主要各施設が示されている。


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こうした危機の継続にもかかわらず、国連が制裁を科したのは何と2006年になってからである。非常に興味深いことに、2008年にイスラエルがブッシュ政権に対して秘密裏に、かつてサダム・フセインの核計画阻止のためにイラクの核施設を攻撃したようにイランの核施設攻撃を持ちかけていた。ブッシュ政権はその代りにイスラエルと共同でイランにサイバー攻撃を仕掛けた。この時系列年表は数十年にわたるイランの核危機の理解に一役かえる。イランの核の脅威については後ほどさらに議論したい。

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2013年11月18日

オバマ大統領ではアメリカは分裂する

オバマ政権は財政支出強制停止や政府閉鎖といった政治的な行き詰まりにあまりにも頻繁に直面している。アメリカ国民の間での党派の分断はブッシュ政権期に顕著になり、バラク・オバマ氏が大統領に就任してからさらにそうした傾向が強まっていった。ティー・パーティー運動はオバマ政権に対する反動として現れた。度重なる財政支出強制停止や政府閉鎖に関しては、専門家の間ではイデオロギー的な分裂や財政政策の議論に終始しがちだが、私はバラク・オバマ氏の非アメリカ的な側面に対する一般国民の嫌悪感を中心に述べたい。

オバマ氏以上に敵意むき出しの罵詈雑言を浴びせられた大統領はいない。そうした誹謗中傷には社会主義者、共産主義者、イスラム教徒などといったものがある。オバマ氏が本当はアメリカ生まれではないと信ずる者も依然として多いが、そうなると憲法の規定から大統領の資格を喪失してしまう。そうした中傷には人種差別的な感情もあるだろうが、やはりオバマ氏の非アメリカ性に対する嫌悪感の方がはるかに根深い。大統領就任時、プラハおよびカイロでの演説に見られるように、オバマ氏の外交および内政政策の見解があまりにも謝罪姿勢なのでアメリカの伝統的価値観とは相容れない。

大統領就任より、あるいはオバマ氏の第一期の選挙の最中から、政権に就けばアメリカ国民の分裂が深まるであろうことは予期されていた。しかしメディアは史上初の黒人大統領の登場だとしてオバマ氏を称賛しドラマチックに扱った。そして反ブッシュ気運に迎合してオバマ政権の誕生がもたらす政治的な意味合いに考慮を払わなかった。ティー・パーティーに見られるような保守派大衆の反撃は当然の帰結なのである。大衆の抵抗に関しては2つの重要な点を挙げたい。第一に、彼らは憲法の理念に基づくアメリカを守ろうとしており、それは政府からの自由である。第二に、彼らは崇高な理念の憲法を頂く祖国に危険をもたらすいかなるアクターにも立ち上がり、中でもイスラム教徒のテロリストは最も重大な脅威と見なされている。大衆の間でのオバマ氏への中傷に彼らの感情がよく表れている。政治が常にある政策をめぐる理性的な討論というわけではないので、上記の2点を主としてフェイスブックとツイッターにあふれるメッセージから述べたい。

ティー・パーティーが小さな政府を掲げているために財政規律を求める運動だと理解されがちである。こうした見方は皮相的である。運動への参加者のほとんどは専門家ではなくグラスルーツの一般国民である。彼らの主要アジェンダは予算や福祉の技術的な問題よりも、憲法の理念に基づくアメリカである。オバマ・ケアは彼が掲げる大きな政府を攻撃するためのシンボルである。ブルッキングス研究所のティモシー・ガストン上席フェローのように、共和党はオバマ・ケアよりも財政政策を中心に議論すべきだと提言する向きもある(“Time to Compromise? How Republicans and Democrats View the Government Shutdown”; FixGov; October 3, 2013)。両党が単に経済に関して論争しているのならそれでも良い。それはティー・パーティー保守派には当てはまらない。1994年の北西部太平洋岸の森林保護でのマダラフクロウや現在の地球温暖化でのホッキョクグマのように、オバマ・ケアは現政権の大きな政府のシンボルとなっている。

憲法の理念を重視する人達は建国の理念に忠実で、しかも非常に愛国心が強くアメリカそのものに肯定的である。確かにネオコンサーバティブとは違い、彼らはアメリカが世界の警察官であることに否定的である。彼らがシリアでの戦争に反対したのは予算のためではなく、反政府勢力にまぎれるアル・カイダを支援するようになることを懸念するためである。アメリカの本土が安全である限り彼らは孤立主義であるかも知れないが、9・11のようにパール・ハーバーを想起させる事件が起これば、彼らは憲法の理念を掲げる祖国アメリカを守るために積極介入主義になる。

こうした観点から、グラスルーツ保守派の間でのイスラムへの恐怖感はきわめて重要である。こうした感情を示す典型的な事例は、ニーナ・ダブルリ氏が2014年のミス・アメリカに選出されたことへの大衆の反応である。ダブルリ氏はインド系アメリカ人では初の優勝者であるが、ツイッターには数多くの中傷が寄せられた。例を挙げると「アル・カイダおめでとう。我らのミス・アメリカは君達の仲間だ」、「ミス・アメリカじゃなくてミス・テロリストだろ」などである(“20 Racist Tweets About the New Miss America”; Indian Country; September 16, 2013)。


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イスラム・テロへの恐怖感は理解できるが、彼女はアル・カイダではない。


インドがテロとの戦いでアメリカの重要な同盟国だという事実を踏まえれば、こうしたツイートは無知と俗悪な人種差別を示すものである。さらに中世にインドを支配したイスラム諸王朝ではヒンドゥー教を無慈悲に弾圧した非常に過激派の支配者もあり、仏教に至っては絶滅に追い込まれている。しかしそうした無知と俗悪は高尚な学術論文よりも大衆の感情を生々しく描き出すことを強調したい。メディアと専門家はイラクとアフガニスタンでの戦争の長期化による厭戦気運を語るがシリアでのイスラム過激派支援につながりかねない行為への反対の声にはあまり目を向けていないが、オバマ氏への中傷はそうした感情と深く関わっている。

オバマ氏は自身の内政および外交政策への大衆の反感に対処できていない。彼の身内の民主党からもオバマ氏への不満の声が出ている。マイケル・ベネット上院議員やジェフ・マークレー上院議員ら15人の上院議員がオバマ・ケア論争による政治的な行き詰まりでは2014年に自分達の選挙を戦えないとして不満を述べている(“Obama Moves to Quell Democratic Dissent Over Health-Care Rollout”; Bloomberg News; November 7, 2012)。キニピアック大学の世論調査によればオバマ氏の支持率は39%まで落ち込み、就任以来最低の数字である(“President Obama's approval rating drops to lowest yet in Quinnipiac University poll”; FOX News; November 12, 2012)。ナショナル・ジャーナル誌のアレックス・ロアーティー記者は再選を目指さない大統領が支持率の落ち込みから立ち直った事例はないと指摘する(“Why Obama won’t Bounce Back”; National Journal; November 12, 2013)。

国際舞台ではフォーブス誌の「世界で最も影響力のある人物ランキング」で首位になったのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領でオバマ大統領は2位にすぎず、以下は中国の習近平国家主席が3位、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が5位、イギリスのデービッド・キャメロン首相が11位となっている(“Forbes Releases 2013 Ranking Of The World's Most Powerful People”; Forbes Magazine; October 30,2013)。これはアメリカがもはや超大国でないことを意味するのだろうか?このランキング表を注意深く見ると、ベン・バーナンキ連邦準備理事会議長やマイクロソフト創業者のビル・ゲーツ氏をはじめアメリカの公的機関や財界の人物が数多く上位に入っていることがわかる。そのランキング表のような結果をもたらしたのはアメリカの衰退ではなくオバマ氏のリーダーシップの欠如である。議院内閣制であればオバマ氏のような指導者はとっくに辞任していたであろう。ブッシュ政権期にも世界金融危機による支持率の急落はあったが、政府は機能していたことを忘れてはならない。

任期終了まで3年を残すとはいえ、バラク・オバマ氏は実質的にレイム・ダックになってしまったので、アメリカ情勢に目を向ける者としてはオバマ後の次に誰が大統領になるのかも考える時期に来ている。現在与党の民主党からはヒラリー・クリントン前国務長官が最有力と見られている。しかしベンガジ・ゲート事件の悪影響は甚大になるだろう。スーザン・ライス前国連大使が国務長官になれなかったのも、議会で共和党がこの事件との関連でライス氏の就任に激しく反対したためである。グラスルーツでイスラムに対する素朴な恐怖感が広まる中で、これは著しく不利になる。民主党が指名するのはクリントン氏か、それとも他の人物か?

また共和党が巻き返すかどうかも注視すべきである。ヘリテージ財団マーガレット・サッチャー・センターのナイル・ガーディナー所長はイギリスのデービッド・キャメロン首相に対し、オバマ氏への行き過ぎたチア・リーディングは本来なら理念を共有するはずのアメリカの保守派の間で英国保守党に対する印象を大きく損ないかねないと批判している。ガーディナー氏はさらに、保守党のキャメロン氏が民主党左派のオバマ氏から学ぶことはほとんどないと念を押している(“Cameron worships Obama, but Barack's win won't help Dave in 2015”; Daily Telegraph; 8 November, 2012)。オバマ政権がすでに死に体となっている現在、ガーディナー氏の論評はフランスのフランソワ・オランド大統領のような社会党の政権担当者にとっても示唆に富むものである。共和党は国際介入に積極的な国防増強派とアメリカ・ファーストのティー・パーティーとの亀裂を克服できるだろうか?これは彼らの巻き返しに重大な要素となる。

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