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2015年7月 7日

中国は本当に広く信じられているほど強いのか?

中国の台頭は国際政治の学徒の間では最重要テーマの一つである。様々な国際会議ではアメリカ人からヨーロッパ人、アジア人、そして日本人まで国籍を問わず世界各国の有識者達は、この巨大な新興国の上昇と、この国がグローバルな問題で影響力を拡大してゆくという「マニフェスト・デスティニー」を受け入れよと説いている。中には我々のような従来からの大国は国際社会の力の変遷という動向に抵抗することなく、自らの衰退を受け入れよというほど受け身の発言さえ見られる。そうした諸行無常を何が起ころうとも、それが望ましくてもが望ましくなくても受け入れよというのはあまりに「仏教的」である。しかしホッブス的な世界で一国の指導者がそのように諦観的な態度をとれば、その国は野心に満ちた新興国のなすがままに陥ってしまうだろう。新たに台頭してくる国の国力は適正に評定し、その国に対処する戦略を考えねばならない。

ともかく中国は多くの有識者達が言うように本当に強いのだろうか?この国が勃興する大国であることに異論はなく、それが世界秩序と国際安全保障にもかなりの影響を及ぼすであろう。しかし我々は中国を大変な経済大国だと見なしてよいのだろうか?この疑問については中国経済の相反する性格を注視すべきで、それは国家全体では巨大な経済も一人当たりの所得が不釣り合いに低いということである。世界銀行が公表した2014年の一人当たり国民所得によると、中国はアトラス方式では101位で購買力平価では105位となっている。財界人はしばしば急激な経済成長と都市開発に印象づけられてしまって中国の台頭に 魅入られがちなのは、伊藤忠商事会長から転身した丹羽宇一郎駐中国大使を見ればよくわかる。中国経済が総合で大きいのは巨大な人口が主要な要因である。歴史的にも国民が貧しい経済大国など、スペインからオランダ、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカ、日本にいたるまで例がない。そのために中国の本当の経済的な実力を評定することは非常に難しい。ともかく中国がアメリカに対して最有力で手強い経済的な競合国だという認識は馬鹿げている。実際のところ、中国は日本やヨーロッパ主要国に追いついてもいない。中国はロシアよりもはるかに貧しい。近い将来、中国がアメリカを追い越す?それはいつのことか?

世界各国の有識者達が、国籍、文化、経歴を問わずそれほど単純明快な事実を見過ごすのはどうしたことだろうか。そのように中国の実力に間違った評定を下すことの危険性は、北京の共産党が心理的な幻想を利用して国際規範を強引に抑えつけて自らをより有利な立場に置こうとすることである。高名な論客たちは中国について深く知り過ぎるあまり、ここで言及したような簡明な事実を忘れ去っているように思われる。アジア・インフラ投資銀行に対する受容姿勢は、中国によるアジアの最有力大国としての地位の強引な主張に対する「仏教まがい」の宥和の典型的な事例である。社会問題や環境問題に対してどこまで考慮するかという懸念はさて置き、中国が多国間機関を運営するだけのノウハウや専門知識を持っているとは到底思えない。この国は地域機関でも安全保障同盟でも主導的な役割を果たしたことはない。この国は西側、ソ連、そして非同盟のどのブロックからも孤立してきたのである。多国籍開発銀行を運営するだけの中国人経済学者は多くない。さらに貧しい国が多国間銀行を実質的に一国で運営するだけの経営体力はあるのだろうか?中国が日米両国および国際社会の敬意を勝ち取りたいという希求は理解すべきだが、彼らが多国間記入期間を運営するだけの能力を備えているかどうかは疑わしい。

他に問題とすべき点は製造業である。中国は世界の工場と呼ばれ、付加価値の低い製品と一般消費者向け用品での競争力については反論の余地がない。しかしハイテク製品ともなると中国は世界の最先端ではない。人民解放軍の戦闘機のほとんどはロシア空軍のもののコピーである。例えばJ11はスホイ27から、J15はスホイ33からといった具合である。中国独自のステルス戦闘機J31さえミグ29と同じエンジンを使用している。実際に中国製のエンジンは旧式でパワー不足である(“Why China’s Air Force Needs Russia's SU-35”; Diplomat; June 1, 2015)。J31はアメリカのF35の情報をハッキングしたコピーと見なされているが、2014年珠海航空ショーでのパフォーマンスは酷い評価であった(「自国メディアにも叩かれた「中国最新ステルス機」の未熟さ」;イザ産経デジタル; 2014年12月17日)。しかし正当であれ不当であれ、模倣は模倣に過ぎない。興味深い事例はドイツ製214型潜水艦の韓国への技術移転である。韓国はドイツのハイテク潜水艦を建造するライセンスを認可されたが、ボルト接合技術が充分に発達していなかったのでその潜水艦を造れなかった。言い換えれば、基礎レベルの技術もなしに模倣を行なうのは、素人が一流コックのレシピを読んだだけで作った料理のようなものである。よってライセンスであれハッキングであれ、コピーされた技術は本物の技術ではない。

戦闘機以外でも、中国のミサイルは輸入かコピーといった形式でロシアの技術に依存している。先進技術では、中国はロシアあるいはハッキングを通じたアメリカの技術にこれほど依存している。このことは中国の製造業の基盤が非常に脆弱だということになる。経済の面では、中国はもはや止めようもないほど台頭してしまった国ではなく、アメリカ、日本、ヨーロッパ主要国、そしてロシアに追いつくには程遠い。G2構想など白昼夢である。また中国は軍事超大国でもない。中国は巨大な低開発国に過ぎない。中国が「衰退する」ロシアをジュニア・パートナーにすると信じる者も少なくない。そんなことはほとんど考えられない。スーザン・ストレンジの構造的な力の理論を適用すれば、国防のあり方を決定づける力を行使しているのはロシアであって中国ではない。ロシアの技術への依存は、中国の国防システムをそれに応じたものにしてしまう。この観点から、私は日本国際フォーラムの伊藤憲一理事長が対独戦勝70周年記念での習近平氏のモスクワ訪問について「それにしても、そのような場に中国の習近平国家主席が席を連ねたことは、果たして中国のためによかったのであろうか。私は疑問に思う。」と記した最後の一文を注視している(「プーチン・ロシアはどこへ行くのか」;日本国際フォーラム――百花斎放;2015年5月12日)。

最後に質問を繰り返したい。どうして世界各国の有識者達は中国の台頭にそれほど受容的で、国際社会で自国の序列が下がることに寛容なのだろうか?「仏教まがい」の諦観は政策形成の態度ではない。何かが望ましくないのなら、それを望ましいものに変えねばならない。何かが望ましいなら、それをさらに望ましいものに変えねばならない。この目的のためには、中国の真の実力に冷静な評価を下さねばならない。

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