横田基地の日米友好祭に見る国民の真意
去る9月19日および20日には在日米軍および航空自衛隊の横田基地において日米友好祭が開催された。今年の友好祭は例年以上に注目に値するものであった。それは、直前9月19日未明に大紛糾の末に参議院で安保法案を通過したばかりだったからである。このイベントに対する市民の受け止めは、メディアの報道にも学者達の研究にも表れない国民の真意を知るための試金石である。結論から言えば、反対派の声を過大評価したメディアの報道姿勢は間違いである。それは彼らが何を言おうとも、日米友好祭の膨大な人出と活気が国民の間での日米同盟と安保法制への強い支持を雄弁に物語っているからである。
今回の安保法案をめぐってはSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)をはじめとした左翼およびリベラル系の大規模な反対デモが国会前で行なわれ、メディアからは60年安保闘争の再来として大きな注目を集めた。あまりの大きなデモに民主党の岡田克也代表は、安保法制は国民の声を無視するものだと決めつけた。確かに無数の人々が永田町を占拠し、大声で安保法制への反対を叫んだ。しかし、それが論理的にも情緒的にも日本国民の声を代表するものなのだろうか?こうした街頭の市民運動において、左翼系の団体がきわめて動員能力に長けていることに留意しなければならない。政治学の入門理論では、強い団結力で特定の目的意識を持ったグループが大多数の国民以上に大きな影響力を持つ。永田町を占拠した者達がどこまで国民の声を代弁する存在なのか、それはきわめて疑わしい。
それに対して日米友好祭での横田基地への市民の来訪は、どこの組織からも動員されていない自発なものであった。通常は最寄りのJR青梅線牛浜駅から基地までは徒歩で15分ほどということだが、この日の入場には1時間以上もかかった。警察は膨大な人数の来客が周辺住民の交通を妨げぬよう、彼らの行列を整えて往路を迂回させたほどだった。もう基地に入る前から、これが永田町占拠者と同じ日本国民とは思えないほど、在日米軍および自衛隊に対する支持と人気の高さを示していた。道中では日本民主青年同盟の運動家20人ほどが安保法制反対のデモをやっていたが、日米友好祭にやって来る訪問客が彼らの主張に耳を貸すはずがない。民青の行為は、ただ失笑と冷笑の対象になるためだけの運動であった。
やっとのことで基地内に入場できたものの、そこではどこの出店も展示も長蛇の列であった。また、米軍兵士との記念撮影にも多くの来客が殺到した。こうした光景を目の当たりにすれば、日本国民が信頼を寄せているのが在日米軍や自衛隊なのか、それともSEALDsや小林節名誉教授なのかが一目瞭然である。永田町占拠者達はこうした国民の声なき声を無視し、まるで「私達こそが世論である」と言わんばかりの態度であった。それではもはや太陽王ルイ14世さながらであり、彼らには市民運動家を名乗る資格など全くない。民主党の岡田代表のように国民世論を読み誤っている政治家こそ、アメリカ軍を素朴で素直に歓迎する国民に目を向けるべきである。アメリカ軍および自衛隊に対するこうした素朴な信頼と支持が広まっているのは、遠方から電車でやって来る来客の間ばかりではない。基地周辺の住民も近隣で祭りを楽しみ、夜になると花火見物に基地内へ入場してきた。本土の左翼が乗り込む沖縄と違い、横田の米軍は地域社会に溶け込んでいるのである。
こうした事態に鑑みて私はメディアが安保法制反対派の声ばかりをとりあげ、彼らが必要以上に勢いづけられた偏向報道には強い疑問を抱いている。本来なら、国民の声なき声を拾い上げるのが彼らの役目である。また、この法制に反対する諸政党は国会で「国民は理解できない」と声を荒げていた。しかし実際には数えきれないほど多数の国民はアメリカ軍と自衛隊に共感と理解を示している。横田基地の日米友好祭はこれを雄弁に物語っている。このことは取りも直さず日米の防衛協力を進める安保法制への理解は国民の間では静かに広まっていることを意味する。今回の安保法制を理解するかしないかは、頭脳よりも意志によるところが大である。永田町占拠者達のような教条的な一国平和主義者達に国際情勢の変遷やホッブス的な性質を何度説いても徒労に終わるだろう。理解する気がない者は何を言っても理解しない。真のグラスルーツとは、横田基地にやって来た人々である。よって今法案成立後の政策実施に当たっては、日本国民の内でもどのような層の声を重視すべきかを考慮すべきである。
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