そこで討論会について述べたい。両パネリストとも戦闘機よりも、ロジスティクス、電磁戦、サイバー戦、近接航空支援、偵察、対潜および対艦作戦など多様な任務をこなすヘリコプターについて多くを語った。また新時代の戦争に向けて友軍の航空機と艦船との情報の融合と共有も強調された。そうしたヘリコプターの中でも最も取り上げられたのが海兵隊のV22オスプレイである。ティルトローターによってオスプレイは他のヘリコプターよりも速く遠くに飛行できるので、陸上への戦力投射には非常に有利である。またオスプレイは上陸作戦だけでなく、精密爆撃や長距離通信にも活用できる。アメリカ海軍がオスプレイを導入するに当たっては海兵隊からノウハウを学んでいる。多様な用途に柔軟に利用できるV22はアメリカの同盟国の中からも注目されている。例えばイギリス海軍のクイーン・エリザベス級空母が65,000トンと巨大なのはV22およびCH47チヌークをハンガーに格納するためである(“Queen Elizabeth class aircraft carrier: A Guide”; UK Defence Journal; April 2, 2014)。
無人機も重要な論点であった。デービス中将は将来において、任務によるヘリコプターの有人と無人のオプション利用についても語った。実際にシコルスキー社は、陸軍が同社のUH60ブラックホークの無人機型を単調で危険な任務にこれから使用してゆくと認めた(“Sikorsky develops unmanned UH-60 Black Hawk”; May 3, 2014)。しかし完全なUAS(無人機)してはシューメーカー中将の発言にもあるようにすでにMQ4CトライトンがISR任務に使用され、UCLASS(空母艦載無人偵察攻撃機)が試験を重ねている。初期段階での偵察での情報を総合表示した画像が攻撃飛行隊に送信され、攻撃目標が設定されることになる。
そうした新しい概念や技術もさることながら、戦闘機による攻撃および防空こそ海軍航空隊の中核である。海軍と海兵隊はFA18ホーネットおよびスーパー・ホーネットをF35BおよびCと交代し、ステルス侵入とさらに重要な情報の融合と共有といった重要な新時代の要請を充足しようとしている。しかしF35計画は遅延が甚だしく、特に空母艦載のF35Cの配備は2020年代になってしまう。よって、海軍と海兵隊は旧ホーネットとスーパー・ホーネットの耐用期限を6,000飛行時間から9,000飛行時間に延長している。それでもすでに耐用期限に達した機体もあるので、ボーイング社は現役機へのSLEP(耐用期限延長計画)だけでなく、スーパー・ホーネットの新規製造も提案して戦闘機総数の激減を食い止めようとしている(“Boeing Offers New, Rebuilt, Upgraded Super Hornets To U.S. Navy” Aviation Week; October 13, 2015)。しかし機数が真の問題ではない。両パネリストとも海軍の制空権に関してはほとんど語らなかった。それがなければ、海軍と海兵隊が構想するいかなる多用途作戦も実行できなくなる。FA18E/Fスーパー・ホーネットであれF35Cライトニングであれ、防空には特化していない。
2006年にF14トムキャットが退役してから、アメリカ海軍には航空優勢および迎撃用の戦闘機がない。冷戦後の予算的制約もあって、アメリカの国防政策は戦闘機のコスト・パフォーマンスを重視するようになった。それによってアメリカ海軍の空母打撃群は、大国間の競合時代への逆戻りで敵のA2AD能力が強化されると自らの防衛に不安を抱えるようになった。国防の有識者達はアメリカが「歴史の終わり」に安心しきったことを批判している。『ナショナル・インタレスト』誌のデーブ・マジャムダール国防編集員はさらに厳しく「ソ連崩壊から25年間、ペンタゴンは航空優勢を当然視するきらいがあった。ドナルド・ラムズフェルド氏もロバート・ゲーツ氏も航空戦力を重視していなっかった」と評している(“The U.S. Military's 'Top Guns' in the Air Have a Big Weakness”; National Interest; October 13, 2015)。さらにFA18E/FもF35Cも、ロシアのスホイ30SMやスホイ35S、中国のJ11DやJ15といった敵の戦闘機に対して、戦闘行動範囲、加速力、飛行高度、大型ミサイル搭載能力からみても撃退には心許ないと主張する。さらにロシアのPAK-FAや中国のJ20といった次世代の戦闘機はステルス性とスーパー・クルーズ能力を備えている。特に敵の航空戦力が脅威となるのは西太平洋においてである。海軍は将来にスーパー・ホーネットと交代するFAXXについて、F14タイプの航空優勢および迎撃用の戦闘機を模索しており、それは大型のセンサー、スーパー・クルーズ能力、そしてミサイルの他にHPM(高出力マイクロ波)およびレーザー兵器搭載のために余裕のあるスペースを備えることになろう(“Does the U.S. Navy Need a 21st Century F-14 Tomcat?”; National Interest; October 13 ,2015)。しかし艦隊防空は現在の問題であり、それほど遠い将来のことではない。
新アメリカ安全保障センター上級研究員のジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐は、海軍航空隊の現状をさらに厳しく批判している。現在のアメリカ空母機動部隊では戦闘機の行動半径が短すぎるので、中国のDF21D対艦弾道ミサイルの射程範囲外まで退かねばならないと指摘する。DF21の射程距離は1,000海里に達するが、スーパー・ホーネットの作戦行動半径は空中給油がないと空母から496海里に過ぎない。それが1956年時点の空母艦載機だったF8クルーセイダーやA4スカイホークの半分にも満たぬことは、以下の図に表示された通りである。長距離の任務が想定されているF35Cでさえ、実際の戦闘行動半径は550海里に過ぎず、スーパー・ホーネットより50海里長いだけである。それではF14戦闘機およびA6攻撃機よりもはるかに短い距離となってしまう(“Retired US Navy captain: The centerpiece of the Navy's future doubles down on a 20-year-old strategic mistake” Business Insider; October 20, 2015)。ヘンドリックス氏の分析は重要な点に言及している。戦略的な重点は空対空の戦闘から地上攻撃、そして電磁戦やサイバー戦に移るかも知れないが、戦闘機の基本的な能力は充足させるべきである。さもなければ地上基地を利用できない場所で空母が前線航空基地の役割を担うことはかなわなくなる。
スーパー・ホーネットはアビオニクス、センサー、搭載兵器で配備以降の時代の技術でアップデートされてはいるが、やはり旧ホーネットの大型版に過ぎない。スピードの遅さ、加速性の悪さ、そして航続距離の短さといった本質的な欠点の解決は容易ではない。人間なら努力で何とかできるかも知れないことでも、機械のパフォーマンスは元からの設計に大いに依存する。スーパー・ホーネットもF35も航空優勢のために設計されていないので、F14やF15とは全く違った乗り物である。敵のA2ADの中には地上基地から発射されるミサイルより遠方に達するものもある。中国のH6K戦略爆撃機はアメリカの空母打撃部隊に長距離精密攻撃を行なうことができる(“China’s Strategic Bombers Capable Of Long-Range Precision Strikes”; Value Walk; October 18, 2015)。冷戦期のアメリカ海軍はソ連のTu22バックファイアによる飽和攻撃への対抗していたこともあり、航空優勢は今日では重要度を増している。イージス艦による艦隊防空が完全になるのは、そうした水上艦と防空戦闘機のチームワークが機能している時である。さらにレーザー兵器やレールガン(電磁砲)は現時点では未来の技術である。
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