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2016年3月31日

アメリカ大統領選挙での外交政策チーム

外交政策チームの質と量は、各候補者が世界におけるアメリカの役割をどのように考えているのかを示す指標である。また政策顧問の選定は現候補者達が重視する政策課題を映し出している。顧問チームを見れば、どの候補者が大統領職に対して準備が整っているかがわかる。この観点から言えば、共和党のドナルド・トランプ候補が外交政策について問われた際に「私は何をおいても自分自身に問いかけることにしている、というのも私の頭脳は非常に優秀だからだ」と答えたことは、馬鹿丸出しの自信過剰である(“Trump: I consult myself on foreign policy”; Politico; March 16, 2016)。しかしライバルのテッド・クルーズ上院議員が自身の外交政策チームを公表すると、トランプ氏も数日後にはこれに続いた。上記の観点から、各候補者の政策顧問チームについて述べてみたい。

質量の両面においてヒラリー・クリントン氏の外交顧問チームは他の候補を圧倒している。クリントン氏は2007年に新アメリカ安全保障センター(CNAS)の設立に当たって来賓として記念演説を行なっている。CNASはオバマ政権への人材供給源となり、中でも共同設立者のミシェル・フロノイ氏とカート・キャンベル氏がよく知られている。さらにクリントン氏にはファースト・レディ、上院議員、国務長官の経験を通じて外交政策および国家安全保障のコミュニティーの間に広範な人脈を築いている。クリントン氏の外交政策チームは、規模のうえでも政策分野の広さのうえでも他の候補よりも多いに優位に立っている。チームを主導しているのはクリントン氏が長官在任中に国務省で政策を担ったジェイク・サリバン氏とローラ・ローゼンバーガー氏である。そのうえにレオン・パネッタ元CIA長官および国防長官、トム・ドニロン元国家安全保障担当大統領補佐官、マデレーン・オルブライト元国務長官、そしてミシェル・フロノイ国防次官らの重鎮も外部顧問としてクリントン氏のチームと連携している。バーニー・サンダース上院議員がローレンス・コーブ氏、レイ・タケイ氏、タマラ・コフマン・リッツ氏ら著名な中東専門家と会談して外交政策での自らの弱点を補おうとしたというが、彼らはクリントン氏とつながっている(“Inside Hillary Clinton’s Massive Foreign-Policy Brain Trust”; Foreign Policy; February 10, 2016)。

さらに、クリントン氏は共和党の外交政策で指導的な立場の人々とも深い関係にあり、特にそれは自らの国務長官就任に当たってヘンリー・キッシンジャー氏からの支持を得たことに顕著に表れている。湾岸戦争以来、民主党もサダム・フセインを排除すべきだとの見解を共和党とも共有していた。クリントン政権はアメリカ新世紀プロジェクトが主張したイラクのレジーム・チェンジという案さえも受容していた。ブッシュ政権はこれに沿って行動したに過ぎない。この点を反映するかのように、共和党の国家安全保障政策の中核からは、トランプ氏がイラク戦争、リビア、イスラエル・パレスチナ紛争、ロシアに対して非介入主義を掲げることに強い異議の声が挙がっている。外交政策に関する限り民主・共和両党とも共通の見識があり、両党とも極度に偏向した非正統派の自党候補者よりも正統派の他党候補者の方が受け入れやすい。共和党非主流派でもランド・ポール上院議員のように、リバータリアンの思想から受け入れられない水責め拷問やメキシコとの国境での壁の建設を主張するトランプ氏よりも、クリントン氏の方が好ましいと考える者もいる(“Hillary Clinton Has Long History of Collaboration With GOP on Foreign Policy; Intercept; March 13, 2016)。多くの共和党員にとって、クリントン氏の方がトランプ氏よりはるかに好ましいのは当然である。

実際に保守派からもハドソン研究所のブライアン・マグラス氏のようにクリントン氏の外交および国防政策を信頼するとの声も挙がっている(“Vocal Trump critics in GOP open to supporting Clinton”; Hill; March 24, 2016)。特にネオコンの間からはロバート・ケーガン氏やマックス・ブート氏のようにトランプ氏よりもクリントン氏を支持するとの声が公然と挙がっている。さらにブッシュ政権期の元高官もディック・チェイニー氏からコンドリーザ・ライス氏にいたるまでが、クリントン氏を国務長官としてもオバマ氏の潜在的なライバルとしても好意的に評価していた(“Neoconc War Hawks Want Hillary Clinton Over Donald Trump. No Surprise—They’ve Always Backed Her”; In These Times; March 23, 2016)。リベラル・タカ派と目されるクリントン氏はワシントン政界における両党の頭脳集団を独占している。

ライバル候補者達の顧問チームはこれとは対照的に質量ともはるかに不充分である。サンダース氏は外交政策チームの名に値するものは設立していない。共和党側の外交政策チームはイスラム系テロに対する大衆の恐怖に迎合する一方で、世界の中でのアメリカの役割に関してはほとんどビジョンを示せていない。まずテッド・クルーズ氏のチームについて述べたい。クルーズ氏はトランプ氏に先んじて自陣営の顧問の名を公表した。チームを主導するのはジム・タレント元上院議員とブッシュ政権のエリオット・エイブラハムズ元国家安全保障担当副補佐官である(“Cruz unveils national security team before Trump”; Washington Examiner; March 17, 2016)。ネオコン系の両人ともマルコ・ルビオ上院議員が大統領選挙から撤退するまで、彼の政策顧問チームに名を連ねていた(“Marco Announces Support of Top National Security Experts”; MarcoRubio.com; March 7, 2016)。他方で反イスラムの陰謀論者を代表するフランク・ガフニー氏は在米ムスリムの4分の1は反米ジハードを企てているばかりか、彼らのシャリア法は米国内で重大な脅威となっていると主張する(“Cruz Assembles an Unlikely Team of Foreign-Policy Rivals”; Bloomberg View; March 17, 2016)。

クルーズ氏が最近、イスラム教徒の住民の周辺では監視を強化すべきと主張した(Ted Cruz: Police need to 'patrol and secure' Muslim neighborhoods; March 23, 2016)背景にはこうした見方があるのかも知れないが、共和党主流派はそうした考え方を受け入れていない。クルーズ陣営のチームは党内のイデオロギー的立場を広くカバーしているが、特定の問題に関する見解の相違が深刻化した際には普遍主義者のネオコンとナショナリストの陰謀論者の間で亀裂が生じかねない。また顧問の人選も中東とイスラム系テロの専門家に偏っている。それでは今日のアメリカが直面する全世界規模での課題に対処するという要求を満たすには程遠い。

最後にトランプ氏の外交政策チームについて述べたい。クルーズ氏と同様にトランプ氏のチームもイスラム系テロ対策に偏った人選となっている。クルーズ氏に対抗するかのように、トランプ氏は相手陣営の発表から数日後にジェフ・セッションズ上院議員主導の外交政策チームを公表した。トランプ氏の顧問団には著名な人物も政府の高官を歴任した人物も名を連ねていない。際立った特徴を挙げれば、トランプ氏のチームは自らが財界人であることに由来するかのように極端に商業主義である。チーム内で重要な地位になるカーター・ペイジ氏とジョージ・パパドプロス氏はともに石油エネルギー業界のコンサルタントである(“Trump begins to peel back curtain on foreign policy team”; Hill; March 21, 2016)。中にはきわめて眉唾でアウトローな経歴の人物もいる。まず、ジョセフ・シュミッツ氏は度重なる腐敗に関わって2005年にペンタゴンを辞職している。他にもワリド・ファレス氏はレバノンでキリスト教徒民兵として参戦した際にパレスチナ難民を殺戮しているが、そうした犯罪的な行為に及んだ人物が対テロ政策の顧問となっている。さらに驚くべきことに、キース・ケロッグ退役中将にいたっては、彼の主張とは裏腹に2003年から2004年にかけてイラク占領軍での陸軍の雇用履歴が残っていない(“Top Experts Confounded by Advisers to Donald Trump”; New York Times; March 22, 2016)。

このようなあきれるばかりの人選について、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏は「トランプ氏は経験など歯牙にもかけないのか、それともあまりの暴論で思慮のかけらもない見識の人物の顧問などになって自分の評価を落とすようなことは誰もやりたくないのではないか」と論評している(“D.C.’s Foreign-Policy Establishment Spooked by ‘Bizzaro’ Trump Team”; National Review Online; March 24, 2016)。トランプ氏の外交政策に関する見識が、ワシントンの外交および安全保障政策コミュニティーで党派とイデオロギーを超えて共有される認識とは全くかけ離れているのも不思議ではない。そうした見解が顕著に表れているのは、アメリカが全世界で築き上げた同盟ネットワークの価値を軽蔑しきっていることである。 中でも典型的なものは日本と韓国への自主核武装の要求で、これでは全世界での核不拡散を目指すアメリカの安全保障上の至上命題を真っ向から否定することになる(“In Japan and South Korea, bewilderment at Trump’s suggestion they build nukes”; Washington Post; March 28, 2016)。もはやこうなると、事態は「ゆすり」だの、二国間同盟だの、バードン・シェアリングだのどころではなくなる。トランプ氏の発言は党派の枠を超えて核不拡散に取り組む外交政策の専門家達に対して、およそこの世のものとは思えないほどの侮辱である。核兵器保有国が増えれば増えるほど、テロリストが核兵器を入手する可能性が高まるということをトランプ氏は知っておくべきである。

政策顧問の選任に関して言えば、指導者は国民よりもはるかに大きな視野から事態を見通さねばならない。候補者は国民の要求に応える必要がある。しかしそれだけでは不充分である。良き指導者となるには注目されていなくとも重要な問題に国民の意識を向けさせるべきであり、大衆の怒りに迎合してばかりではいけない。こうした観点から言えば、クリントン氏のチームが最善でありトランプ氏の顧問団が最悪である。クルーズ陣営のチームはブッシュ陣営およびルビオ陣営から顧問が参入してくれば、質量とも向上する可能性もある。


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2016年3月17日

民主主義および人権の国際的普及とアメリカ大統領選挙

バラク・オバマ大統領がアメリカはもはや世界の警察官ではないと発言した時には、国際世論は当惑した。しかしもっと重要な問題はアメリカが世界への民主主義の普及に積極的に取り組むかどうかである。アメリカは今も民主主義の普及を外交政策上の必要命題としているという見方は広まっている。しかしカーネギー国際平和財団のトマス・カロザース氏はオバマ政権下において民主主義支援への援助の予算は28%も減額されていると指摘する。アメリカ国際開発庁は最も深刻な犠牲者で、これによって中東アフリカでのプロジェクトは大幅な縮小を余儀なくされた。このようになったのもアメリカ国民と政策形成者達が民主主義への援助に懐疑的になっているからである(“Why Is the United States Shortchanging Its Commitment to Democracy?”; Washington Post; December 22, 2014)。

国際舞台でのイラク戦争に対する激しい批判がアメリカ国民を孤立主義に追いやったことに疑問の余地はないが、それは9・11テロ攻撃に対する防衛的反応があれほどまでに厳しく非難されたからである。アラブの春の失敗によってアメリカは民主主義の普及にはさらに消極的になった。アラブの論客達はこの地域の腐敗と不安定化は欧米とシオニストによるものだとしているが、その多くは彼らの社会の中にある。社会経済格差と民族宗派のみならず、アラブ諸国は反アラブ主義のスローガンにもかかわらず統一に向かう気配はほとんどない。法の支配と政治参加も不充分である(“The Arab Winter”; Economist; January 9, 2016)。国際社会とアラブ世界でのそのような反応によって、オバマ大統領に世界の警察官から降りることを口にするようになった。それによってオバマ政権は自由な世界秩序を維持するというアメリカの特別な役割を放棄したとして、国際社会には悪い印象を抱かせることになった。

アメリカの同盟諸国は今回の選挙によってオバマ政権による超大国の責務放棄が覆されるように切望していた。しかし事態はむしろ逆になりかけている。民主党でも共和党でも孤立主義が台頭している。それはアメリカの長年の同盟国にとって失望すべきことである。忘れはならぬことは、民主主義の普及と同盟ネットワークは相互に絡み合って戦後のアメリカ外交政策の中核をなしてきたということである。ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン氏は自著の『アメリカが作った素晴らしき世界』(The World America Made )で、この二つがどのように相互作用しているかを述べている。アメリカは常に同盟国を伴って戦争を戦っているが、ソ連と中国は事実上単独で戦ってきた。ベルリンの壁の崩壊からほどなくして旧ワルシャワ条約機構諸国はNATOに加盟した。旧ソ連構成共和国のウクライナとジョージアもこれに追従しようとしている。太平洋側ではフィリピンや旧敵国のベトナムまでの東南アジア諸国がアメリカのプレゼンスによる中国の脅威の排除を望んでいる。実際にはこの地域の国々はアメリカにも中国にも支配されたいとは思わず、ただ自国の独立を求めているだけにもかかわらず。

こうした国々がアメリカの覇権を受け入れているのは、アメリカには領土的欲望もなければ他国の主権を侵害する意図もないからである。また民主主義の価値観は国際舞台でのアメリカの指導力を強化する。ジョセフ・リーバーマン元上院議員とジョン・カイル元上院議員は「アメリカが指導力を発揮するためには自由の原則に基づいて安全保障と繁栄を相互一対で追求してゆかねばならない」との見解を詳細に述べている(“Why American leadership still matters”; AEI American Internationalism Project Report; December 3, 2015)。さらに両元議員ともアメリカの価値観の普及と国益の追求の関係を「人権と民主主義の理念への支援は単なる利他主義ではない。民主主義諸国はアメリカと戦争することもテロ支援に走ることもなく、難民を流出させることもない。民主主義の国であればアメリカと同盟関係になり、経済でもより良いパートナーになってくれる」と主張する(“The case for American internationalism”; Catalyst; January 20, 2016)。

しかし全ての候補者がこうした外交政策上の財産の重要性を理解しているわけではない。特に共和党のドナルド・トランプ氏はアメリカからのメキシコ人やイスラム教徒の締め出しばかりか、シリアと北朝鮮への非関与を主張する一方で、民主党のバーニー・サンダース氏はほとんど国内の社会経済格差にかかり切りである。今回の選挙での各候補の外交政策に触れてみたい(“Campaign 2016 --- Candidates & the World”; Council on Foreign Relations)。現在の候補者の間では、マルコ・ルビオ氏が全世界へのアメリカの価値観の普及に最も積極的である。ルビオ氏の外交政策での基本的な考え方は国際社会での特別な役割を強く意識するアメリカ特別主義であり、オバマ政権はアメリカを他の諸外国と同一化しようとしていると嘆いている(“Rubio: ‘Obama Wants America to Be Like the Rest of the World’”; MRC TV; January 28, 2016)。その結果「我が国は同盟国から信頼されなくなった。敵対国からも恐れられなくなった。そして世界はアメリカがどのような立場なのかわからなくなった」と主張する(“Rubio’s ad: “Our enemies don’t fear us’”; Hill; December 30, 2015)。そして中国からキューバにいたるまで専制体制に対する市民のエンパワーメントを支持している。他方で国内で厳しいテロ監視を維持するために自由法には反対票を投じた。

民主党のバーニー・サンダース氏と共和党のドナルド・トランプ氏は民主主義と人権の普及に不熱心どころか正反対の立場であり、両候補とも極端に内向きである。サンダース氏はほとんど国内格差と労働問題を中心に訴えているが、同盟国や友好国との多国間協力を重視している。国内での市民の自由に関しては、サンダース氏は保守派のリバータリアンと同様にテロに対する安全保障のための厳しい監視に反対している。最も問題がある候補者はドナルド・トランプ氏で、それは彼が孤立主義者だからである。この人物のイスラム教徒とメキシコ人に対する炎上発言からすれば、アメリカの価値観を信じているかどうかはきわめて疑わしい。核の三本柱や戦時国際法に関する発言に典型的に見られるように、とトランプ氏の外交政策に関する知識はきわめて貧弱である。トランプ氏の人権軽視は水責め拷問に関する見解で明らかになり、それに不快感を抱いたマイケル・ヘイドン元CIA長官は軍には正当な理由でトランプ氏の命令を拒否する場合もあり得ると言明した (“Former CIA director: Military may refuse to follow Trump’s orders if he becomes president”; Washington Post; February 28, 2016)。彼の外交政策に関する見解はグローバル経済と自由な世界秩序に対するブルーカラーの不信感に基づいている。トランプ氏は「アメリカが作った世界」など全く信じていない。よって民主的な同盟諸国も信用せず民主主義の普及にも関心はない(“Trump’s 19th Century Foreign Policy”; Politico; January 20, 2016)。それどころかキューバとの国交正常化をビジネス・チャンスととらえるような例外的な共和党候補者なのである。

その他の候補者では共和党のテッド・クルーズ氏とジョン・ケーシック氏から民主党のヒラリー・クリントン氏まで、国際主義と孤立主義の間の立場である。彼らは大なり小なりリアリストで、必ずしも民主主義の普及を強力に推し進めようとしているわけではない。クリントン氏はファースト・レディであった1995年に中国の一人っ子政策を批判したが、国務長官として推し進めたアジア転進政策は通商志向を強めていた。国内ではクリントン氏は移民に対してより「人道的」な処遇を主張し、ティー・パーティーのリバータリアンと同様の論拠から自由法を支持している。他方でクルーズ氏は微妙な立場にいる。中国やイランといった地政学的に敵対的な体制の国には人権問題で強硬な政策を主張しながら、「レジーム・チェンジ」についてはイラクおよびアフガニスタンのように長期で大規模な兵力駐留への怖れから否定的な見解である。国内ではクルーズ氏はリバータリアンを代表するランド・ポール氏とともに愛国法から自由法への更新によるテロに対する監視の緩和を働きかけた。これは小さな政府を信奉するティー・パーティーのリバータリアンと道徳主義的な福音派を支持基盤としていることも影響している。しかしクルーズ氏がネオコンとは相容れずアラブの民主化にも懐疑的なのは、それだけが理由ではない。

自らをレーガン後継者とするクルーズ氏の外交政策は、ジーン・カークパトリック氏に負うところが大きい。カークパトリック論文(“Dictatorship and Double Standards”; Commentary; November 1, 1979)に基づいて、クルーズ氏はシリアのバシャール・アル・アサド大統領のような好ましからざる独裁者とも共存を厭わず、道義的な介入による予測不能な混乱を避けようとしている(“Ted Cruz’s un-American ‘America First’ Strategy”; Foreign policy; December 16, 2015)。カークパトリック流ダブル・スタンダードはソ連への対抗のためにとられた。ネオコンや進歩的国際主義者とは違ってカークパトリック氏は文明の普遍的な進歩に懐疑的で、理想主義者よりもリアリストであった。しかしクルーズ氏はレーガンが常に彼女の助言に従ったわけではないことは、親米反共で知られたフィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領が政権を追われた時の対応からも明らかなことを見落としている(“Ted Cruz's New Foreign Policy Isn't Conservative”; National Interest; August 1, 2014)。クルーズ氏が中国やイランのようなアメリカの戦略的競合相手とシリアやエジプトのようなアラブの好ましからざる専制国家との間でダブル・スタンダードをとっていることは、自由と人権の擁護者という世界の中でのアメリカの立場を低下させかねない。

外交政策での民主主義の普及は内政とも関連し合っている。この観点からドナルド・トランプ氏は最悪の候補者である。メディアに対する傲慢な態度、群衆の暴力を刺激する炎上発言、マイノリティーや女性や身体障碍者への侮辱での悪名には凄まじいものがある。トランプ氏が人権を訴えかけたところで世界はまず効く耳を持たない。普遍的な価値観の追求とその成果はアメリカ外交政策の財産である。国家安全保障の有識者達がトランプ氏の傲慢で無知な孤立主義を非難する公開書簡が、アメリカ国際主義の反撃の狼煙となることを望んでやまない。

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