2026年1月16日

実際の国防能力こそ、国防費のGDP比率よりも重要である

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冷戦以来、アメリカは世界の警察官であろうがアメリカ・ファーストであろうが、同盟国に対し負担分担のために国防費の増額を強く求めてきた。しかし私は常々、なぜ支出の金額については多くが語られる一方で、その使途や実施方法にはほとんど注意が払われないのかという疑問を抱いてきた。防衛戦略と調達の不一致は、集団防衛を弱体化させかねない。つい最近、イギリスのリチャード・バロンズ退役陸軍大将が私の長年疑問と言うべきこの点について深刻な懸念を表明した。

 

彼の論文について詳しく述べる前に、今日の世界の安全保障環境を概観する必要がある。トランプ政権の最新の国家安全保障戦略(NSS)は、これまで以上にアメリカ・ファーストを強調し、同盟国にさらなる防衛負担を強いている。さらに同盟国が防衛費を大幅に増額しない限り、アメリカは同盟から離脱するとさえ脅迫している。その結果、ヨーロッパとアジアの自由民主主義国は防衛予算の急増に伴い、自主的かつ多国間の安全保障政策協調を迫られている。さらに、こうした新たな安全保障枠組みをより効果的に機能させるためには、賢明な支出の検討も不可欠だ。ヨーロッパとアジアの両方において、ドナルド・トランプ大統領はウクライナと台湾においてオバマ流の「オフショア・バランサー」的な姿勢を取りながら、一方で西半球ではベネズエラやグリーンランドに見られるように略奪的な行動をとっている。彼はロシアとの領土・主権問題の解決よりも、ドンバスにおける鉱業事業の成立を優先している。また、最近の台湾をめぐる日中対立においても中国の膨張主義に対する地政学的な牽制よりも、貿易交渉を優先した。トランプ氏は自慢の経営感覚から、同盟国間の支出増加と米国の安全保障負担軽減を歓迎するだろう。彼には国防支出増加の使途や、同盟国との役割分担には関心がないようだ。

 

こうした世界の安全保障環境を踏まえ、イギリスとドイツの国防支出目標での戦略的相違に関するバロンズ元陸軍大将の議論について言及したい。 『2025年戦略防衛見直し』(SDR 2025)の主要執筆者の一人として、彼は抑止力と戦闘力における戦略的要求、そして10年後の財政能力という2つの点を考慮した(1)。さらにイギリスは他のヨーロッパ諸国と同様にトランプ氏の圧力に直面し、こうした制約の中で軍事予算を増額せざるを得ない。したがって、適切な目標に向けた賢明な支出が重要になってくる。イギリスが財政的および人員的制約を解消するために技術革新に投資している一方でドイツは財政規律を覆し、さらには徴兵制を再導入することでヨーロッパ最強の通常兵力を建設している(2)。他方でイギリスはグローバルな関与にもかかわらず、兵員数は年々減少している。

 

ドイツとは対照的に、イギリスはウクライナでの戦闘教訓に基づき、テックに基づく軍事改革を推進している。新たに構築されたデジタル・ターゲティング・ウェブはAI管理クラウドを介し、地域的にもグローバルにもイギリス軍のあらゆるセンサーをあらゆる兵器を接続できるようにする(3)。このようなアプローチには、革新的な産業基盤が必要となる。SDR2025では、「防衛はイギリスの経済戦略の中核において、≪新たな成長の原動力となる大きな未開発の潜在力を持つ≫」とさえ述べられている(4)。スターマー政権とトランプ政権が締結したTPD(技術繁栄協定)は、特にAI、量子コンピューター、民生用原子力エネルギーといった分野において、米国企業から英国のテクノロジー・エコシステムに3,500億ドルの投資を誘致している(5)。ジョン・ヒーリー国防相は「この協定で防衛、データ、AI技術におけるイギリスのリーダーシップが高まり、理想的な投資先となる」と誇らしげに述べた(6)。

 

他方でイギリスの野心的な計画は必ずしも称賛に値するものではない。バロンズ氏は、ドイツが通常兵器軍を急速に構築しているため英当局に対してこの計画に迅速に予算を配分して実施するよう強く求めている。さらにイギリスの革新的な構想とドイツの効率的な官僚機構を組み合わせることで、ヨーロッパの防衛能力を強化することを提言している。そして、この遅延の原因がホワイトホールの官僚主義的な縦割り主義にあると批判している。従来型の計画の方が将来志向の計画よりも迅速に開始できることは否定できない。しかし、戦略的合理性と効率性だけが国防費の使途を決定する理由ではない。各国の政治文化も影響する。ドイツの国防の主眼は、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえた緊急の領土防衛である。この目的のため、メルツ政権は将来志向の軍改革よりも、当面の軍備増強を優先した。さらに、ナチスとシュタージによる権威主義的監視という歴史的経験から、倫理的なハードルがドイツを軍事目的でのAI利用に慎重にさせている。ドイツ軍は人間による技術制御を優先し、完全運用可能なLAWS(自律型致死兵器システム)を禁止しているものの、人間が監視するAIシステムは認めている(7)。

 

このような立場の違いはGCAPにも見られる。イギリスは戦闘力増強と損傷リスク軽減のため、ACP(自律型協調プラットフォーム)すなわち「忠実な僚機」(loyal wingman)ドローンとネットワーク化された多目的戦闘任務向け司令センター型に傾倒していたのに対し、日本は老朽化したF-2を直ちに代替するため、F-35よりも高度なセンサーとネットワーク技術を備えた有人型を希望している。一方でイタリアは、F-35の極めて高いコストと技術移転に対する厳しい制約に不満を抱いている。GCAPパートナーは共通の有人機を製造し、その後に各空軍の要件に合わせて調整することで、これらの研究開発目標のギャップを埋めることで合意した(8)。

 

しかし、ウクライナでの戦争は軍事戦術を劇的に変えてしまったため、上記のようなイギリスと日本の間の立場の違いは予想よりも早く縮小する可能性がある。高市早苗首相は1月5日の伊勢神宮への初詣後、自身の内閣では岸田政権の国家安全保障文書を見直してドローンとAIネットワークシステム(9)に重点を置くことを訴えた。また、防衛産業の強化は今世紀における日本経済の新たな牽引力となると述べた。これらの点は、イギリスのSDR2025で述べられていることと概ね一致している。これにより、GCAPにおける日本の立場はイギリスとより一致する可能性もある。ドイツとは異なり、日本はAI兵器に関する倫理的なハードルが低い。

 

ドンロー・ドクトリンを掲げるアメリカがより自国第一になる時代において、国防費増額の支出目標はかつてないほど重要になっている。バロンズ元陸軍大将はイギリスとドイツの防衛計画を比較し、重要な問題を提起している。ミニラテラルまたは多国間の政策協調においては、戦略的合理性とパートナーの政治文化を考慮する必要がある。英独そして日英の優先順位の違いは、無数の事例の氷山の一角に過ぎない。国防強化というと火力の規模や兵器の選択が話題になりがちだが、AIネットワークシステムとそれに伴う問題も軽視すべきではない。AIネットワークシステムの重要性はますます高まっている。増額された国防予算をどのように使うべきか?各国は改めて考えるべきである。

 

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2025年11月13日

やはりトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦してはならない

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去る11月4日の衆議院本会議にて立憲民主党の野田佳彦代表が高市早苗首相に対し、ドナルド・トランプ米大統領へのノーベル平和賞推薦に対して質問をした。高市氏は当件への回答を巧妙に避けた。そんな姑息な手段で本件の幕引きを許してはならない。何と言っても、高市首相はトランプ大統領の「犬猫食い」発言の猿真似で「鹿蹴り」発言をしたほどである。そして自民党総裁選および衆参両院の首相指名選挙でも、このようなトランプ流デマゴギーを駆使した候補者は他にいなかった。どうやら高市氏は相当なMAGA脳の持主のようだ。

 

今日の国際政治において地政学上のパラダイム・シフトが頻繁に議論されているが、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞する事態ともなれば普遍的な国際規範が軽視される価値観のパラダイム・シフトまで起きかねない。現在、右翼ポピュリズムの拡散は国家間の対立激化にも劣らぬほど、国際安全保障の脅威となっている。なお安倍政権期にも日本はトランプ氏をノーベル平和賞に推薦していたが、当時はあの大統領の子供じみた虚栄心の吐露も一種のジョークだと受け止められていた。しかし2期目になって、トランプ氏の個人的欲望が強い狂気を帯びていることに留意すべきである。

 

先稿ではトランプ氏へのノーベル賞平和賞推薦に反対する理由を長文で述べたが、本稿では以下の3点に絞りたい。

 

第一にトランプ政権による国内派兵は、世論に厳しく非難されている。兵の正しい運用は国家統治の基本であり、それができない政治家では平和の達成など覚束ない。いかなる国であっても、国軍の最高司令官は適正手続きで軍事力を行使せねばならない。トランプ氏は民主党の州政や市政下にある地方自治体に政治低圧力をかけようと、犯罪や非登録移民の撲滅を名目に各地の州兵を動員している。あまりに強引な手法に、軍が自国民に銃を向けるのかと非難の声が高まっている。まさにトランプ大統領への軍事指揮権付与は、「気狂いに刃物」である。そのため全米各地の司法の場で、こうした州兵派遣には次々と違法との判決が出ている。日本人にも馴染みの話では、NDLON(全米日雇い労働者組織化ネットワーク)が移民排斥への抗議から、本年ワールド・シリーズ優勝のロサンゼルス・ドジャースに対してトランプ大統領との会見辞退を求める多数の署名を寄せている。

 

第二にトランプ大統領は核実験再開の方針を打ち出してしまった。長年にわたる核軍縮の機運を後退させる動きである。トランプ政権のクリス・ライト、エネルギー長官は再開される実験は核爆発を伴わぬ臨界前核実験だと表明した。これなら包括的核実験禁止条約で禁止されていないとはいえ、その直後にロシアも核実験再開を宣言した。中国など他の核保有国もこれに続く懸念もある。やはりアメリカ・ファーストで国際協調を顧みないような大統領は、ノーベル平和賞に相応しくないのだ。

 

第三にトランプ大統領が受賞し、それで大々的に勝ち誇った態度で自己宣伝に走る事態の悪影響も考慮すべきである。あの粗暴で自己顕示欲が強いトランプ氏だけに、それを契機に大統領選挙での三選出馬をさらに強く主張しかねない。そもそも彼は2020年大統領選挙で落選した際には1月6日暴動を扇動したほど、何事もゴリ押ししてきたような人物である。そのような右翼ポピュリズムによる民主主義の危機の悪化に、日本が手を貸すようなことがあってはならない。

 

とはいえ高市氏は自説を曲げぬ頑迷なところがあるとも言われる。となると、かなりの大物政治家でもないと現首相に助言はできないだろう。上記3つの問題点の内、第一と第二に関しては知見豊かな首相経験者もいる。岸田文雄元首相は核軍縮がライフワークであり、石破茂前首相は軍事オタクとして知られている。両元首相とも、現時点では自民党低迷の一因となった「政治とカネ」スキャンダルに関わっていないことになっている。それもまた、両人の強みでもあろう。

 

私は国際政治を主要テーマとする者で、永田町内の党利党略も派閥力学も二義的、三義的な関心事に過ぎない。そして右翼ポピュリズムの拡散による世界秩序の破壊および普遍的な価値観と規範のパラダイム・シフトは、国際安全保障への重大な脅威だと見做している。そうした立場から、日本政府によるトランプ米大統領へのノーベル平和賞推薦の問題が幕引きされてはならないと訴えたい。

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2025年11月 4日

高市首相のMAGA追従外交に異議

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先の日米首脳会談にて、新任の高市早苗首相がドナルド・トランプ米大統領のノーベル平和賞受賞を支持したことに唖然とした。私はそれまで別の件での投稿を準備していたがこれを黙って見過ごすわけにはゆかず、今回はそちらを延期して急遽本件について寄稿することとする。

 

 元々、私は先の自民党総裁選挙より高市氏の言動を危険視していた。そして最も望ましいと思った自民党総裁候補は林芳正官房長官(当時)であった。私が高市氏への危険視を強めるようになった契機は、あの「鹿蹴り」発言である。その発言は排外主義だと批判され、さすがの高市氏もこれを引っ込めざるを得なくなった。だが私は同発言の時の高市氏の目付きには本能的な恐怖感を抱いた。まるで嘘でも何でも競争相手を言いくるめ、国民を扇動させた者の勝ちだと言わんばかりで、そのためには手段を選ばぬような目付きだった。これについては心理学者などによる、さらに専門的な分析が必要ではあろう。ともかく権力奪取のためにはこうした出鱈目な大衆扇動も辞さないやり方は、トランプ氏の「犬猫食い」発言と軌を一にするものである。右翼ポピュリズム、恐ろしや。

 

 そして新総裁は就任早々、参政党との連立協議まで行なった。これは実現しなかったものの、高市政権の右翼性を示すものとなった。トランプに対するノーベル平和賞受賞の推薦は、こうした一連の言動の延長線上にあるものだ。だからこそ、私は先の日米首脳会談に見られた、高市氏のMAGA追従に唖然としたのである。

 

 ところでトランプ氏はノーベル平和賞の受賞に相応しいのだろうか?まず国際社会での業績を評価するならガザとウクライナの和平が二大案件となるが、どちらも平和構築の目処は立っていない。ガザではイスラエルとハマスの人質交換を大々的に誇示したトランプ氏だが、その後はハマス武装解除の見通しは立っていない。そもそもイスラエルの人質解放人数では、バイデン政権の方が多かった。そしてウクライナでもロシアの攻撃が収まる気配はない。ウラジーミル・プーチン大統領とトランプ大統領の間の良好なパーソナル・ケミストリーは、和平には全く役立たない。印パ紛争ではパキスタンは満足したが、インドはトランプ調停に不満である。他のトランプ調停も完全に問題解決というわけではない。とてもではないが、ノーベル平和賞に値する成果など挙がっていないのである。

 

 そしてトランプ氏をノーベル平和賞に推薦しているのがどのような国かとなると、世界でも最高水準の自由民主主義体制の国は皆無である。まず中東唯一の民主国家を標榜するイスラエルであるが、ネタニヤフ政権のガザ攻撃は民間人への過大な被害から人道面で国際的に非難されている。その他の支持国も専制国家や右翼ポピュリズムに統治される国々ばかりである。具体的な国名を挙げると、アルメニア、アゼルバイジャン、カンボジア、ガボン、ルワンダ、アルゼンチン、ハンガリー、ギニア・ビサウ、セネガルといった顔ぶれである。日本は明治維新以来、世界の文明国あるいは一等国の仲間入りを国是に邁進してきた。高市首相のノーベル平和賞推奨宣言は近代日本の歴史的な方向性とは逆で、日本を「恥知らずリーグ」の仲間入りさせてしまう。

 

 トランプ氏の平和賞受賞資格について、何よりも問題視すべきは軍の正しい使い方を知らないということである。これでは平和の政治家とは、とても呼べない。トランプ大統領は非登録移民をめぐる国内での政治闘争に軍を動員しているが、これでは戦争に向けても平和に向けても指導力を発揮できない。ラテン語の有名な諺で“Si vis pacem, para bellum.”(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ。)と言われるように、軍の使い方を誤っての平和は有り得ない。トランプ政権は国内では民主党市政のシカゴやポートランドなどに、犯罪や非登録移民への対策と称して州兵を派遣している。こちらは大統領の一方的な命令では派兵できないはずである。また麻薬対策と称し、議会の承認もなくベネズエラの船舶を攻撃している。トランプ政権は理由も、その論拠となる証拠も、議会や国民への説明責任もなしに、自分達には相手が誰であろうが所構わず殺傷する権利があると主張する。そのような主張を、保守系反トランプ派の代表的論客であるウィリアム・クリストル氏は厳しく批判している。ともかく、こんな大統領なら勝手に核実験くらい再開するだろう。このように国際政治のみならず、国内政治の観点から見てもトランプ大統領はノーベル平和賞には値しない。なぜ高市首相は嬉々として、このような人物を推薦するのだろうか?日本国の最高指導者の思考や感性がMAGA化しているなら、由々しき問題である。

 

 とはいえトランプ政権がグローバリズムへの被害妄想を抱えるMAGA岩盤支持層を基盤としているため、彼らとディールに至るにはある程度のご機嫌取りも止むを得ない場合も想定される。日本のリベラル派にはそうした覚悟もなく、いたずらに「対米追従」を批判しているようでは甘い。トランプ氏本人や、真っ赤なMAGA帽を被って反グローバル主義と反エリート感情を爆発させる人達は実に難儀な存在である。そんなトランプ政権が世界各国に仕掛けた関税紛争で、比較的好条件でディールに漕ぎ着けたのが、イギリスのスターマー政権である。それでも従来より高い10%の相互関税となっている。

 

 注目すべきは、先のトランプ氏訪英時でのテック投資合意と国賓待遇だろう。このテック合意はイギリス国内の世論を二分している。アメリカからの投資誘致によるテック産業への梃入れについては、保守党のウィリアム・ヘイグ元外相が賛同していることからして超党派の国策だと言える。他方キャメロン連立内閣で副首相を務めた自由民主党のニック・クレッグ元党首は、このディールでは国内のスタートアップ企業への支援につながらず、イギリスはアメリカの大手テック企業のデータ・センター化するだけだと懸念の意を表している。そのような国論の二分はあっても、韓国イ・ジェミョン政権も先のトランプ大統領訪韓でテック投資のディールに至っていることも忘れてはならない。

 

 またノーベル平和賞をめぐって子供じみた虚栄心を臆面もなく誇示するトランプ氏には、スターマー政権は王室歓待で相手の俗物丸出しの欲望を満足させた。労働党で生真面目な性格のキア・スターマー首相は、本来ならイデオロギーの面でもパーソナル・ケミストリーの面でもトランプ大統領と相性が良いとは言えないだろう。それだけに一連の交渉と歓待には相当な忍耐を要したと思われる。だがあれは党派やイデオロギーがどうあろうと対米関係を重視するという、戦後のイギリス外交政策の基本に則ったものではあった。いずれにせよ比較的好条件と言われるイギリスでさえこの有様で、各国とも独特な固定観念で世界を見るトランプ政権とのディールには難渋している。先の首脳会談での「対米追従」を批判する日本のリベラル派は、交渉案件となった各問題によほど詳しいのだろうか?それなら、もっと具体的な批判が求められる。高市首相が好きでも嫌いでも、漠然とした批判は無意味である。先述のクレッグ元英副首相が具体的に論点を絞って英米合意を批判していることに留意すべきである。ただし、そこまで低姿勢のスターマー首相でもノーベル平和賞推薦はしていないと念を押しておく。

 

 いずれにせよノーベル平和賞推薦の件は高市氏の右翼言動に連動しているので、日本政治で「ガラスの天井」が破られたという議論には疑問の余地がある。右翼政治家には専制君主のように権威主義的な傾向がある。そうした政治家の政権で、ジェンダーや人種などでの「ガラスの天井」が破られることはほとんどない。歴史を顧みれば、ロシアの啓蒙専制君主エカテリーナ2世の治世で「ガラスの天井」など破られはしなかった。周知のようにエカテリーナ大帝の強権的な内政および外交政策は、ルースキー・ミールの理念を掲げてウクライナに侵攻しているプーチン政権にとって模範となっている。今のクレムリンが世界でも際立ってマチズモ志向が強いことにも留意すべきである。従って高市首相への女性政治家としての特別視は、一切合切不要である。新首相のリーダーシップについては、統治、イデオロギー、扇動手法といったところを冷静に見て行くべきだろう。丁度、エカテリーナ2世やウラジーミル・プーチン大統領について議論する時のように。

 

 そのように右翼権威主義的な高市首相は先の自民党総裁選にて、「働いて、働いて、働いて、働く」という政治姿勢を訴えた。しかし件のノーベル賞推薦のように指導者が国を悪い方向に導くようなら、働き過ぎない方が好ましい。実際に第二次世界大戦時の東條英機首相は「働いて、働いて、働いて、働きまくって」くれたために、日本の国家と国民には壊滅的な被害を及ぼしてしまった。確かにトランプ氏は合衆国大統領の地位にあるが、実質的にはたかがMAGAの大統領に過ぎない。よって、あのように節操のないノーベル賞推薦では米国内の反MAGA派に喧嘩を売っているように見えてしまう。現在、日本でもヨーロッパ諸国と同様に安全保障での対米依存低減によるトランプ外交からのリスクヘッジが議論されている。しかし軍事的に「ひよわな花」に過ぎない日本の自主独立防衛は考え難く、アメリカ抜きでのヨーロッパやインド太平洋諸国との多国間パートナーシップにも過大な期待はかけられない。となると米国内の反MAGA派との連携こそ、トランプ外交への最強のリスクヘッジとも考えられる。そうした観点からもトランプ大統領への過剰な平身低頭は再考すべきである。

 

 先の日米会談では安倍レガシーが再三強調され、日本では官民挙げて両首脳のパーソナル・ケミストリーを過剰に重視されていたように思われる。しかし当の故安倍晋三首相が自身の回顧録に記したように、そんなものは全く当てにならない。実際にトランプ氏は内政でも外交でも、自分に忠実な者を容赦なく切り捨てるほどだ。有力国首脳でもインドのナレンドラ・モディ首相とはトランプ政権1期目には良好な関係だったが、2期目には関係悪化している。他方でイギリスのスターマー首相はこの政権と何とか良好な関係に努めている。以上、本稿に記した米国内や世界各国の動向に鑑み、高市首相にはトランプ大統領へのノーベル平和賞推薦を取りやめてもらいたい。

 

 

 

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2025年8月19日

先の参議院選挙と日本の国際主義

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去る7月20日の参議院選挙は、まるで低俗リアリティーショーのような結果となった。右翼ポピュリストの参政党が大躍進を遂げたが、彼らもアメリカのトランプ政権をはじめとする欧米の極右と同様に「中心の薄弱なイデオロギー」に基づいて排外主義を叫び、自分達への反対勢力に対するヘイト感情を煽り立てている。このような過激派に国家を乗っ取られないためにも、私としては超党派での国際主義者の連帯を訴えたい。

 

普段からの拙稿の内容の通り、私は永田町ウォッチャーではない。日本の内政については全くの門外漢である。よって本稿では先の選挙の分析を行なうこともなく、今後の政局について語ることもない。そして石破茂首相の留任についての是非も問わない。ここでは日本の国際主義とはどうあるべきか?それをどのように内政と外交に反映させるべきか?そして排外主義とヘイトのポピュリズムに、どのように対抗してゆくべきかを模索したい。参議院選挙直後の現時点では、永田町は党利党略にまみれた「コップの中の嵐」の状態にある。しかし今や世界秩序の破壊者となった右翼ポピュリズムを黙って見過ごすわけにはゆかない。先の選挙では参政党の躍進が注目されているが、他にも日本保守党、日本誠真会、NHK党など右翼ナショナリスト政党が、雨後の筍のように数多く出現した。

 

日本の繁栄と安定には、対外的にも対内的にも自由で開かれた社会が必要である。そうした社会がもららす、人、物、資本の自由な移動が国民生活を質量とも豊かにしてきた。また日本の内政も外交も、戦後のリベラル世界秩序からの恩恵を多大に受けてきた。そもそもアレクサンダー大王のペルシア帝国征服によるヘレニズム文明の繁栄以来、グローバル化は人類の歴史の進化を推し進めてきた。逆に反グローバル化の時代には歴史の退化が見られる。そうした例には、ローマ崩壊後のヨーロッパや明代からの海禁政策で世界から取り残された中国がある。現代の日本に於いても、歴史の退化をもたらす排外主義の台頭は座視できない。

 

過激ナショナリズムの何が悪いのかと言えば、それが他者に対する排除の意識に基づいているからである。すなわち「自分達が犠牲になって、あいつらが得をする」という、ゼロ・サム的世界観が彼らの思考の根底にある。そうした排除意識は外国人に対してだけでなく、自国民にも向いてしまう。先の参議院選挙に於いて、 参政党の神谷宗幣代表は「「子どもを産めるのは若い女性しかいない。男性や、申し訳ないけど高齢の女性は子どもは産めない」との発言で物議を醸した。私はこれが女性の問題に留まらず、ただならぬものを示唆していると瞬時に読み取れた。すなわち生殖と生産に関わらぬ者は国家のお荷物であり、彼らはこの国の福祉を享受すべきではないと。神谷氏のこうした思考は、ナチスが身体障碍者や知的障碍者に社会不適格のレッテルを貼って強制収容所送りにした所業と軌を一にするものである。彼が唱える日本人ファーストとはドナルド・トランプ米大統領が唱えるアメリカ・ファースト同様に、自国民に対しても排除意識丸出しである。

 

さて先の参議院選挙では自民党が本来の保守政党でなくなったから、右翼ポピュリスト政党に保守票が流れたと言われる。だが世界的に見れば、保守主義の定義は揺れ動いている。本欄で日本版国際主義のあり方を模索するうえで、まずこの点を踏まえて議論してゆきたい。大きな違いが見られるのは、レーガン・サッチャー時代の保守主義とトランプ時代の保守主義の間である。前者の保守主義は排外意識や被害者意識に基づいていないが、後者の保守主義は排外意識と被害者意識丸出しである。だからこそサッチャー政権下の要職を歴任したクリス・パッテン上院議員(後任のメージャー政権で最後の香港総督)は『プロジェクト・シンディケート』誌への寄稿で、「レーガンのアメリカ」との大西洋同盟関係を重視しながら「トランプのアメリカ」との関係には懐疑的だった。上記のような世界的な保守主義の定義の揺れに鑑みれば、先の参議院選挙での自民党敗戦は参政党など右派政党への保守票の流出が原因だという議論には疑問を呈したい。そして日本における自民党の保守本流とは吉田ドクトリンの忠実な継承であって、貿易立国を標榜する国際協調路線である。むしろ自民党の歴代総理総裁は保守本流を称しながら、実際の政策では一貫してかなりリベラルだったのではないか?

 

そうした疑問に応えるべく、ハドソン研究所のウォルター・ラッセル・ミード氏が提唱するアメリカ外交の4類型を歴代の自民党総理総裁に当てはめてみた。すると皆押しなべて「ハミルトニアン」になる。その典型は吉田茂首相や池田勇人首相である。「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介首相は内心では皇国ナショナリストとも見られていたが、実際の政策は貿易立国であった。岸氏の孫に当たる安倍晋三首相も同様である。すなわち自民党の保守本流とは、元々リベラル色が強かったのだ。先の参議院選挙で流出したとされる保守票は自民党の中核支持層ではなく、異端派である。そのために落選したとされる自民党右派の中でも杉田水脈氏は過激ナショナリズムや差別発言で物議を醸しがちで、自民党本来の支持層が嫌う候補であった。杉田氏のようにむしろ参政党とも思想が近いとされる政治家は、自国の国益を強引に押し出して国際社会との摩擦も厭わない「ジャクソニアン」に当たる。実際にアンドリュー・ジャクソン大統領は奴隷制の支持や先住民虐殺で悪名高く、合衆国史上最悪のレイシストでもある。国際非介入主義でリベラルな「ジェファソニアン」について日本で該当するグループは、一国平和主義を唱える護憲左翼が該当する。

 

アメリカの積極的な国際介入による人類普遍の理念の実現を標榜する、「ウィルソニアン」の日本版となるような政治家はいない。安倍晋三首相は「自由で開かれたインド太平洋」構想を唱え、岸田文雄首相は「今日のウクライナは明日の東アジア」だと訴えた。だがいずれも日本が国際公益を主導するほど強力なものではない。安倍氏の構想はリベラル国際秩序の強化を目指すように見えるが、それには祖父の岸首相ばりのナショナリストとリアリストの観点もブレンドされている。そして岸田氏が任期末に国賓として訪米した際に連邦議会にてアメリカ国際主義の継続を呼びかけたが、さすがに第二次世界大戦の英雄ウィンストン・チャーチル英首相ほどアメリカの国際主義世論の高揚に至らなかった。両者とも戦後の自民党総理総裁の例に漏れず「ハミルトニアン」の範疇に留まる。以上の議論より、末端ナショナリスト票の流出が自民党にとって痛手だったという見解は再検討を要すると思われる。

 

以上の分類より、日本版国際主義とはどのようにあるべきだろうか?その前に諸外国に於ける国際主義を概括してみる。まずアメリカで国際主義が台頭したのはセオドア・ローズベルト大統領からウッドロー・ウィルソン大統領の時代で、この国が従来の孤立主義を脱して国際政治で大国に相応しい役割を担うべきだとの主張が高まった。そして自由と民主主義という、アメリカの価値観の拡散が模索されるようになった。ただしトランプ政権になって人権問題が軽視されるなど、アメリカならではの価値観外交は影を潜めている。これに対しヨーロッパでは二度にわたる世界大戦の経験から多国間主義に基づく地域統合と、前時代の植民地帝国からの脱却が模索された。EC加盟の後発国だったイギリスでは、ナショナリスト気運の高まりでブレグジットとなった。しかし、その後はEU離脱派の首相が続いた保守党政権もグローバル・ブリテンの名の下にインド太平洋地域への戦略的傾斜やウクライナ支援の主導といった、国際主義の外交政策を採用している。スターマー労働党政権になってからは、EUへの復帰には至らぬものの、ウクライナ危機への対処もあってドイツやフランスなどとの関係も改善している。ブレグジットが必ずしも国際主義の後退をもたらしているとは言えない。

 

それでは日本版国際主義、それも党派の枠を超えて掲げられるべき理念とはどのようなものになるだろうか?近年になって近隣諸国からの脅威の高まりから、日本国民の間でも戦後平和主義が見直されるようになった。それでも日本が得意とする分野は軍事を中心としたハードパワー外交よりも、非軍事を中心としたソフトパワー外交であろう。そしてFOIPやウクライナでの戦争をめぐる日本外交でも見られるように、「法の支配」や「力による現状変更の否定」といった普遍的原則も訴えてゆくことになるだろう。しかし先日オーストラリアへの「もがみ」級フリゲート艦輸出という史上初の大型武器輸出契約が成立したとはいえ、日本の外交方針は基本的に「ハミルトニアン」であり続けるだろう。しかし世界各国に友好的な貿易立国という従来の立場を超えて、国際秩序での原理原則の遵守を訴える「ウィルソニアン」への傾斜を強めてゆくべきだろう。ただしアメリカのネオコンなどが自国外交について唱える「世界の警察官」の一翼を担うほどにはならぬであろ。

 

非軍事分野では開発援助やエンパワーメントなども日本のリーダーシップ発揮が期待される分野ではあるが、ジェンダー問題での国際的な存在感発揮をという主張の妥当性は微妙である。日本での女性の社会進出指標は主要先進国どころか途上国と比較しても低い。その一方で日本では「男性、若年、高学歴」よりも「女性、高齢、低学歴」の方が幸福度は高いという、世界の趨勢とは正反対の調査結果もある。こうした相反する結果があるからこそジェンダー問題での国際的リーダーシップという構想に疑問を抱きながら、他方ではこれが日本のソフトパワー外交で重要な案件にも成り得ると私にも思えてくる。

 

ここで注意すべきは、社会進出指標という統計データが立身出世という栄達を成し遂げた一部の者だけに注目しているということだ。大多数にとって、これは全く無縁な数字である。2016年にアメリカ大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントン候補が史上初の女性大統領誕生かと世界的な注目を集めた。しかし米国内の地方の女性有権者の多くは、それはクリントン氏のようなエリートの問題で、自分達には何の関係もないという態度だったことを忘れてはならない。その一方で幸福度の統計となると、その結果に至る背景は明確に説明できない。ともかくジェンダー問題での日本のリーダーシップには、かなり未開拓な課題が多い。

 

国際主義とは対外政策に限らない。内政では海外資本や外国人労働力の流入が、先の参議院選挙で争点にもなった。両者ともこの国の経済発展に不可欠であり、また倫理的にもヘイトは論外である。ただし国家安全保障や国内治安への懸念は払拭されるべきだろう。そうした実務上の諸問題もさることながら、ここで私は先の選挙結果で増長するナショナリストへの反撃のために、小渕政権期に朝日新聞の船橋洋一編集委員(当時)が提唱した英語公用語化の主張を掲げるよう提案したい。その直接の目的は開かれた社会を維持しながら、安全保障および治安の要求も充足させることである。これが中国語公用語化では、後者の点で問題がある。よって日本社会にとって望ましい外国人像を提示すべきであろう。それは「血と肌の色が何であれ、嗜好、見識、道徳および知性においてグローバル社会の正当な一員」という明確でヘイトのない基準であるべきだ。英語公用語化とは、この目的に向けた第一歩である。

 

日本政界には国際主義を担える人材はいる。自民党の林芳正現官房長官や茂木敏充元外相、そして国民民主党の玉木雄一郎党首ら政界の重鎮達だけで、与野党の枠を超えてハーバード大学閥ができてもおかしくない。他の海外名門大学出身者では、岸田政権の政策ブレーンだった木原誠二元官房副長官がロンドン・スクール・オブ・エコノミックス出身である。このように超党派で日本型国際主義を担える人材はいる一方で、右翼ポピュリズムの頭目である参政党の神谷宗幣代表は関西大学法科大学院終了となっている。すなわち神谷氏は法学専攻であったのだが、彼の憲法改正草案には 基本的人権の保障、思想・良心の自由、そして信教の自由といった、近代憲法の基本が欠落していたという。これは神谷氏の国家観云々といった問題にもならない。ちなみに私は大学でも大学院でも法学を専攻していないが、それでも彼がどれほどレベルが低いミスを犯したかわかるほどだ。一体、神谷氏は法科大学院で何を学んだのだろうか?

 

まだ先の選挙から時も経ず、永田町では総理が誰か、党派の合従連衡をどうするかで議員諸氏は忙しいようだ。いずれにせよ神谷代表のような人物にこの国の政治が振り回される事態は異様である。参政党はいずれ失速するとも言われているが、先の選挙では雨後の筍のように右翼ポピュリスト政党が乱立したことを忘れてはならない。彼らの打倒には、内政と外交の両面で超党派での日本版国際主義の在り方が模索されるべきである。全ての政策は、そうした基本理念あってこそ成り立つ。

 

 

 

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2025年5月 9日

「トランプの世界」での「日欧同盟」について、生成AIはどのように答えるか?

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は第二期目においては「政権内の大人」に煩わされることもなく、MAGAとアメリカ・ファーストの立場がさらに過激になったことを明示した。ウクライナ和平協定を取引本位で模索していることからもわかるように、世界は無秩序に向かいつつある。そのような世界では、自由民主主義諸国は、MAGA勢力の手に落ちたアメリカによる混乱を乗り越えるためのリスクヘッジが必要である。日欧同盟はこの目的に適うだろうが、それが大西洋同盟や日米同盟に取って代わるわけではなく補完的なものに留まるだろう。全世界に広がるアメリカの同盟国にとって、安全保障の傘を完全に放棄することは依然として非現実的である。このようにますます複雑化する世界において、生成AIは将来の政策の方向性を示すことができるのか?その一例として、トランプの世界での日欧同盟に関する私の質問に対するGrokの回答について述べたい。

 

Grokは最近になってツイッター(現X)に追加された生成AIアプリケーションである。日欧同盟については私のツイートからのプロフィール概要に基づいて、そのアプリでは以下のように簡潔に説明された。それには3点の戦略的根拠があり、ロシアがヨーロッパとアジア双方に及ぼす脅威、中国による全世界での一帯一路構想とFOIP(自由で開かれたインド太平洋戦略)への挑戦、そしてトランプ政権の略奪的なアメリカ・ファーストが挙げられる。実際のところヨーロッパと日本は情報共有や兵器の共同研究開発といった軍事協力、そして経済政策の調整を追求することができるであろう。政治的には、国連やG7における日欧の結束した発言はルールに基づく世界秩序の強化に繋がり、ウクライナ、バルト諸国、台湾といった小国が、ロシアや中国といった近隣の略奪的な大国に抵抗するうえで一役買えるだろう。問題は双方の地理的な遠隔性と、同盟から疎外に対するアメリカの不快感であると。

 

これは今回の主題の典型的な教科書的な序文に過ぎず、生成AIの真の思考能力を判断するにはさらに会話を続ける必要がある。これらの質問の中で、Grokが長々とした複雑な質問を、言葉だけでなくニュアンスまでも正しく理解し、どのように簡潔に議論を方向づけているかを注視したい。ここでは日欧関係とトランプのアメリカに関してのオーソドックスで予測可能な質問ではなく、私自身の関心による非オーソドックスな質問をいくつか見ていきたい (1)。

 

【質問1】:トランプ氏はメディアに対し、F-47次期戦闘機のモンキーモデルしか同盟国には提供できないと述べた。それは冷戦時代のソ連の所業である。彼の脳はあまりにもロシア化している。アメリカの同盟国は、GCAPやFCASといった独自のハイテク兵器への支出をもっと増やすべきか?またイランのF-14がイスラム革命から劣悪な状態に置かれているため、トランプ氏の発言は意味をなさない。彼には世界の安全保障よりも、次世代戦闘機の販売利益に関心があるように思われる。

 

これに対しGrokはトランプ氏が思考回路を「ロシア化」したわけでもなかろうが、同盟国の安全保障よりもF-47の輸出利益を優先しているという、モンキーモデルに関する私の懸念を条件付きで認めた。同盟国が「信用の置けない」F-47ではなく、イギリス、日本、イタリアによるGCAP、あるいはフランス、ドイツ、スペインによるFCASに支出を充てるべきかどうかという点については(2)(3)、Grokは双方の研究開発プロジェクトの概要を示し、GCAPは日本の対中国配備のスケジュールに間に合うが(4)、たとえ劣化版であっても将来的なF-47の調達を排除すべきではないとも答えている。私はこの回答について、次世代戦闘機の研究開発には何年もかかるため、アメリカで別の政権が将来登場すれば同機正規モデルの輸出を許可する可能性があるとの趣旨だと解釈している。他方でトランプ氏のようなナショナリストが、イランのF-14の場合のように同戦闘機の部品輸出を停止した場合のサプライチェーンの寸断というショックを起こす可能性については言及していない(5)。AIは質問の全てに答えるわけではない。

 

それでもこのAIアプリケーションは、トランプ氏によるソ連さながらのモンキーモデル輸出は彼の根深いアメリカ・ファーストを象徴しているのではないかという、私の質問の重要な点に答えた。この質問は長いうえにそれほど単純ではないが、生成AIは私の意図を深く理解している。興味深いことに私は質問文でGCAPをGPACと誤入力したが、それをGrokは正しく解釈した。

 

【質問2】:それでは、核抑止力について質問する。日本は独自核兵器を保有せずに、イギリスとフランスの核戦力強化のための研究開発を支援すべきか?日本が自主的に核武装すれば国際的な核不拡散体制の崩壊を加速させ、それが却って自国の国家安全保障に重大な脅威をもたらしかねない。またトランプ政権下のアメリカが同盟国を放棄した場合、日本は両国と核共有を行なうべきか?

 

日本は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を堅持しているため、この質問は非常に物議を醸してしまう。しかしトランプ政権第二期においてアメリカの核の傘の信頼性が低下するとあっては、日本にとってリスクヘッジは重要な課題となる。Grokは私の質問に対し、研究開発と核共有という二つの観点から回答した。そして前者については肯定的に評価する一方で、後者についてはやや慎重な姿勢を示した。日本には英仏の核戦力を支援するための資金と技術力がある。また日本が独自の核兵器を保有することで他の非核保有国への核拡散を刺激し、世界の軍備管理体制を破壊するリスクを冒すことは国際社会の利益にならない。これは日本と英仏との核共有にも当てはまる。しかし核共有では中国との緊張激化の懸念から、日本国内で反核感情がより深刻化しかねない。またこのようなリスクヘッジが模索されるなら、ナショナリスト傾向を強めるアメリカは同盟への日本の忠誠心に疑念を抱くことも考えられると。

 

しかしGrokが「日本では国内核兵器はタブーだ」と懸念していることに私が必ずしも同意できないのは、イギリスとフランスの核兵器のほとんどは陸上配備型ではないので恒久的に配備されることはないからだ。そうした兵器は必要に応じて日本の海上防衛または航空防衛施設に配備されるだけである。結局のところ、自主独立の核抑止力は日本にとって、最後の最後のそのまた最後の手段である。したがってアメリカが党派に拘わらずポピュリストの手に落ちて超大国の自殺行為に走る際の空白を埋めるために、英仏両国との核安全保障パートナーシップについて質と量の両面で検討する必要があるとも思われる。現状では両国合わせても、その核抑止力はあまりにも小さ過ぎる(6)。

 

非常に興味深いことに、イギリスはトランプ政権下のアメリカの統治が国家安全保障にとって重大なリスクとなっているため、アメリカ製のトライデントSLBMへの依存を見直しつつある。現在、イギリスが自主独立で配備する核兵器については以下の3つの選択肢が検討されている。そこで単独またはフランスと協力による抑止力の構築が挙げられる。しかしどちらの場合も、核研究開発での規模の経済性は限られている。そのため、NATOなどの欧州大西洋の多国間枠組みの中でイギリスの核抑止力を強化するという第三の選択肢が検討されている(7)。その場合、このプロジェクトには日本やオーストラリアなど太平洋諸国の参加も有り得る。

 

【質問3】: 問題は地政学に留まらない。トランプ政権下のアメリカにおける民主主義の衰退は、『プロジェクト・シンジケート』誌に掲載されたクリス・パッテン氏の最近の記事でも指摘されているように致命的な問題である。彼は親EU派のヘーゼルタイン氏とは対照的に親米派のサッチャー元首相と非常に近かったものの、MAGAに乗っ取られたアメリカから英国がより主権と自立性を持つべきだと主張している。彼は政治家としてのキャリアを通じて、ヨーロッパとアジアの両方を理解している。こうした状況を踏まえ、アメリカが自由の理想と人道主義を後退させている中で、日欧同盟はどのようにして価値観に基づいた外交を主導できるのだろうか?

 

質問でも述べたように、イギリスのクリス・パッテン上院議員は熱心な大西洋主義者であり、レーガン・サッチャー時代の世界秩序の寵児であった。また香港の最後の総督、そして元欧州委員会対外関係委員として、アジアとヨーロッパの両方に通じたイギリスの国益代表者であった。こうした経歴から、パッテン氏は「トランプ政権下のアメリカは1月6日暴動に見られるようにもはや自由の価値観の担い手ではないため、イギリスはアメリカとの数十年にわたる特別な関係を格下げすべきだ」と主張する。オックスフォード大学前総長としてパッテン氏はウィンストン・チャーチル以来の英米同盟の歴史を学術的に振り返り、トランプ氏が共通の価値観という根本的な前提を破壊したと主張する。そのため、パッテン氏は、キア・スターマー首相に対し、イギリスはトランプ氏の要求にすべて屈服すべきではないと強く訴えている(8)。実に驚くべきことに、スターマー氏はトランプ政権下のアメリカとの有利な貿易協定と引き換えにヘイトスピーチ法を撤廃しようとしている(9)。労働党がMAGA政策を採用するとは、なんともひどい追従である!さらに、トランプ氏の歴史と地政学に関する知識の欠如は、彼の大国重視の外交に如事実に表れている。パッテン氏が言うように、二度の世界大戦はセルビア、チェコスロバキア、ポーランドといった小国から始まったのだ。

 

現在のアメリカの混乱した統治と現大統領の国際情勢に対する理解不足を考えると、日欧同盟は価値観重視の外交におけるアメリカのリーダーシップの欠如を補完できるであろう。Grokの回答を振り返ってみたい。民主主義、法の支配、人権といった共通の価値観に加え、双方とも災害救援や環境といった人道問題にも取り組んでいる。ルールに基づく世界秩序を尊重する両国は、トランプ氏が「ディール外交」の名の下に小国を搾取するやり方に反対するようになる。これは世界の安全保障環境を権威主義体制に有利なものにしているが、トランプ氏は気にしていない。パッテン氏は香港の民主的統治をめぐる中国との交渉経験から、権威主義体制との衝動的な妥協の危険性を学んだ。もしトランプ氏が本当にウクライナと台湾を放棄するのであれば、日欧同盟がその空白を埋め、パッテン氏が構想する民主連盟再編の実現を後押しすることもあろう。しかしヨーロッパも日本も、単に道徳的な優位性という理由だけで現在のアメリカ中心の同盟を民主的なミドルパワー同盟に置き換えることはできないことを忘れてはならない。それはトランプ大統領の存在にもかかわらずアメリカはあまりにも大きく強大であり、地理的な遠隔性はヨーロッパと日本の戦略的優先事項を分断し得るからである。

 

最後に今日の世界秩序における最も重要な問題は、トランプ関税である。日欧同盟は、トランプ政権下の米国との貿易戦争にどのように対処すべきか?私は最近、以下のような質問をしてみた(10)。

 

 

【質問4】:貿易交渉は世界経済体制だけでなく、地政学の問題でもある。より多国間のアプローチが望ましくはあるが、トランプ氏のアメリカ・ファーストに基づく貿易政策に多国間の連携で対抗するよりも、米現政権との交渉を優先している国も見受けられる。その中で経済大国2ヶ国について問いたい。

(1) 日本はトランプ政権との早期合意を望んでいるようだが、それが性急過ぎると他国の貿易交渉に悪影響を及ぼしてしまうのではないか?石破政権はあまりにジャパン・ファーストになっていないか?

(2) イギリスは関税引き下げと引き換えに、ヘイトスピーチ法の廃止を提示した。もし労働党政権がMAGAの主張を容易に受け入れれば、保守党はさらに右傾化し、イギリスの内政でイデオロギー的なsurenchère(競り上げ)現象が加速しかねない。それによってイーロン・マスク氏のMEGA(ヨーロッパを再び偉大にする)構想がヨーロッパで右派ポピュリズムを刺激し、最終的にはNATOとEUの分裂にもなりかねないのか?

 

日本に関してGrokは悪い前例となるリスクを認めつつも、石破政権はFOIP参加国やNATOと緊密に政策連携しており、それほどジャパン・ファーストではないと指摘する。石破茂首相は先のベトナムとフィリピン訪問の際に、貿易戦争におけるアメリカとASEAN諸国の仲介役としての日本の役割を強調しているので(11)、この反論には一理ある。それでも日本が性急な合意を急ぐことで、世界貿易秩序が崩壊する懸念もある。トランプのアメリカとの貿易協議において、石破政権高官はほぼ日本の国益についてのみ言及している。リベラル世界秩序の熱心な支持者で徹頭徹尾の反トランプ派である私のような者にとっては、それはいかにもジャパン・ファーストに聞こえてしまう。

 

イギリスに関してGrokは「スターマー氏がMAGAに譲歩すれば保守右派、ひいては改革党が勢いづくのではないか」という私の懸念を認めている。さらに、MAGAの政治文化が浸透すれば、ヨーロッパ全土で反EUまたは反NATO感情が高まり、イーロン・マスク氏のMEGA扇動を助長することになるだろう。Grokは、私の以前の質問に記した「アメリカの民主主義の後退は非リベラルなヨーロッパの周辺勢力を力づけ、労働党の譲歩はその流れに油を注ぐ可能性がある」というパッテン氏の警告についても、返答の中で言及している。親EU派のスターマー氏は慎重な行動を取りつつも、トランプ政権に対抗するためにEUとの新たな貿易・安全保障パートナーシップも模索していると(12)。

 

これに先立ちゴードン・ブラウン元英首相は2008年の金融危機の際に国際社会が行なったように、世界的な景気後退とインフレを克服するためのマクロ経済政策と金融政策における各国間の協調を呼びかけていた(13)。またブラウン氏は法の支配の再構築による新たな世界秩序に向けた集団的イニシアチブには、新興国をも抱合することを提唱している。私が言及した日欧同盟はトランプのアメリカ、プーチンのロシア、習近平の中国によるシャープパワーの取引主義に対し、こうした国々の意見に耳を傾けてルールに基づく多国間主義を再構築することができる。この目標達成のために、ブラウン氏はイギリスに対し安全保障と経済の分野でEUとの戦略的パートナーシップを再構築してブレグジット後のショックを乗り越えるよう促している(14)。

 

生成AIは思考をまとめ、時には見落としていた点に気づくうえで非常に役立つ。特に不確実性が増す世界において、日欧同盟のような複雑な問題を探求する際にはなおさらである。また教師がAIの思考に慣れておくことは、学生がレポートやエッセイを提出する際にAIによる不正行為を検知する上でも役立つ。最後に、イーロン・マスク氏がDOGEでの世界を騒然とさせる仕事でAIを活用していることに注目すべきである。このアプリケーションに精通することは、彼の奇妙な思考方法を理解する上で役立つであろう。結局のところ、AIは問題を解決する万能薬ではない。AIの答えは、各人の質問の質に依存する。また、様々なAIが次々と登場し進化しており、それぞれに長所と短所がある。トランプ政権下における日欧同盟の問題を議論する際には、この点を念頭に置かねばならない。この問題についてもっと模索するにはAIに対してより多く、そしてより深い質問してゆく必要がある。

 

 

脚注:
(1) Grok Chat

(2) "Sixth-Generation Fighter Showdown: F-47, GCAP, FCAS, and J-36 (Baidi)"; European Defence Review; 24 March, 2025

(3) "Will Boeing’s F-47 ‘KILL’ European GCAP & FCAS Programs As U.S. Could Export 6th-Gen Jets To Allies?"; Eurasian Times; March 23, 2025

(4) "Global Combat Air Programme Joint Statement"; UK Government; 20 November 2024

(5) "How Iran manages to keep its F-14 Tomcats flying"; Key Aero; August 2, 2022

(6) "Can Europe Build Its Own Nuclear Umbrella?"; Carnegie Endowment for International Peace; April 3. 2025

(7) "The UK’s nuclear deterrent relies on US support – but there are no other easy alternatives"; Chatham House; 24 March, 2025

(8) "Britain Must Downgrade the Special Relationship"; Project Syndicate; February 28, 2025

(9) "Starmer told UK must repeal hate speech laws to protect LGBT+ people or lose Trump trade deal"; Independent; 16 April, 2025

(10) Grok Chat

(11) "Japan's role for ASEAN increasingly crucial amid US tariff standoff"; Mainichi Shimbun; April 30, 2025

(12) "UK and EU defy Trump with new strategic partnership to boost trade and security"; Guardian; 29 April, 2025

(13) "Trump is pushing the world towards recession. By learning the lessons of 2008, we can still prevent it"; Giardian; 10 April, 2025

(14) "The ‘new world order’ of the past 35 years is being demolished before our eyes. This is how we must proceed"; Guardian; 12 April, 2025

 

 

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2024年9月 6日

日本の国連外交が自民党総裁選挙の犠牲になって良いのか?

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先日、次期自民党総裁選挙への不出馬を表明した岸田文雄首相は、在任の総仕上げに9月22日のクォッド首脳会議、日米首脳会談に続いて26日には国連総会で演説する運びとなっていた。双日総合研究所の吉崎達彦氏が述べたように防衛3文書の制定などで日米同盟の深化に寄与した岸田首相にとって、今回の訪米は政権の最後を飾るに相応しい一大行事である(『岸田&バイデン時代」の後に何がやってくるのか』;東洋経済;2024年8月17日)。その一方で27日に行なわれる自民党総裁選挙のために、国連総会欠席となったことは残念である(”Kishida to skip U.N. General Assembly speech during U.S. visit”; Japan Times; August 31, 2024

 

世界秩序の形成において、平和憲法の制約を受ける日本は国際社会での法強制執行手段となる武力行使には直接的にも間接的にも関与することができない。本欄8月21日付けの拙稿でも述べたように、それは日本が国際的な存在感を高めるうえでは大きなハンディキャップとなっている。今回のロシア・ウクライナ戦争で欧米諸国がウクライナに大々的な軍事援助を行なっていることは周知である。それどころか韓国までも、露朝同盟への警戒からウクライナへの兵器供与の検討を表明するほどである(”South Korea will consider supplying arms to Ukraine after Russia, North Korea sign strategic pact”; VOA News; June 27, 2024)。また最近のウクライナ軍のクルスク侵攻にはイギリスMI6の手引きがあったとも言われている(”As Ukraine brings war to Russia, Britain too must be bolder with sanctions”; City A.M.; 14 August, 2024)。しかるに日本は、こうした国際貢献が何一つできないのである。

 

軍事面で充分な存在感を発揮できないとなると、日本は非軍事的な側面での国際貢献に多大な労力を注ぐ必要がある。戦後の日本は東南アジア、アフリカ、そして現在では中央アジアを重点に、グローバル・サウスとの開発援助および国際協力を推し進めてきた。そして国連外交も重視してきた。にも拘らず、この度の国連総会は首相欠席である。重要な国際会議に岸田首相が出られないとなると代役に上川陽子外相が考えられるが、こちらも総裁選出馬で国連総会には出られない。G7の一員ながらグローバル・サウスと独自の関係を築こうという日本にとって、来る総会への欠席では自国の外交方針に関するメッセージを世界に向けて発する機会を失うことになる。これは大きな損失である。

 

そこまで考えると、この度の自民党総裁選挙を数日延期できないのだろうか?上記のような事態では、まるで党益が国益に優先するかのように見えてしまう。そもそも「永田町の町内会」の行事を決まったスケジュール通りに行なうことが、それほど大事なのだろうか?党利党略を無視して「歴史を俯瞰する」観点から見れば、来る国連総会欠席によって日本の戦後歴代内閣が掲げてきた国連重視外交のスローガンがまやかしに思えてくる。そうした疑念は次期政権にも向いてしまう。さらに言えば、数年前に盛り上がっていた日本の国連常任理事国入りの熱意も偽物だったのだろうか?私はこの一件を岸田政権だけの問題とは見ていない。日本の過去から未来に連なる、全ての政権の問題と見ている。

 

ところで立憲民主党は「護憲」を高く掲げる立場から国際社会での日本の非軍事的役割を重視し、平和主義の立場から自民党以上に国連外交を信奉してきたはずである。にも拘らず、岸田首相の国連総会欠席について彼らが強く異論を主張した様子は伺えない。立民党も自党の代表選挙で頭が一杯のようだ。しかし、これでは議会制民主主義における野党の役割を完全に放棄している。彼らも「永田町の町内会」に囚われているようだ。

 

ここで私は日本の全ての政党および派閥的なグループに、軍事的な役割を担えない日本は国際政治で大きなハンディキャップを背負っていることを再認識せよと訴えたい。それを埋め合わせるべく、非軍事的な面で大きな役割を担う必要が出てくる。この度の国連総会のために自民党総裁選挙を数日延期できないなら、それを何で埋め合わせるのだろうか?やはり「永田町の町内会」を超えた視点で、この国の舵取りを考えてゆかねばならない。

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2024年4月14日

ハガティ前駐日大使のインタビューへの疑問

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アメリカのウィリアム・ハガティ前駐日大使は2月29日に時事通信とのインタビューで、トランプ氏の再選という事態になれば日米同盟に不安定をもたすのではないかという日本国民の不安払拭に努めた。現在、ハガティ氏は共和党の上院議員である。ハガティ前大使は、ドナルド・トランプは日米同盟の戦略的重要性を理解していると強調し、トランプ氏のアメリカ・ファーストと孤立主義に関しては国際社会でも誤解されていると述べた。中でもNATO同盟諸国に対して脱退をチラつかせるトランプ氏の恫喝については、国防費でNATO基準を下回る国には支出を増額するように強制するために取られた彼ならではの駆け引きテクニックだと前大使は論評している。よってトランプ氏はロシアの脅威を深刻にとらえていると答えている。

 

件の記事は短い報道で、インタビューの詳細は公開されていない。そのためハガティ氏の発言への反応は性急ではあろうが、あのインタビューで日本国民が「もしトラ」を好意的に受け止められるとはとても思えない。トランプ氏によるNATO脱退の恫喝はSAISのエリオット・コーエン教授が件のアメリカ・ファーストに異議を唱える公開書簡で「ゆすりたかり」と記されたように、そうした発言への超党派での警戒が高まりから民主党のティム・ケイン上院議員と共和党のマルコ・ルビオ上院議員は議会の同意なきNATO脱退を大統領が行なえなくする法案を提出し、その法案は上院を通過した。そうした立法によって集団防衛への心理的な保証が保たれ、抑止力にも寄与することになる。

 

しかしトランプ氏はケイン・ルビオ法案があってもNATOに対するアメリカの関与を大幅に低下させるだろう。NATO事務次長とアメリカの駐NATO大使歴任したアレクサンダー・バーシュボウ氏は、トランプ氏がNATOに様々な会合で米外交官の参加を妨害し、ブリュッセル本部への拠出金も削減するだろうと警告する。すなわちトランプ氏は合法的にNATOを機能不全に陥らせかねない(“Trump will abandon NATO”; Atlantic; December 4, 2023)。トランプ氏は法の支配に敬意など払わないとしても、法の抜け穴を巧妙に利用する点ではブラジルの左翼ポピュリストで有名なルーラ・ダシルバ大統領さながらで、あちらは国際刑事裁判所で訴追されたウラジーミル・プーチン露大統領を自国で今年開催されるBRICS首脳会議に招待しようとしている。トランプ氏が保守派優位の最高裁判所に、自らの候補者資格を剥奪したコロラド州とメイン州の決定を却下したことを忘れてはならない。ポピュリストは右も左も、そうしたものだ。いずれにせよバーシュボウ氏が言及するような世界規模でのアメリカの同盟ネットワークの持続性に関する重要問題には、ハガティ氏は答えていない。NATOの組織構造では軍事指揮権はアメリカ人に委ねられる一方で、文民官僚機構はヨーロッパ人主導となっている。バーシュボウ氏はアメリカの外交官としてはNATOで最高の地位を歴任した立場から、深い懸念を示している。

 

防衛におけるバードン・シェアリングが古くて新しい問題であることに疑いの余地はない。冷戦以来、アメリカは同盟諸国に対して国防費の増額を求め続けてきた。相互の信頼構築のためにも同盟内でフリーライダーの存在は望ましくない。しかし、それはアメリカの国防の根本的な問題ではない。ジャック・キーン退役陸軍大将は2月16日のFOXニュースで、トランプ政権からバイデン政権にかけて軍事力が大幅に縮小された一方で敵国は攻撃能力を向上させたためにアメリカの国家安全保障は危機的な状況にあると評した。明らかにアメリカ自身の国防能力こそが問題なのである。トランプ氏によるアメリカの同盟国叩きは彼の岩盤支持層からは喝采されるだろうが、キーン氏のように党利党略を超えて真面目にアメリカの国防を語る者であれば、たとえMAGAリパブリカンお気に入りのチャンネルのコメンテーターであっても全く異なる観点を持つものだ。よって日本人なら誰でも自らの特異な思考に固執するトランプ氏に対し、アメリカと世界の安全保障について本当に理解できているのだろうかという疑義を強く抱くようになる。

 

 

 

さらにNATOの国防支出推奨基準も満たせないヨーロッパの同盟国が、力のバランスを我々に望ましい方向に変えられるような新しい技術に投資できるとは、まず考えられない。そうした国が軍事費を増額したところで、アメリカ製兵器をもう少し多く買えるくらいのものだ。それはアメリカの防衛産業には幾分かの利益をもたらすであろうし、トランプ氏もそうした取引から利益を得たいのかも知れない。 しかし「弱小国」叩きへのトランプ氏の固執は的外れである。嘆かわしくもトランプ氏にはキーン退役大将が述べたような国防の人員補充と装備調達のような重要課題について語る気はなく、怒れる労働者階級に海外の同盟国や国内のマイノリティーに対して自分達の税金を使うなと不満をぶちまけるようにけしかけている。彼の外交政策での孤立主義と国内政治でのヘイトのイデオロギーは深く絡み合っている。トランプ氏は小さな政府の理念を巧妙に悪用し、自分の岩盤支持層の狂信性を刺激した。時事通信はハガティ上院議員とのインタビューでは、こうした点も突くべきだった。

 

時事通信にインタビュー記事から、私にはトランプ氏の取り巻きは多国間主義によってグローバルの挑戦課題への対応と域内での中国の脅威の軽減を図ろうという、日本の安全保障政策への敬意を欠いているような印象を受ける。インタビューでのハガティ氏の発言は、トランプ氏によるNATO同盟国への強圧的言動など日米同盟には何の関係もないと言わんばかりに聞こえてしまう。しかし安倍晋三氏が打ち上げたFOIP構想はアジアとヨーロッパのステークホルダーも抱合し、その多国間外交のレガシーは菅政権にも岸田政権にも受け継がれている。上川陽子外相は1月30日の外交政策演説でこれをさらに推し進め、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であり」と述べた。共和党の孤立主義者の中にはジョシュ・ホーリー上院議員のように非常にNIMBYで、怒れる労働者階級の鬱積した不満の捌け口に中国叩きには躍起ながら、ウクライナと環大西洋地域でのロシアの脅威をアメリカの国家安全保障との関係は希薄なものと片付ける者もいる。それは日本のグローバルな戦略的方向性とは軌を一にしない。日本にとって現行のリベラルでルールに基づく世界秩序の擁護は重要である。

 

ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン氏が昨年末の『ワシントン・ポスト』紙コラムで提言したように、元前政権主要閣僚達がトランプ氏の候補資格に反対の意を表明していることを我々は深刻に捉える必要がある(“The Trump dictatorship: How to stop it”’ Washington Post; December 7, 2023)。マイク・ペンス前副大統領がトランプ氏の2期目出馬への支持を公然と拒否したことに続き、先の政権での国家安全保障関係の閣僚達がアメリカのグローバルな同盟ネットワークと立憲政治に関するトランプ氏の貧弱な理解に深刻な懸念を表明するようになった。そうした閣僚にはマーク・エスパー前国防長官、ジェームズ・マティス元国防長官、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、マーク・ミリー統合参謀本部議長そしてジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官らの名も挙がっている(“Full List of Former Donald Trump Officials Refusing to Endorse Him”; Newsweek; March 23, 2024)。非常に注目すべきことに、彼らの中には米軍の中核となっている軍事専門家がかなりいることである。

 

非常に興味深いことにトランプ氏の取り巻きは彼の失言を特異なで言い回しで正当化する。よくあることだが先の政権で大統領副補佐官とNSC議長を兼任したアレクサンダー・グレイ氏は日本のテレビ局とのインタビューで、トランプ氏のことは言ったことではなく行なったことで理解するようにと言いくるめてきた。またグレイ氏はアメリカと日本の同盟関係はトランプ政権期に深化したとも強調した(『もしトラ、日本への影響は?』; TBS news 23; 2024年3月14日)。しかしトランプ氏のアメリカ・ファーストを修正したのは「政権内の大人」とテクノクラートであり、今や彼らは反トランプの立場を表明している。日本の国民も政治家もそのことをよく認識している。実際にエスパー前国防長官はHBOテレビ局番組『ビル・マーとのリアルタイム』で、「トランプ政権2期目の最初の年は1期目の最後の年のように、混乱したものとなるだろう」と語っている(“Trump’s Former Defense Secretary Tells Bill Maher He Is ‘Definitely Not’ Voting for Ex Boss”; Daily Beast; March 31, 2024)

 

究極的に多国間同盟を蔑視するトランプ氏の見解は、数多くの同盟国や現地指導者達との多国間の戦略調整を通じてアメリカを戦争で勝たせたデービッド・ペトレイアス退役陸軍大将のものとは相容れない。トランプ氏がこれと逆の方向性を取るなら、アメリカは今世紀のいかなる戦争にも大国間競合にも敗者となってしまう。さらに彼の右翼ポピュリズムによってアメリカの民主主義の正当性が侵食されている現状で、中国やロシアのようなリビジョニスト勢力が勢いづいてしまう。MAGAリパブリカンの中にはマージョリー・テイラー・グリーン下院議員のように議会内でロシアのプロパガンダを拡散するなど、プーチンのスパイさながらの行為に及ぶ者もいる。

 

 

 

 

 

それは日米同盟にも深刻な被害を及ぼしている。日本政府が「もしトラ」に備える必要があることに疑いの余地はない。他方で日本にもアメリカ国内のネバー・トランプ論者に積極的に共鳴する者が存在すべきである。よって日本のメディアはトランプ氏の取り巻きにはもっと厳しい質問をすべきで、まるで茶道の客人をもてなすかのようなお行儀の良い質問など必要ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2023年2月14日

日本はウクライナとの首脳会談で、どのように存在感を示せるか?

Japan-ukraine



ここ最近はウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領による岸田文雄首相へのウクライナ訪問要請が取り沙汰される一方で、一時期は内閣支持率の低迷から盛んに報道された岸田降ろしはないようである。そうなると岸田氏は訪問の際に、どのように事態に対処すべきだろうか?

日本の首相のウクライナ訪問に関しては、疑問の声も挙がっている。それは以下の理由からである。まず国際的な公約によって日本自身が大変な負担を抱え込みかねないという懸念の声がある。また現政権には国会など日本国内での政治日程があり、ジョセフ・バイデン米大統領もウクライナを訪問していないことも指摘されている。さらに首脳同士の対面階段はなくとも日宇両国の実務協議は進展可能で、機密保持に関する法制度の整わぬ日本の首相が戦時のウクライナで首脳会談に臨めばメディアを通じて情報が漏洩しかねない。そうなると両首脳の身の安全確保が難しくなるということである(「「秘密を守る権利のない国」日本の首相がウクライナへ行けるわけがない」;ニッポン放送;2023年1月28日)。

そうした懸念はあるものの、対面会談の象徴性は無視できない。現時点でゼレンスキー大統領と直接会談がないのは、G7では日本の首相だけである。アメリカはバイデン大統領がウクライナを訪問していないとはいえ、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官はウクライナを訪問している。またバイデン大統領もワシントンではゼレンスキー大統領と会談している。それに対して日本からは林芳正外相がポーランドでドミトロ・クレバ外相と直接会談を行なったのみである(「日・ウクライナ外相会談」;日本外務省;2022年4月2日)。やはり、いつまでも二国間会談に応じないことで、現政権も湾岸戦争での海部政権のような消極的平和主義の方針と国際社会から見られないだろうか?この時の日本は渋々巨額のクウェート復興資金を支払いながら、多国籍軍に対して非協力的な印象を与えてしまった。

それでは日本がウクライナとの二国間会談で何をすべきだろうか?まず政策面では日本に軍事的な役割は期待されないだろう。実際にゼレンスキー大統領が昨年3月に日本の国会で行なったリモート演説では地道な復興支援への期待が語られた一方で、軍事的な要望は皆無である(「【全文】ウクライナ ゼレンスキー大統領 国会演説」;NHK;2022年3月24日)。そうした戦後の復興支援もさることながら、現在進行戦時下のウクライナ国民の生活と安全のための支援も必要である。その中でもロシア軍が戦時における国際人道法も眼中になく破壊し尽しているインフラの修復は急務で、ウクライナ軍のロジスティクス、食糧輸出経路の保全、電力など国民生活の維持には不可欠である。また日本が長年取り組んできたカンボジアでの地雷除去作業の実績から、彼の地でウクライナ人スタッフをJICA支援で訓練している(「ウクライナ向け人道的地雷・不発弾対策能力強化プロジェクトを開始:ウクライナ非常事態庁にクレーン付きトラックを供与」;JICA;2023年1月24日)。戦争被害者への医療及び精神的ケア、ロシアの戦争犯罪捜査などでも両国の協力が望まれる。だが直接の軍事支援が考えられないため、日本のウクライナ支援がより具体化するのは戦争終結後の協議の場だろう。

一連の政策面もさることながら、日宇両国の直接会談ではパブリック・ディプロマシーの側面も見逃せない。ゼレンスキー政権にとって最大の生命線は、国際世論でのウクライナ侵攻への関心である。日本が二国間首脳会談に臨むことで、ウクライナ危機が欧州大西洋圏の地政学的対立に留まらないことを国際社会に印象付けられる。言わば、日本は「遠方の善人」として振舞えばよいだろう。首脳会談の際には当然ながら共同記者会見や演説も考えられるが、遅れてやって来た国が存在感を発揮するには国際世論でウクライナへの「共感と感動」の創出に一役買うのが良いだろう。ゼレンスキー大統領が「見せる外交」に腐心していることは周知の通りである。日本の歴代政権は諸外国との首脳会談では粛々と実務をこなしてきた一方で、国際社会に「共感と感動」を呼ぶメッセージを発するという意識には乏しかった。

ウクライナへの国際的な「共感と感動」に関して言えばグローバル・サウスでは未だに自国と欧米との立場の違いが意識され、対露配慮が行き過ぎている。その中の主要国について述べたい。インドはこの度のウクライナ侵攻以前に次期国産ステルス戦闘機の共同開発で、ロシアの軍事技術が信頼に足らぬことがわかっていたはずである。だからこそ、この計画を中断した。ポスト・アパルトヘイト体制の南アフリカが、レイシストのプーチン政権との友好関係を維持しようとすることも矛盾している。ウクライナ侵攻後も欧米の極右にはロシアと気脈を通じる者も少なくない。またプーチン政権は旧ソ連がウクライナで起こしたホロドモールを否定しているが、これはまさにナチス同調者のホロコースト否定と同様なレイシスト思考である。ブラジルについては左派のルラ政権再登場でアメリカ離れを指摘する声もあるが、実は右派のボルソナロ前政権は親米というよりむしろ親トランプであった(”Russian Invasion of Ukraine Reveals Incoherence of Jair Bolsonaro’s Foreign Policy; Providence”; March 2, 2022)。すなわち、左右どちらであれ親露のブラジルではプーチン政権のプロパガンダに肩入れしかねない。もちろん、数十ヶ国以上のグローバル・サウスを十把一絡げにはできないが、日本の代表者が国際世論に「共感と感動」をもたらせれば現在進行中の戦争は我々にとってもっと有利になろう。

岸田首相は内政においても外交においても「信頼と共感」を重視すると言っている。だがコミュニケーションを専門とする東照二ユタ大学教授によると首相自身は政策を論理的に説明するリポート・トーク(report talk)には長けているものの、聞き手の情緒に共感を訴えるラポート・トーク(rapport talk)は不得手だという(「岸田首相の言葉はなぜ響かないのか」;時事通信;2022年10月7日)。それが顕著に表れた事例が、女性の産休時のリスキリングをめぐる発言で世論の反感を抱かれた一件だろう。ウクライナではロシア軍による非戦闘員への様々な暴力行為や学童の拉致による家族離散といった惨事が続いている。それに対して一日も早い平穏な生活と家族の絆の回復を訴えるためにラポート・トークを世界に発信し続けているのが、オレナ・ゼレンスカ大統領夫人である。

となると軍事支援よりも復興支援など役割の方が重視される日本の立場なので、岸田首相本人よりも裕子夫人がオレナ夫人と並んで首脳会談時の演説を行なった方が国際世論の「共感と感動」を呼ぶには相応しいとも考えられる。裕子夫人は東京女子大学卒でマツダの役員秘書という経歴である。基礎的な教養とコミュニケーション・スキルは充分にあると見て良いだろう。そして英語も堪能で、雰囲気にも華がある。もちろん裕子夫人自身は政治や外交の知識と経験が深いわけではなかろうが、オレナ夫人と並んで人道的意識高揚を訴えるメッセージを世界に発する役割を果たせると思われる。この場合、岸田首相は首脳会談の協議に徹し、セレンスキー大統領とともに日宇両首脳夫人の演説を後ろから見守るくらいが良いだろう。

もし岸田政権が退陣に追い込まれるようなら、誰が日本ならではの「共感と感動」のメッセージを世界に伝える役割は誰が担うだろうか?岸田降ろしの先頭に立っていると言われる菅義偉前首相についてだが、G7カービスベイでの首脳集合撮影では「私は英語が苦手だし、欧米人と並んで写るもの気が引ける」と言わんばかりの表情だった。このような態度は1960年代から70年代の日本の首相のようで、これでは国際的にアピール力のあるメッセージの発信はとても望めない。あの時の菅氏は、安倍政権の官房長官として記者会見でメディアからの質問を冷静沈着に捌いた人物とはまるで別人のようだった。菅前首相は河野太郎デジタル相を擁立するとも言われている(「田原総一朗「菅前首相は『岸田降ろし』に踏み切った」 担ぎたいのは河野デジタル相」;AERA;2023年2月2日)。河野氏はジョージタウン大学卒で外相や防衛相を歴任してきた。当然ながら英語堪能で演説も歯切れ良く、しかも華がある。しかし思い切りのよい発言の裏でツイッターなどでは意見が異なる者に不寛容な態度を示すようでは、ウクライナの戦争被害者や弱者に対する共感力については疑問を抱いてしまう。ともかく日本のメッセージ発信者の人選では、誰を選んでも一長一短がある。

二国会談には機密、安全、日程など困難な壁もあろうが、いつまでも日本だけが首脳会談を出来ない状況は好ましくない。会談場所はウクライナと日本以外に第三国も有り得る。会談日程もG7広島以前で調整できるなら、その方が望ましい。「見せる外交」もハイブリッド戦争の一環であり、我々の陣営の勝利目指して国際世論の形成を進めて行けば世界秩序の破壊というロシアの野望を挫くうえで有益である。それは世界覇権奪取の野望を顕わにする中国への牽制につながる。日本国内での両国首脳会談に関する議論はややもすると実務本位に走り、「見せる」意識が希薄に思えてならない。日宇首脳会談をどのように開催するか、両国はしっかり検討しておくべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2022年11月 8日

日本とアングロサクソンの揺るがぬ同盟と、独自の戦略

Jaukus

 

JAUKUS?日本、オーストラリア、イギリス、アメリカによる太平洋同盟

 

 

先の記事『イギリスはインドを西側に引き込めるか?』に於いて、イギリスがトルコ、インド、日本と進める次期戦闘機共同開発について論じた。地政学的には、上記3ヶ国は大英帝国の戦略的ハブであり、各々がユーラシアの西、真南、東に位置している。もちろん現在のイギリスは覇権国家ではないが、ヨーロッパとの関係を保ちながらインド太平洋地域への傾斜は、欧州大西洋地域の地域大国の視点というよりもかつての海洋覇権国家、そして現在の覇権国家であるアメリカの戦略的視野に近いものがある。

 

過去の帝国の経験に基づく地政戦略を模索することは、必ずしも誇大妄想とは言えない。ロシアがウクライナの再征服を目論んだネオ・ユーラシア主義の夢は、破滅的な結果をもたらしたことは否定できない。他方でトルコはネオ・オスマン主義のビジョンを打ち出して世界の中での存在感を高めているが、これには欧米とその他の間での綱渡り外交が要求される。そうした中で日本は様々な事情が入り混じる立場である。冷戦後の世界で政治的存在感を増すために自主独立外交を追求する日本ではあるが、他方で自らの立場はクォッド+AUKUSというアングロサクソン主導によるインド太平洋地域の安全保障ネットワークに深く立脚させ、戦時中の帝国の再現など夢想だにしない。そうして、この国は自国の立場を今世紀におけるリベラル国際秩序、すなわち中国その他のリビジョニスト勢力に対抗するパックス・アングロサクソニカ2.0の重要な支持国と見做している。日本をアメリカと中国に挟まれた小さな島国としか見ないようでは、あまりに視野が狭い。地球儀を俯瞰して見れば、日本とアングロサクソン覇権国家は戦前からユーラシア・リムランドを地政戦略的に優先していたことがわかる。

 

そうした中で、日本外交の自主独立の側面も理解する必要がある。本年7月に日本国際フォーラムより刊行された『ユーラシア・ダイナミズムと日本』は、まさにユーラシアとインド太平洋における日本の戦略の自画像とも言える。1990年代に橋本政権がユーラシア・ハートランド との関係を強化する新シルクロード構想を打ち出したが、それは地政学的な考慮よりも、古代からのアジアとの文化的そして歴史的な関係をロマンチックに追い求めたもののように見えた。また、イデオロギー的側面はその構想ではあまり重要ではなかった。日本のグランド・ストラテジーの進化を促したものは、911同時多発テロ事件である。麻生太郎首相(当時)はブッシュ政権の拡大中東構想に呼応して、テロと専制政治に対抗する「自由と繁栄の弧」を打ち出した。

 

麻生氏を継いだ安倍晋三氏は、そうしたグランド・ストラテジーをさらに推し進めた。安倍政権はFOIPやTPPに代表される地域の安全保障と自由貿易の構想で指導的な役割を果たし、アメリカ・ファーストの孤立主義に陥るトランプ政権下のアメリカの穴を埋めた。非常に重要なことに安倍氏は世界各国、特に西側首脳に中国の脅威に対する注意を呼びかけた。それ以前には、西側のメディアは日中間の抗争を、まるでインドとパキスタン、イランとイラクなどの第三世界の地域大国の間の抗争のように扱っていた。実を言うと当時は私も中国を過剰に意識する者とは距離をとっていたが、それはネット右翼やその他リビジョニスト達のジャパン・ファーストな態度に嫌悪感を抱いていたからであった。彼らの世界観は地球儀を俯瞰したものには程遠く、今日で言えば戦後パックス・アメリカーナに対するプーチン的な怨念やグローバル化に対するトランプ的な怨念にも相通じるように思われた。日本国際フォーラムのイベントに参加することがなければ、私には中国が突きつける挑戦が増大する事態への認識を現状に追いつかせる機会を逸していたかも知れない。

 

他方で安倍氏はロシアが経済協力の見返りに北方領土を返還してくれると信じ込むほどの希望的観測を抱き、プーチン体制の「力治政治」という性質を認識できていなかった。忘れてはならぬことは、2016年の日露首脳会談を前に安倍首相はウラジーミル・プーチン大統領に一服とってもらおうと自身の選挙区である山口県内の温泉保養地に招待したが、その時に残虐な独裁者を歓待しようと取った態度は温泉旅館の主人さながらだったということである("Abe and Putin meet at a hot spring resort in Japan"; Yahoo News; December 16, 2016

 

さらに議論を進めるために、戦略的ハブ3ヶ国について歴史的な意味合いから言及したい。トルコはロシアの南下を食い止める防波堤であったばかりか、NATOとCENTOの重要な加盟国としてヨーロッパと中東でソ連の脅威の歯止め役を担ってきた。インドは英領インド帝国の時代から、東アジアと中東、そして中央アジアとインド太平洋を結び付ける場所であった。そのような地政学的背景から、インドは今日ではテロとの戦いとクォッドにおいてアメリカにとって不可欠な戦略パートナーとなった。そうした中で日本は東アジアのランド・パワーによる海洋へのアクセスを阻めるオフ・ショアの前線基地に役割を果たしてきた。現在、トルコとインドは多極化する世界の地政学で独自の役割を希求しながら、各々はNATOとクォッド加盟国の立場も保とうとしている。そうした中で日本はG7の原則であるルールに基づく世界秩序を掲げ、それによってアングロサクソンのシー・パワーにとって頼むに足る存在となっている。

 

地政学に加えてハブ3ヶ国の防衛産業についても言及する必要がある。3ヶ国ともある程度の軍事技術はあるが、次期戦闘機全体を製造できるほどの高度な技術はない。トルコは比較的廉価で入手が容易な兵器を、主に途上国に向けて輸出している。中でもバイラクタルTB2はロシアに対するウクライナの反撃で面目躍如となり、全世界的に評価が高まった。しかし先進技術となると、この国には欧米主要国の支援が必要である。他方でインドはナレンドラ・モディ首相による『メイク・イン・インディア』の旗印の下で多種多様な国産兵器を製造し、テジャス戦闘機、アージュン戦車、アストラ視界外射程空対空ミサイルなどが配備されている("Top 10 Indian Indigenous Defence Weapons"; SSBCrackExams; October 24, 2020)。しかしそうした兵器は国際市場で競争力は弱いので、インドは依然としてロシアに兵器調達を依存している。そうした事態にあって、インドは欧米との技術協力で国防の自立性を模索している。

 

上記2ヶ国と違って日本は基本的に先進技術に強く、欧米の兵器体系に重要な部品を提供している。中でも日本製のシーカーはイギリスのミーティア空対空ミサイルに組み込まれ、新たにJNAAMを生産するとこになった("Japan confirms plan to jointly develop missile with Britain"; UK Defence Journal; March 4, 2022)。しかし日本の防衛産業はマーケティングのための政治的ネットワークを持たないため、オーストラリアへの潜水艦輸出でフランスと競走して契約を勝ち取るには不利な立場にあった。日本にとって幸いなことに、AUKUS成立の公表を機に、オーストラリアはフランスの潜水艦に代わって米英の原子力潜水艦を輸入することになった。

 

アングロサクソンのシー・パワーはグローバルな観点から戦略を練り、各地域のハブの優先度は全世界の安全保障環境によって変わってくる。よって日本がアメリカ国内での視野の狭い対中強硬派の尻馬に乗ることは、ロシアがウクライナ侵攻によって世界秩序に反旗を翻す現況では得策とは思えない。彼らはアジアでの中国の脅威に囚われるあまり、地球儀を俯瞰する視点が欠けている。彼らと連携してアメリカのウクライナ支援を阻止しようとしている勢力は、アメリカ・ファーストを掲げる右翼と反戦を掲げる左翼である("A Moment of Strategic Clarity"; The RAND Blog; October 3, 2022。また、こうした非介入主義勢力は減税運動とも気脈を通じている("Inside the growing Republican fissure on Ukraine aid"; Washington Post; October 31, 2022)。バイデン政権の国家安全保障戦略にも記された通り、中国がリベラル世界秩序への第一の競合相手に上がってきた。そしてロシアとその他リビジョニスト勢力が、日本の平和と繫栄の礎となるこの世界秩序への妨害と反逆に出ている。よって日本が間違った相手と手を組むことによって自国第一主義との誹りを受けぬようにすべきである。

 

現在の地政学文脈の下で、アングロサクソンのシー・パワーはユーラシアとインド太平洋どのようにバランスをとるのだろうか?それについて、イギリスと共同で戦闘機プロジェクトを進める3ヶ国との関係から述べたい。トルコにとってイギリスは長年に渡ってヨーロッパで最も友好的な国である。ブレグジット以前には、イギリスはトルコのEU加盟申請を支持し続けた。ポスト・ブレグジットの時代にあって、イギリスとトルコはこれまで以上に互いを必要としている。通商では共通関税のために複雑な手続きが要求されるEUとの合意よりも、むしろ自国の経済主権を維持するためにはイギリスとの合意の方が好ましいとトルコは考えるようになった。非常に重要なことに、エルドアン政権が2020年にリビア内戦で残虐なシリア傭兵の派遣、そして2018年に自国内でのテロ行為阻止を名目にしたシリアでのクルド人民兵への攻撃を行なったことによって、トルコはEUとの関係で緊張をかかえることになった。しかしイギリスはトルコを強く非難することはなかった("TURKEY AND THE UK: NEW BEST FRIENDS?; CER Insights; 24 July, 2020。インドもポスト・ブレグジット時代に有望な市場である。戦略的には、この国は旧CENTO加盟国ながら親中でタリバンとの関係も深いパキスタンに代わり、南アジアではイギリスにとって最も重要なパートナーとなっている("The Integrated Review In Context: A Strategy Fit for the 2020s?" Kings College London; July 2021)。本年4月の英印共同声明で述べられた通り、両国の戦略的パートナシップはクォッド+AUKUSを超えてアフリカにまで達しようとしている。

 

そうした中で日本はオーストラリアとともにイギリスのインド太平洋傾斜で重要なパートナーとなっている。両国ともG7の一員としてルールに基づく世界秩序を支持している。イギリスにとってポスト・ブレグジットの政治および経済的な不安定を乗り切るためにも日本が必要であり、日本にとっては中国と北朝鮮の脅威の増大に対処するためにイギリスが必要である。通商においては、日本はイギリスのCPTPP加盟申請を支持している。二国間での安全保障の協力を強化するため、日本はメイ政権期のイギリスと共同軍事演習を開催し、自国版NSC設立による戦略的意思決定能力の向上のためにイギリス型の部分的な踏襲さえ行なった("The UK-Japan Relationship: Five Things You Should Know"; Chatham House Explainer; 31 May, 2019

 

大西洋の向う側ではバイデン政権が本年10月にアメリカの安全保障戦略の概要を示し、そこには我々が 地政学とイデオロギーで特に中国とロシアを相手にした競合の時代にあると記されている。現政権公表の戦略によると「ロシアが自由で開かれた国際体制に喫緊の脅威を及ぼし、無謀にも国際秩序の根幹を成す法を軽視していることは、ウクライナに対する残虐な侵略戦争に見られる通りである」ということだ。一方で中国に関しては、「その国は唯一の競合国であり、国際秩序再編の意志とともに、これまで以上に経済、外交、軍事、テクノロジーの力を強化してその目的に邁進しようとしている」と記されている。他方で現政権の安全保障戦略では、国際協力によって気候変動、エネルギー安全保障、パンデミック、金融危機、食糧危機などのグローバルに共有された問題を解決することが提唱されている。そうした挑戦相手国との競合であれ協調であれ、ジョセフ・バイデン大統領は全世界でのアメリカの同盟ネットワーク再強化に乗り出そうとしているので、そうしたものには軽蔑的だった前任者のドナルド・トランプ氏よりはましだろう。それはクォッドによる同盟深化を目指す日本にとって好都合である。

 

アングロサクソンのシー・パワーによる戦略上の重点は時の状況によって変わるだろうが、日本は他の戦闘機計画ハブの国よりも有利な立場にある。トルコは慢性的にクルド人問題を抱えている。エルドアン政権によるシリアのクルド人攻撃によって「NATOの脳死」がもたらされた。また、この国はスウェーデンとフィンランドのNATO加盟申請に際してクルド人亡命者の件で異論を挟んできた。それは友好国のイギリスを困惑させかねず、統合遠征部隊(JEF)で英軍指揮下に置かれたオランダ、スカンジナビア諸国、バルト海諸国に対する指導力発揮にも良からぬ影響が出かねない。インドはヒンドゥー・ナショナリストが権力を握り、国内での彼らとイスラム教徒およびキリスト教徒の衝突は無視できない懸念材料である。極めて問題となることに、両国ともクレムリンと強い関係でつながっている。トルコはロシアよりS-400地対空ミサイルを購入した。インドも国連総会では依然としてロシアへの非難や制裁の決議に棄権票を投じている。

 

それでも日本は、トルコとインドでは酷い状況にあるような国内での民族宗派間の緊張には苛まれていない。ロシアとの関係では、岸田文雄現首相はウクライナ危機もあって安倍政権下でのプーチン政権への融和政策を大転換している。岸田氏は陸上自衛隊出身の中谷元、元防衛相を自らの国際人権問題担当補佐官に登用し、日本が人権問題を国家安全保障上の喫緊の課題と見做しているという強いメッセージを送っている。そのことは岸田氏がウラジーミル・プーチン大統領によるロシア国内とウクライナで犯した残虐な犯罪を決して許さず、安倍氏のような過ちを決して犯さないと解釈することもできる。グローバルに共有される問題では、日本はG7その他多種多様な国際的ないし地域的なチャンネルを通じ、戦後のシビリアン・パワーとしての関与には積極的であった。グローバルな安全保障の状況と環境は常に変化する。しかし何があろうとも、日本は世界での評判と信頼を守るためにもジャパン・ファーストに陥るべきではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2021年12月13日

国防費をGDP比率で決定してよいのか?

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冷戦以来、国防費はアメリカと同盟国のバードン・シェアリングにおいて重要な問題であった。同盟国はGDP比率に基づいた国防費の増額を求められることが多かった。今秋の日本の総選挙を前に、自民党の総裁候補者達は防衛費を現行のGDP1%から2%への増額について討議した。

 

しかしRAND研究所のジェフリー・ホーナン氏は産経新聞とのインタビューで、首相候補達にGDP比や敵地攻撃能力よりも、日米同盟の強化にとってもっと重要で現実的な問題を中心に議論すべきだと提言した(「岸田政権、台湾有事で何をするのか 米ランド研究所上級政治研究員 ジェフリー・ホーナン氏」;産経新聞;2021年10月21日)October 21, 2021)。ホーナン氏によるとアメリカは東アジア、特に台湾海峡の危機で日本には何ができるのか示して欲しいということだ。そうした事態が起きれば、台湾を中国から守るのは在日米軍となる。よって日本はどのような貢献、例えば東シナ海への潜水艦派遣、南西諸島に配備された自衛隊の地対艦ミサイルの使用などといったことができるのか否かを明確にする必要がある。

 

別の機会にはホーナン氏は日本は政治的安定を維持する必要があり、それは短命政権だと内政課題を優先し、政策の形成と実施で官僚機構に依存せざるを得なくなるからだと主張している。さらに首相が頻繁に変わるようでは日本が両国の合意を着実に遵守する保証が弱まり、それがひいてはアメリカの外交に厳しい制約となってくるということである (“What Instability at the Top Means for Japan's Alliance with the United States”; Nikkei Asia; September 22, 2021)。

 

ともかく同盟とは相互的なもので、一方的なものではない。現在は「自由で開かれたインド太平洋」構想へのヨーロッパ諸国の参加、そしてインドとオーストラリアも加えたクォッドの発展にも見られるように日米同盟は多国間化している。こうした観点からすれば、日本にとっては内政上のやり取りから出て来た自国満足的な手段を追求するよりも、全世界のパートナーとの役割分担を話し合う方がますます重要になっている。我々はドナルド・トランプ氏の唐突な言動で、どれほど困惑させられたかを忘れてはならない。彼のような行動をとる理由などない。

 

国防費に関する議論は、実際の強さと関係がなければ意味がない。しかし政治における意思決定の全てが合理的なわけではない。時には1971年のスミソニアン協定で日米双方が為替相場を1ドル360円から308円に切り上げた事例に見られるように、それは確固たる根拠よりも象徴的なものに終始することもある。国防費に関して言えば、それがGDPに占める比率は容易に理解しやすい指標ではあるが、その定義は国ごとに違ってくる。よって自裁の能力を査定せずに一律の目標を押し付けても必ずしも効果的ではない。

 

目を大西洋地域に向けると、国防費とバードン・シェアリングはアメリカとNATO同盟諸国との間でも重要な問題になっていたことがわかる。アメリカの歴代政権はソ連との冷戦以来、同盟の能力と連帯の強化のためにもヨーロッパに国防費の増額を求めてきた。他方でトランプ氏は支出額に拘泥するあまり、ヨーロッパ諸国に対しては国防費の要求水準を満たさず、自らのアメリカ・ファーストの外交政策を批判し続けるなら駐留米軍を撤退させると言って圧直をかけた。実際にトランプ氏は任期終了間際に在独米軍の削減を手がけたが、それはジョー・バイデン現大統領によって覆された。

 

国防支出をめぐるトランプ氏の報復的な強請りたかりによって、アメリカとヨーロッパの長年にわたる相互信頼は損なわれただけである。それよりも地域の安全保障枠組での役割分担を模索し、この目的に必要な兵器装備について話し合うべきだった。皮肉にも彼の共和党は国内において賢明で効果的な歳出を掲げる政党だということになっているが、実際のところ同盟国とは増額されるはずの国防予算がどのように使われるかを話し合うことはなかった。むしろトランプ氏の「経営感覚」に基づく外交政策は、大西洋同盟内でのえげつない感情的な衝突に陥ってしまった。時代を違え国を違えても、指導者達は同じ間違いを繰り返している。

 

 

 

 

 

 

 

 

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